1. ホーム
  2. 【バリアフリーレポート】第3回 車いすで行く!「オオサカメトロ(Osaka Metro)でGO!」by きーじー[その2]

【バリアフリーレポート】第3回 車いすで行く!「オオサカメトロ(Osaka Metro)でGO!」by きーじー[その2]

[その2] バリアフリー化に注力する、オオサカメトロ(Osaka Metro)の“今”

“車いすの旅人”きーじーこと木島英登がお送りするバリアフリーレポート、前回の「えきペディア」(※1)に続いては、バリアフリー化に力を入れるオオサカメトロ(Osaka Metro、以下オオサカメトロ)(※2)の現在をお伝えします。
インバウンド(訪日外国人)需要も増えて、より便利に活気づく大阪の大動脈、御堂筋線の「梅田」「動物園前」「天王寺」の3つの駅を回り、取り組みの様子を見せてもらいました。

※1:[その1] 地下鉄のバリアフリー情報を公開「えきペディア」
   http://www.dreamarc.jp/archives/5852/

※2:正式名称は大阪市高速電気軌道株式会社。オオサカメトロは愛称。

[図1]民営化の際に社名を大阪市交通局から変更
国際化を見据えて英字表記のロゴに

2018年4月に民営化したオオサカメトロ。ロゴもスタイリッシュに変化しました[図1]。かつて悪評の高かったトイレもきれいになりました。路線図や駅構内での表示も明確に分かりやすくなりました。何だかサービスも良くなったんとちゃうか? との印象を抱いている大阪の人々も少なくないのでは、と思います。
車いすの私が一番気になるのは、バリアフリーのこと。オオサカメトロは前身である大阪市交通局のころからバリアフリー化に熱心で、2010年度までに全駅で地上からホームまで階段を使わず移動できる、いわゆる「ワンルート」を整備。2013年度には、全乗り換え駅でワンルート乗り換えの整備を達成するなど、車いすでも安心して利用できるイメージがあります。

まずは、嬉しい変化があった「梅田駅」へ
スロープやミラーの設置、ホーム床の案内でストレスフリーに

事前に「えきペディア」で情報収集し、あらためてバリアフリー経路を確認[図2]。青い点線のルートを選択。阪急電鉄の沿線に住む私は、阪急の大阪梅田駅から、エレベーターと地下1階の通路を用いて、オオサカメトロ御堂筋線梅田駅の北改札へと向かいます。

[図2]「えきペディア」の梅田バリアフリーターミナルマップ
車いすで通れるルートは青いラインで表示されている
*クリックすると大きな画像が開きます。

阪急梅田駅と、オオサカメトロ御堂筋線梅田駅を結ぶ地下通路に、嬉しい改修がありました。2018年3月に完成したスロープ[写真1]です。
以前は改札の近くに階段があり、端の1.5mぐらいの幅だけがスロープでした。人混みがとても多い通路。車いすの場合、スロープしか通行することができず、一方通行状態になっているところを、こちらが注意してゆっくり進んでも、スマホを見ながら歩く人とぶつかりかけたり、睨まれたりと、非常にストレスを感じる場所でした。
しかし、それも昔話に。改修で連絡通路全体が段差のない緩やかなスロープに変身。これによって、前から歩く人とぶつかりそうになることはなくなりました。ベビーカーも、スーツケースを持つ人もハッピー。高齢者が階段でつまづく危険性もなし。人の流れもスムーズになりました。

[写真1]阪急三番街(地下1階)から、オオサカメトロ梅田駅をつなぐスロープ

スロープが新しくなる以前、2015年には梅田駅のトイレも新しくなり、多機能トイレも北改札側に設置。構内も明るくなりました。車いすが通行できる幅広改札[写真2]も、入場用と出場用の2つが設置され、ストレスフリーに移動できます。

[写真2]オオサカメトロ梅田駅、北改札の2番線側にある幅広改札から入場
[写真3]通路の構内図で、[図1]の「えきペディア」マップにも載っていた
多機能トイレの位置を再確認。北改札を入ってすぐの入りやすい場所にある
説明してくださっているのが、今回アテンドして下さったオオサカメトロ 広報戦略部 広報課の竹下さん

