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高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展 「バリアフリー2012」 レポート

福祉に関する最先端情報を一堂に”高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展「バリアフリー2012」 レポート

日本の2010年度の合計特殊出生率(1人の女性が一生の間に産む子どもの数)は人口を安定させると言われている2.10を大幅に切る1.39となっています。また、65歳以上の高齢者の人口比率が23%を超え、5人に1人以上が高齢者となり、うち75歳以上の人の割合が9人に1人になりました。このように日本は、世界に前例のない本格的な少子高齢社会を迎えています。介護される人たちが急増する一方で、介護する側が激減する大介護時代の到来とともに孤族(※)や無縁社会などが社会問題化し、人と人が助け合い、支えあう福祉への関心が高まっています。そのような世情の下、今回は、福祉に関する最先端のグッズや情報などを集めた一大イベント「バリアフリー2012」のレポートをお届けします。
※社会的に孤立した単身者で、誰にも看取られることなく一生を終えてしまう人たち。

語りあう来場者とスタッフ。会場は熱気に満ちていました。

3日間で約9万人が訪れるバリアフリーの祭典。

災害時の危機管理への関心が高まっています。

大阪南港にある日本最大級の国際展示場「インテックス大阪」。ここを会場に、4月19日(木)から21日(土)までの3日間開催された「バリアフリー2012」は、そのタイトルが示すように、高齢の人たちや障がいのある人たちが、快適で安心した生活ができる住まいや施設・環境づくりの福祉機器や製品、情報をトータルに提供することを目的に1995年からはじまり、今回で18回目を迎えています。

今回の「バリアフリー2012」には、303企業・団体が参加。海外からも27社が出展し、約9万人が訪れました。
同じような規模の展示会の中では、福祉とは関係のない一般的な来場者が多いケースだといいます。それほど、バリアフリーへの関心は一般に浸透しているといえるでしょう。
特に今年は、介護保険・医療保険の改正時期と重なり、介護・医療への関心が高まっています。また、介護保険制度では「福祉用具サービス計画」が義務化され、一人ひとりに必要な福祉用具を計画的に提供する仕組みができました。さらに、福祉施設でも「痰の吸引」などの医療行為が認められるようになり、安全な実施のための医療機器の導入が検討されるようになるなど、これらの環境の変化を受けて、バリアフリー機器へ関心が集まっているようでした。
それとともに、昨年の3.11東日本大震災を教訓にした「災害時の危機管理コーナー」などの企画も充実し、また、介護食品や栄養補助食品など、「食」に関わるバリアフリー製品のコーナーも設けられ、さまざまな人たちが各ブースのスタッフに熱心に質問されている姿をたくさん見かけました。

食のコーナーでは、舌でつぶせるような、やさしい食材がたくさん展示されていました。

新しいコミュニケーションを模索する先端機器たち。

会場を回っていて、気がついたことがあります。それは、新しいコミュニケーションのスタイルを模索するような機器が充実してきたことです。たとえば、4号館にあった「目の見えない方・見えにくい方のための展示コーナー」では、新聞や雑誌、書類などを見やすく拡大してくれたり、合成音声で読み上げたりしてくれる機器や、音声読み上げ機能のついた地デジ対応テレビ、文書のバリアフリー化を支援するシステムなどを紹介。近年急増する、中高年で視覚障がいになられた方々の生活をサポートするブースが集まっていました。
さらに、このコーナーでは、「触図筆ペン」の展示ブースがありました。このペンは、蜜蝋を溶かしてインクにし、盛りあがりのある線が描ける特殊なペンです。これで絵を描くと、視覚に障がいのある方が盛りあがった線に触れることで、絵を鑑賞することが可能になります。
スタッフの方に伺うと、「晴眼者の方が描いた絵に視覚障がいの方が触れて、楽しく会話している光景を見ていると、ほんとうにうれしくなります」とのこと。アイデア次第で、コミュニケーションのバリアは取り除けるのだ、と思える展示でした。

新聞や雑誌、書類などの文字を見やすく拡大してくれる機器。(上)視覚障がいの方の絵筆となる触図筆ペンの展示ブース。(下)

