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【バリアフリーレポート】第3回 車いすで行く!「オオサカメトロ(Osaka Metro)でGO!」by きーじー[その1]

[その1] 地下鉄のバリアフリー情報を公開「えきペディア」

ご無沙汰しました。車いすの旅人、きーじーこと木島英登がお送りするバリアフリーレポートが復活!
今回は、鉄道、とりわけ地下鉄の利用にあたって、車いすユーザーにおすすめのバリアフリー情報満載のサイト「えきペディア」をご紹介。
さらに次回以降は、高齢の方やインバウンド(訪日外国人)需要も増えて、バリアフリー化に力を入れるオオサカメトロ(Osaka Metro、以下オオサカメトロ)の現状や、ターミナル駅(天王寺)周辺の、車いすで楽しめる散策ルートなどをお伝えします!

木島英登
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インバウンドで賑わう大阪。観光名所の大阪城天守閣には、外国から来た人を含む、車いすでの観光客が1日10人以上は訪れていると、警備員の方がおっしゃっていました。
大阪のなんばや梅田といった繁華街はもちろん、京都や奈良など人気の観光地でも、ベビーカーに乗る子どもと一緒に家族旅行を楽しむ海外からの旅行者の姿を見ることが本当に多くなりました。先日のG20大阪サミットでは、首相のエレベーター発言騒動がありましたが、車いすユーザーだけでなく、階段の昇り降りが苦手な高齢者も含め、今や多くの人がバリアフリー化の恩恵を受けています。
日本の鉄道はバリアフリーで、車いすユーザーにも、ベビーカーにも優しい、気軽に利用できるということが、世界に広まっていると肌で感じます。
そんな鉄道、とりわけ地下鉄のバリアフリー情報を得られるサイトが、今回ご紹介する「えきペディア」です。

駅構内のバリアフリーな移動経路を分かりやすく
案内マップを開発・整備する「えきペディア」とは?

「えきペディア」とは、全国の地下鉄駅、ターミナル駅の構内バリアフリーマップを公開するWebサイトです。

「えきペディア」トップページ
全国9都市(札幌・仙台・横浜・東京・名古屋・京都・大阪・神戸・福岡)の
地下鉄全駅と都心ターミナルの案内などが掲載されている
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交通機関のバリアフリー情報に対する、人々の高いニーズに対応し、ユニバーサルデザインに基づき(※1)独自開発されたマップは、移動制約のある障がい者だけではなく、年齢、色覚など、あらゆるバリアを超えて、目的を問わず利用できるものです。
もちろん英語にも対応。また、掲載のマップは、アプリや冊子、コンビニでのプリントなど、様々な方法で入手できます。

※1:2010年に、公共サービスシステムとしてグッドデザイン賞、IAUD国際ユニバーサルデザイン協議会・優秀賞を受賞。

「えきペディア」の展開例。Webサイト(スマートフォン対応可)のほか
冊子(印刷物・電子書籍)の出版や、様々なスポーツ大会・イベントなどへの情報提供・連携も行っている
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「えきペディア」を運営する「NPO法人 まちの案内推進ネット」の理事長を務める岡田光生さんと私は、10年以上前から、バリアフリー関連の学会や勉強会などで会うことが多く、互いに名前と顔はよく知った間柄。同じ大阪で、情報バリアフリーの活動を精力的に行う姿は心強く、すごいなあと感銘するばかり。
今回「えきペディア」についてインタビューするにあたり、あらためてサイトを拝見すると、全国の地下鉄を網羅していることに驚き! こうしたバリアフリーマップの制作は、助成金などがつく場合もありますが、一度きりや期間限定なことが多く、マップが一度作られても、その後、更新されにくいという問題があります。岡田さんに「えきペディア」を13年にわたり運営、継続してきた秘訣や、苦労された点などを聞いてみたいと思います!

「NPO法人 まちの案内推進ネット」の理事長、岡田さん(右)と
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「えきペディア」は、案内情報のユニバーサルデザイン化をめざす
バリアフリー経路を必要な人に適切に伝えることが永遠のテーマ