御堂筋線の梅田駅、コンコースからホームへとつながるエレベーターは中央と南に1基ずつ。ヨドバシカメラ、阪急・大阪梅田駅、JR大阪駅などとつながる北改札からは、通路を南へ向かった先にあります。
通路の曲がり角にはカーブミラーが設置[写真4]。きめ細かい配慮に感謝です。車いすの私は、曲がり角で誰かにぶつからないか必ず確認していますが、そんなときこのカーブミラーが役立ちます。

[写真4]通路の曲がり角に設置されたカーブミラー。向こうから来る人の姿が確認できる

ホームでは、床に道案内の表示がありました[写真5]。エレベーターなどへの矢印が表示されています。歩行者通路のため、「立ち止まらないでください」との表示もあります。
エレベーターに乗りたいのに、ホームが大混雑していて通りにくいときでも、このような案内があると「すみません」と一声かけてスムーズに通行できそうです。

[写真5]ホームの歩行者通路表示。エレベーターなどの方向を示す矢印も

梅田駅から、動物園前駅に移動します。ホームと車両に段差があっても普段はひとりで乗降しますが、今回は厚意に甘えて、車いす用スロープを利用しました[写真6]。ちなみにオオサカメトロでは、全車両に車いす・ベビーカースペースが設置されています。車両を選ばず、どこでも乗れるのが嬉しいです。

[写真6]車いすユーザーが乗りやすいよう、車両とホームにかける車いす用スロープを持つ駅係員の方

広報の方によると、新型車両には、車いすユーザーをはじめ、利用者が快適かつ便利に乗車できるよう、扉の横に50cmの「ゆっとりスペース」を設置しているとのこと[写真7・8]。障がいのある人だけでなく、大きな荷物のある人、ベビーカーにも役立ちます。ゆっとりスペース設置は、良いアイデアですね。

[写真7](左)車両内の「ゆっとりスぺース」。車いすユーザーも安心して乗れる
[写真8](右)旅行中の人はスーツケースを置くことも可能
*クリックすると大きな画像が開きます。

コテコテでも、ひと目でわかる進路表示がありがたい
家族連れも多い「動物園前駅」の親切表示

御堂筋線と堺筋線が乗り入れる、動物園前駅。「えきペディア」で事前確認していましたが、堺筋線は御堂筋線の下を走っているため、車いすで乗り換えるには、エレベーターを使用しなければなりません[図3]

[図3]「えきペディア」動物園前駅のバリアフリーマップ
堺筋線ホームと御堂筋線への通路をつなぐエレベーターがあるのがわかる

ホームには、乗り換えや地上へのエレベーター案内があちこちに掲示され[写真9・10]、どこにエレベーターがあるのかな? と探す必要はありません。
青と黄色のコントラスト。めだちますね。大切な情報が、どこを向いても入ってきます。 動物園がある駅。小さい子どものいる家族も多いと思われるので、ベビーカー利用の人が迷わないようにとの配慮もあるのでしょう。

[写真9・10]ホームの柱や通路の壁など、駅内のあらゆる場所に掲示されたエレベーターへの進路
青地に矢印や出口番号は黄色という、強めのコントラストによって、めだつ表示に

下の写真は堺筋線のホームですが、これは理想的なバリアフリーのカタチ。
エスカレーター、階段、エレベーターと、3種類の動線があり、利用者の都合に応じて選択ができます[写真11]

[写真11]エスカレーター、階段、エレベーターが並ぶ堺筋線ホーム
利用者の都合に合わせて、動線を選択できるのがいい

御堂筋線のホームは、子どもが喜びそうな、ユニークなデザイン[写真12]。遊び心が満載です。
このホームの車両停車位置サインにも、車いす・ベビーカーの座席スペースの有無が表示されています[写真13]。至れり尽くせりのバリアフリー情報開示。移動に迷うことがなく、快適な駅でした。

[写真12]動物のタイル絵や写真が並ぶ御堂筋線のホーム
[写真13]足元の車両停車位置サイン。車いす・ベビーカーのピクトグラムが表示されている
*右の画像はクリックすると大きな画像が開きます。

多機能トイレにも立ち寄らせてもらいました。[写真14]
前述しましたが、民営後の大きな変化は、トイレがきれいになったことです。このとおり!