同じく4号館にある「e-ATパビリオン」では、スマートフォンやタブレット端末、パソコンなどの情報通信機器を応用したコミュニケーションツールを展示。音声ガイド機能を搭載したキーボードや音声読み上げ機能のついたタブレット端末は、視覚障がいの方をはじめ、さまざまな障がいをお持ちの方のアクセシビリティを高めてくれることでしょう。また、携帯性に優れたスマートフォンやタブレット端末を外出先に持っていけば、文字拡大機能や手書き入力機能などを使って、より幅広く深いコミュニケーションが可能になるはずです。さらに、絵文字機能やカメラ機能を応用すれば、言葉を使わないノンバーバル(非言語)コミュニケーションを実現。これによって、発達障がいをはじめ、言語に関する障がいのある方のコミュニケーションを豊かにすることができます。
このような機器が浸透していけば、コミュニケーションにおけるさまざまなバリアを取り除くことができ、人はもっと豊かで優しい関係をつくることができるのではないでしょうか。それは、きっとそう遠くない未来に実現できる、そんな気がしました。

携帯に便利なコンパクトサイズのコミュニケーションツールも充実。

高齢者や障がいのある人の暮らしをもっとアクティブに。

「バリアフリー2012」では、自動車メーカーのブースが充実している印象を受けました。
助手席やセカンドシートが電動で回転し車外へスライドして、車への乗降をサポートする車両。スロープやリフトを搭載して、車イスのままで乗降できる車両。このような介助される人と介助する人の負担を軽減し、ケアセンターなどの福祉施設や病院などで活躍する福祉車両はもちろん、障がいのある方自身が運転する楽しみを満喫できるようなクルマが、3号館に多数展示されていました。
「すべての方に快適な移動の自由を」「出かける喜びを、一人でも多くの方へ」など、言葉は違えども、より多くの人たちに、出かける楽しさを提供しようとの想いが込められた「人にやさしいクルマ」の数々が、障がいのあるなしに関わらず、暮らしを豊かにしてくれることでしょう。
また、車イスに乗ったまま運転できる電動三輪車の展示ブースにもたくさんの人たちが集まっていました。この電動三輪車は、ナンバーを取得して公道を走ることができ、普通自動車免許を持っていれば運転できるそうです。乗り降りは簡単なレバー操作で、運転はスクーターと同じような感覚でできます。時速40キロメートルまで出すことが可能で、車イスの方が、気軽に爽快感あふれるツーリングを楽しむことができる、クールなデザインのスポーティなビークルに仕上がっています。

車イスに乗ったまま乗降できるクルマ。車イスの格納庫にもなります。(上)車イスの方に、爽快なスポーツツーリングの楽しみを提供するビークル。(下)

今回は、障がいのある人の暮らしをよりアクティブにしてくれるバリアフリー旅行の提案も充実していました。無料で相談や予約、手配が行える相談センターや全国各地のバリアフリー情報を提供しているサイトの紹介などをはじめ、リフトタクシーや障がい者用トイレ、車イス専用席、ヘルパー入浴介助などを準備している実際のバリアフリーツアーも多数提案されていました。
近年、街の中で車イスを利用する人を見かけることが多くなりました。さまざまな施設でユニバーサルデザインが採用され、外出することへのバリアが少なくなっているからでしょう。これからも、どんどんバリアをなくしていって、車イスの方はもちろん、高齢者の方々、そして障がいのない人たちにもやさしい生活環境が整っていってほしいものです。このような社会を築くための未来設計図を、今回の「バリアフリー2012」では、たくさん見せていただいたように感じています。

青木事務局長に「バリアフリー2012」への想いを伺いました。

青木美知子さんは、「バリアフリー2012」の主催者である社会福祉法人 大阪府社会福祉協議会の理事であり事務局長を務めていらっしゃいます。ここでは青木さんが「バリアフリー2012」に込められている想いをお伺いしました。