木島:「えきペディア」の活動を開始されたきっかけを教えてください。

岡田:もともと公共系の案内をデザインする仕事をしていたのですが、鉄道のターミナル駅など、乗り入れる鉄道の間で案内の連携がされていない、担当する局が違うなどの理由で、案内表示が鉄道会社ごとに異なり、統一されていない、などの問題がありました。
2006年に移動の円滑化に関する調査を自費で実施し、障がい者団体などの協力のもと、2000名のサンプルを集めました。その中で、約6割の利用者はエレベーター設置など、鉄道の駅の“ハード”整備を高く評価していましたが、駅の案内は分かりにくいと評価が低く、障がい者だけでなく、同行の介助者も7割が駅で迷った経験があり、外出前に必要な情報が得にくいとの不満が示されました。
また、駅の案内表示が十分に機能しているか、移動の条件が異なる身体属性別に迷い方を比較・分析した結果、バリアフリーな施設やその経路を探す人や、ホームや他社線への乗り換えで迷う人が多いと分かりました。外出時の不安も、トイレや出入口が利用できるか、駅の中で移動可能なのかが関心ごととしてあるなど、駅のバリアフリー案内の改善課題が明らかになり、行動しないといけないと決意。地下鉄の駅のエレベーター位置や、バリアフリールートに関するマップを制作することになりました。
地下鉄に特化した理由は、目標となる建物などが見えない地下空間では、迷う可能性が高くなるからです。まずは大阪市営地下鉄(オオサカメトロ旧名)の駅のバリアフリー情報を整備し、2006年に「えきペディア」を開設して、情報公開を始めました。

「えきペディア」開設の経緯を語る岡田さん
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木島:現在は各鉄道会社も、ホームページなどで駅の構内図を公開してくれています。各鉄道会社の公式情報と「えきペディア」の違いは何でしょうか?

岡田:「えきペディア」マップの特徴は、どの向きから見ても使えることです。鉄道会社の構内図のデザインも昔と比較すると、見やすく改善されてきたと思います。そこには、なるべくシンプルに、単純化されたマップの作成を心がけてきた、「えきペディア」の影響も少しあるのかなと自負する部分があります。もちろん利用者が便利になることは良いことなので、使いやすいマップが増えるのは歓迎です。
しかしながら、乗り換えに関しては、まだ大きな問題があります。「えきペディア」では、運営する事業者が違う複数の駅も、乗り換え情報として一枚のマップに表示していますが、各鉄道会社の構内図ではそうではありません。たとえば、改札の外はもう管轄が異なるというのであれば、そこから先の情報を提供する責任は、鉄道会社にはありませんから。構内図だけでは、ターミナル駅で、違う鉄道会社へ乗り換えるための、つなぎの部分が空白地帯になってしまいます。
とはいえ、ハードの整備(駅設備のバリアフリー化)は、どの鉄道会社もよく取り組まれていると思います。「まちの案内推進ネット」でも、交通事業者や地下街と連携して、マップ制作、情報公開などの事業をさらに行っていければいいのですが。

木島:確かに、乗り換え問題はこれからの課題ですね。複数の鉄道が交差するターミナル駅は、慣れない人には複雑すぎることが多いです。車いすを利用しているとなると、もはや迷路。各々の駅単体で見たときにはバリアフリーになっていても、乗り換えが非常に大変なことが多いです。東京の地下鉄では乗り換えのとき、車いすは改札の外に出ないとルートがない、ということが頻繁にあります。JR大阪駅からオオサカメトロ、阪急線、阪神線への乗り換えも、車いすルートは単純ではないですね。
オオサカメトロさんへの取材でも、「目的地によっては著しく遠回りになるなど、車いすユーザーのお客さまにご不便をおかけする駅があるなど、課題があります」と、スムーズな乗り換えは課題だと認識されていました。そのため、「既存のエレベーターから出入口までの移動距離が長い」「幹線道路の横断が必要」「歩道に十分な設置スペースがあり、大規模工事が発生しない」など、一定の条件のもとで新規エレベーター整備を行い、バリアフリールートの複線化を進めているそうです。
さらに、「2024年度までに18駅でバリアフリールートの複線化を完了する予定」とも伺いました。そうやって、駅がだんだんと動きやすく、改善されていくのはありがたいことです。

「えきペディア」の大阪梅田バリアフリーターミナルマップ。青い線で車いすの通れるルートが示されている
駅につながる建物も階数を表示、立体的に表現されていて移動のイメージが掴みやすい
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木島:「えきペディア」に対して、実際のユーザーからの反響はどんなものがありますか?

岡田:PV(ページビュー)で年間600~700万の訪問があり、外出前に情報検索するのに使われることが多いようです。
各駅の多機能(バリアフリー)トイレを写真でたくさん掲載しているのが、重度障がい者のヘルパーや、家族の人に好評です。大きな電動車いすでも入れる広さか、便座の大きさはどうか、介護用ベッドはあるのか、オストメイトの設備があるのかなど、事前にトイレチェックができるのです。我々は、マップを制作した全ての駅で実地調査をしているため、写真も自分たちが撮影したものを掲載しています。
また近年、電動車いすの大型化が進んだので、エレベーターの大きさをチェックする人もいます。ストレッチャータイプの車いすの利用者も、利用できる大きさのエレベーターがあるかを調べる必要があるため、そういった面でも使われています。

木島:各駅の多目的トイレの写真は圧巻ですよね。エレベーターも大きさが異なりますから、きめ細かい情報提供を必要とする人がいるのは確かです。これだけの活動を行う予算は、どうやって確保されているのでしょう?