[写真14]民営化後の大きな変化、スペースにゆとりもあり使いやすい多機能トイレ
車いす、ベビーカーで入れるほか、オストメイト対応設備もある
*クリックすると大きな画像が開きます。

可動式ホーム柵設置が完了した「天王寺駅」
ホームと車両の段差解消で、車いすでの乗降がスムーズに

続いて、天王寺駅に移動。ここもオオサカメトロ御堂筋線・谷町線のほか、JRや近鉄線、阪堺線への乗り換えが可能な一大ターミナル駅です。
このバリアフリーレポートでは以前に「あべのハルカス」を取材しましたが(※3)、他にも車いすで散策、楽しめるスポットが多い街です。いったんここで下車して、それらのスポットをご紹介したく思いますが、それはまた後ほど。

※3:【バリアフリーレポート】第1回:車いすでいく!「あべのハルカス」 byきーじー
   http://www.dreamarc.jp/archives/1625/

さて、オオサカメトロでは順次可動式ホーム柵の設置を進めていますが、ここ天王寺駅はその工事が完了[写真15]
可動式ホーム柵設置の際に、ホームの底上げを実施して、段差の解消をしています。同時に、車両とホームの隙間にも櫛状の強化ゴムをつけ、車両とホームの隙間の解消を行っています。

[写真15]可動式ホーム柵の設置が完了した御堂筋線 天王寺駅のホーム

下の写真をご覧ください。段差や隙間がありません[写真16]。車いすユーザーも単独での乗降が可能です。
乗降のつど、駅係員の方に介助を依頼して、車いす用スロープを用意してもらう必要はありません。乗りたいときに乗りたい電車に乗れます。

[写真16]ホームと車両の段差とすき間が解消され、車いすユーザーも無理のない乗降が可能に
[写真17] (左)段差・すき間解消を行う前の乗降風景。しかし対策後は(右)の通りスムーズに
*クリックすると大きな画像が開きます。

広報の方にお伺いしたところ、2010年・2011年の長堀鶴見緑地線の可動式ホーム柵設置のときに、段差・すき間の縮小を行ったのが最初。2014年度に千日前線、御堂筋線 心斎橋駅・天王寺駅の可動式ホーム柵設置に合わせて、同様に段差・すき間の縮小を実施したそうです(※4)

※4:ただし、御堂筋線では、床面の高さが異なる電車が混在しているため、一部の電車では段差が大きい場合があるとのこと。

オオサカメトロでは、可動式ホーム柵設置を、前述の駅や今里筋線、ニュートラムなど54駅で完了。2025年度までに全駅で設置することとし、御堂筋線の残る駅は2021年度まで、中央線は2024年度まで、谷町線、四つ橋線、堺筋線は2025年度までの完了をめざしているとのこと。その可動式ホーム柵設置に合わせて段差・すき間の解消をするとのことで、駅舎のバリアフリー化に続き、段差・すき間の解消が、鉄道のバリアフリーに関する次なる課題といえる現在、旅客業界におけるバリアフリー化のトップランナーではないかと思います。
2025年といえば大阪・関西万博。日本中、世界中から訪れる車いすユーザーの観光客は、駅係員の介助なしに、自由に多くの駅が利用できることになります! すごいですね! このままいけば、車いす用スロープを敷いて車両に乗り込む風景は、未来には見られなくなるかもしれません。

もうひとつ、オオサカメトロのユニークな配慮を紹介します。天王寺駅には、ボタンを押さなくても、自動で移動してくれる仕様のエレベーターがあります。ホームから乗れば、自動的に改札階へのボタンが押されているということ。
ホームから改札階への単純な上下移動のみの場合、エレベーターを利用する乗客すべての目的地は同じになります。だから、ボタンを押す手間を省いているのです。四肢まひなど、様々な事情でボタンを押しにくい人には、とても便利です。オオサカメトロのエレベーターは、一部の機種を除いて同じ仕様になっているとのことです。
大阪を訪問して、初めてオオサカメトロを利用する車いすユーザーの中には、エレベーターに乗ったらボタンを押さなくても移動できた! とビックリする人もいるでしょう。嬉しい驚きではと思います。