“「バリアフリー2012」は、出会いの場でもあります”と語る青木事務局長。

編集部:「バリアフリー2012」の特長はなんですか?
青木事務局長:そうですね、情報や製品を紹介するだけの一方通行的な見本市ではなく、人と人がつながる“出会いの場”であるということではないでしょうか。
ある大学教授の講演に参加された障がいのある方がおられたのですが、そのとき、教授と意気投合されたそうです。そして、その方が数年後、この展示会で教授と感激の再会をされて、食事を一緒にされたそうです。このように、同じ想いを持つ友人が増えるような楽しみを感じていただけるイベントになっているのが大きな特長だと考えています。
それと、これから市場に出てくるような最先端の情報がたくさんあるということです。だからこそ、業界の関係者による商談の場であるのはもちろんのこと、一般の人にとっても有益な情報がそろっているのです。毎年、ここに来て、最新情報を仕入れる、とおっしゃってくださる来場者の方もたくさんいらっしゃるんですよ。

編集部:これからは、どんなイベントにしていきたいですか?
青木事務局長:少子高齢社会が進むということは、単身世帯が増えることだともいえます。いわゆる「無縁社会」が進むということにもつながりかねません。そんな時代ですから、人のつながりと参加保障が大切だといわれています。社会に参加し、つながっていくことが幸福度を増していくことになるということです。そのきっかけとしてバリアフリー展を活用していただいて、つながりのある居場所を確保していただき、自らの力を発揮できるような機会を得て、出会った人たちと家族のような新しい関係をつくっていただければ最高だと考えています。
また、少子高齢社会が進む日本において、バリアフリーという概念は、これからのあらゆるシーンで必要不可欠になってくるでしょう。そのような環境の下、障がいのあるなしや年齢に関わらず、誰もが安心して快適に暮らしていける条件を整えるために、ユニバーサルデザインや子育て支援に関する展示も行って、家族で楽しく参加していただけるイベントに育てていきたいものです。
編集部:最後に、これからの福祉に対しての決意をお聞かせください。
青木事務局長:バリアフリーでユニバーサルな福祉社会を実現していくためには、個人も企業も団体も可能な限り、社会貢献の一翼を担っていくという視点が大切だと思います。福祉は生きる力を高めることだ、ともいわれています。そんな中で、日本の自然のすばらしさや美しさを共有できる喜びとともに、社会の一員としての役割も新たに創造していくことが必要だということは、この時代において、世代を超えた共通の課題となっています。“誰でも何か役に立てる”という阪神大震災、そして東日本大震災での教訓を大切にして、誰もが自分という存在の必要性を感じる「福祉と共生のまちづくり」をめざしていきたいと考えています。

-編集後記-

今回、ご案内いただいた青木事務局長と森垣事務局次長。

ニュートラム「中ふ頭」駅からインテックス大阪までの道にある桜並木はすっかり葉桜に。一週間ほど早ければ、桜は満開だったのでしょう。
しかし、外のうららかな春の陽気とは一変、会場内は熱気でいっぱいでした。ブースで熱心に質問をされている来場者の真剣な様子やそれに答えるスタッフの姿。そこからは、介助や福祉といった事柄を、決して他人事にせず、誰しもが自分の問題として捉えている真摯な想いが伝わってきました。
次々に行われる基調講演や特別講演、セミナーの数々。そして、ぎっしりのスケジュールで開催されていた多数のワークショップ。青木事務局長のお話通り、「バリアフリー2012」は、単なる福祉に関する製品の見本市を超えて、これからの社会に必要な情報を交流させるコミュニケーションステージでした。
来場者の中には、何年も通っていらっしゃる熱心なリピーターの方々がたくさんいらっしゃると聞いています。おもてなしの精神の行き届いた温もりのある会場の雰囲気、モノに人を合わせるのではなく、あくまでも人を基準につくられたモノたち、そして、なによりもバリアフリーを「自らの課題」としてとらえる自立性。これらの要素が集まって、「バリアフリー2012」の活気を生み出しているのでしょう。
来年開催される「バリアフリー2013」にも、必ずや足を運んでみたい、と思いました。

バリアフリー2012 第18回 高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展
-イベント・データ-
名称:バリアフリー2012
第18回 高齢者・障がい者の快適な生活を提案する総合福祉展
開催期間:2012年4月19日(木)~21日(土)
会場:インテックス大阪(2・3・4・5号館)
展示規模:303社・団体、816小間
来場者数:約93,000人
主催:社会福祉法人 大阪府社会福祉協議会・テレビ大阪
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