岡田:冊子の制作などは、助成金を申請し、費用の60%から70%の支援をもらえることもありますが、結構な部分で私財を切り崩して運営しています。もはやライフワーク。何千万円とつぎこみました。そろそろ資金も底をつきそうです(笑)。
バリアフリー情報も変化するので、マップの情報更新が必要ですが、その予算を確保するのが厳しくなっています。クラウドファンディング、企業とのコラボレーション、各種支援金への申し込み、マップへの広告枠提供、あらゆることを試みていますが、まとまった資金を提供してもらうのは難しいのが現状です。

(左)岡田さんの前に広げられているのは、観光案内所などで配布する紙版の「えきペディア」マップ
(右)中には、バリアフリールートの写真が豊富に掲載され、事前にエレベーターが確認できる
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木島:「えきペディア」の今後の展開について、予定されていることがあれば、お聞かせください。

岡田:利用者にとって案内情報が分かりやすいこと、利用しやすいこと。移動の円滑さを図るための案内情報の標準化、ユニバーサルデザイン化がめざすところです。都市や交通機関が異なっても、提供できる案内情報が統一されること。バリアフリー経路が必要な人に適切に伝わること。それが永遠のテーマです。
各ユーザーが利用した施設のバリアフリー情報を投稿して、それを蓄積する参加型のアプリなども増えていますが、車いすユーザーの行動経路をビッグデータで分析し、どのルートが一番利用されているのか、利用しやすいのかなど表示されるものがあれば面白いと思います。自己資金も尽きるかもしれませんが、公共交通の利用における移動情報提供支援のモデル構築に、これからも取り組んでいきますよ!

取材を終えて

私も、訪日外国人への観光バリアフリー情報を提供するNPOを運営していますが、運営資金の確保はどの組織でも大変だと思います。岡田さんの移動情報提供のモデル構築に懸ける情熱には感服します。まさか自己資金まで投入されているとは知りませんでした。
バリアフリーといっても、人によって使いやすさはそれぞれ。「えきペディア」が、“利用できるバリアフリー施設かどうか”をユーザーが自分で判断できる情報を提供しているのは素晴らしいです。きめ細やかな写真による事実情報の提供、モバイル対応、英語対応。マップ作成の労力。全ての駅を実地調査する。情熱がなければできないことです。気の遠くなるような、すごい取り組みです。
逆をいえば、人の情熱だけを頼りしている限りは、「えきペディア」ならずとも持続は難しく、社会としては良いとはいえないでしょう。2006年にバリアフリー新法(※2)が施行されて以降、設備のバリアフリー化は進みましたが、情報に関するバリアフリーはまだ十分とはいえません。これから一層の整備や義務化が求められるでしょう。
その中で、「えきペディア」には、今後も高い志を掲げて、移動情報提供支援の道をまい進していただきたいです。「まちの案内推進ネット」の資金が尽きないよう、取り組みを支える方法も考えていかなければなりませんが……。

※2:バリアフリー新法…正式名称は「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」。高齢者や障がい者が気軽に移動できるよう、階段や段差を解消することをめざした法律。

それでは、次回は「えきペディア」で得た情報を基に、バリアフリー化に力を入れるオオサカメトロの現在をレポートしたいと思います。お楽しみに!

[その2] は11月8日(金)公開予定です。
 [その2] の公開予定日は11月11日(月)に変更いたします。

「えきペディア」「NPO法人 まちの案内推進ネット」について詳しくは…

―「えきペディア」ホームページ―
http://ekipedia.jp/

― 「NPO法人 まちの案内推進ネット」ホームページ―
http://annai.or.jp/

■レポーター プロフィール
木島 英登(きじま ひでとう)
車いすの旅人。世界150カ国以上を単独訪問。1973年大阪生まれ。高校3年生のとき、ラグビー部の練習中に下敷きとなり、第11胸椎を脱臼圧迫骨折。脊髄を損傷。以来、車イスの生活に。広告会社勤務を経て、バリアフリー研究所を設立。講演・執筆・コンサルなどを行う。著書に『空飛ぶ車イス』(IMS出版)、『恋する車イス』(徳間書店)『車いすの旅人が行く!』(講談社)がある。訪日外国人へのバリアフリー情報を提供するNPO法人「Japan Accessible Tourism Center(ジャパン・アクセシブル・ツーリズム・センター)も運営。
個人サイト:http://www.kijikiji.com
NPO法人 Japan Accessible Tourism Center:http://www.japan-accessible.com

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