ハードだけでなくソフトも充実を
広がるバリアフリーへの取り組み

オオサカメトロでは、その他の取り組みとして、2021年度までに、駅係員のサービス介助士資格取得100%をめざしているとのこと。同時に、視覚に障がいのある利用者の方に向け、全駅に配置したIP無線機を活用して、駅係員が利用者に積極的な声かけを実施し、サポートを希望されなくても、改札口からホームまでの見守りを行っているそうです。
聴覚障がいのある利用者および、海外からの利用者には、「コミュニケーションボード」を各駅に設置[図4]、利用者と駅係員が円滑なコミュニケーションを図れるようになっています。

[図4]多言語で表示されたコミュニケーションボード
絵を示す、メモに記入するなどして利用者と駅係員がコミュケーションを図れる
*クリックすると大きな画像が開きます。

他にも、運行見合わせ時の案内といった構内放送を多言語化し、利用者のスマートフォンなどに文字として表示する、ヤマハが開発したアプリケーション「おもてなしガイド」を活用した多言語案内サービスの実証試験の実施(※5)、障がい当事者の方々にも参加してもらっての防災訓練、バリアフリー体験会なども行われているそう。
「バリアフリーガイドラインなどに沿って、必要とされるバリアフリー施設の充実に努めるとともに、障がいのある方も遠慮されることなく、駅係員や、周囲の人にサポートを依頼していただくなど、互いに支え合う、誰もが安心してお出かけしていただけるような社会をめざしたい!」とのこと。ハード(施設)だけでなく、ソフト(サービス)の部分も両輪として考えているというのは本当に素晴らしいですね。

※5:「おもてなしガイド」については、下の記事で紹介しています。
   【ICTレポート】第36回 SoundUDクラウド SoundUD推進コンソーシアム
   http://www.dreamarc.jp/archives/5733/

[写真18]御堂筋線 天王寺駅の西改札。ここを出て南側には「あべのハルカス」、北へ向かえば天王寺公園がある

天王寺駅の西改札を出て、オオサカメトロとはここでいったんお別れです。
せっかく天王寺まで来たので、にぎわう街を楽しみましょう! 天王寺駅周辺のお楽しみスポットは、次回たっぷりレポートします。お楽しみに!

*[その3] は11月18日(月)公開予定です。

企業情報

― 大阪市高速電気軌道株式会社(オオサカメトロ)―
URL:https://www.osakametro.co.jp/

■レポーター プロフィール
木島 英登(きじま ひでとう)
車いすの旅人。世界150カ国以上を単独訪問。1973年大阪生まれ。高校3年生のとき、ラグビー部の練習中に下敷きとなり、第11胸椎を脱臼圧迫骨折。脊髄を損傷。以来、車イスの生活に。広告会社勤務を経て、バリアフリー研究所を設立。講演・執筆・コンサルなどを行う。著書に『空飛ぶ車イス』(IMS出版)、『恋する車イス』(徳間書店)『車いすの旅人が行く!』(講談社)がある。訪日外国人へのバリアフリー情報を提供するNPO法人「Japan Accessible Tourism Center(ジャパン・アクセシブル・ツーリズム・センター)も運営。
個人サイト:http://www.kijikiji.com
NPO法人 Japan Accessible Tourism Center:http://www.japan-accessible.com

その他の新着記事

【ICTレポート】第37回 VIPコードリーダー/QR Translator エクスポート・ジャパン株式会社
【ICTレポート】第36回 SoundUDクラウド SoundUD推進コンソーシアム 言語、聴力の不安のない社会実現に向け官民を挙げて「音のユニバーサルデザイン化」を推進する
印刷用ページを表示する

バックナンバー

*クリックまたは、エンターキーによりメニューが表示されます