1. ホーム
  2. 【ICTレポート】第37回 VIPコードリーダー/QR Translator エクスポート・ジャパン株式会社

【ICTレポート】第37回 VIPコードリーダー/QR Translator エクスポート・ジャパン株式会社

QRコードを使って
視力に障がいのある人たちの
情報格差をなくしたい

(左)QR Translatorで制作したコンテンツをVIPコードリーダーで読み取る
(右)QRコードを記載した印刷物の見本
*クリックすると大きな画像が開きます。

皆さん、こんにちは。ドリームアーク編集部です。
たとえば、スマートフォンがあれば……。
ショッピングの際にQRコードを読み取って代金を払う、印刷物に掲載されたQRコードを読み取って見たいサイトにアクセスする、テレビに映されたQRコードを読み取って別のコンテンツを見る……。
最近、QRコードをあちらこちらでよく見かけるようになりましたね。
どうやら、QRコードが見直されている気がします。

あれ、見直されている、ってどういうこと? と、お思いの方もいらっしゃるのでは。
実は、QRコードは、純国産のテクノロジー。
1994年に株式会社デンソーウェーブが、高速で正確に読み取れることを目的に開発した、マトリックス型2次元コードと呼ばれるものなのです。
もちろん特許が申請されていますが、デンソーウェーブは、その特許を公開して広く使われるようにしています。

QRコードは、一時期、日本では活用が控えられる傾向にありましたが、世界レベルでの電子決済の隆盛により、再び脚光を浴びるようになりました。
フィンテック(※1)を支える基幹技術として活用されているからです。
そんな経緯もあって、海外の技術のような印象があるのかもしれませんね。

※1:フィンテック(FinTech)…金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。スマートフォンを使った送金など、金融サービスと情報技術を結び付けた様々な革新的な動きを指す。

このQRコード、福祉の世界でも注目されています。
アクセシビリティー対応機能を使って、スマートフォンを使いこなす視覚障がい者がどんどん増加している中、QRコードを活用し、様々な視覚情報を音声情報に変換して提供しよう、という試みがなされているからです。
しかし、視覚障がいのある人がQRコードを読み取りたくても、まず、カメラモードが立ち上がっているかどうか、分からない。
スマートフォンが水平になっているか分からない。といったことから、コードを読み取れない……。
というようなことが起こり、普及の道を狭めていました。

さて、今回のICTレポートは、このQRコードにいち早く着目し、QRコードリーダーの操作性を高めることで、視覚に障がいのある方に役立てることはできないか……と考え、試行錯誤を重ねながら、新しいコードリーダー「VIP(※2)コードリーダー」を開発されたエクスポート・ジャパン株式会社の活動をお伝えします。
実際に、どんなことができるのか、将来の展望は……?
気になるところをいろいろお伺いしてきました。

※2:VIP…Visually Impaired People (視覚に障がいを持つ人々)の略称。

視覚に障がいのある人も使いやすいQRコードリーダー
「VIPコードリーダー」

世界中の視覚障がい者に向けた「VIPコードリーダー」
*クリックすると大きな画像が開きます。

実際にQRコードリーダーを使われたことがある人はご存じだと思いますが、QRコードをカメラで読み取ると、まずURLの文字列が表記されます。
それをタップすると、該当するサイトに移動して、そこからページを閲覧する……という手順になります。
視覚障がいがある人達は、この「閲覧」の際に、ボイスオーバーやトークバック(※3)という機能を使ってページの内容を音声として受け取ります。
この操作において視覚に障がいのある方の高いハードルになっていたのが、まず、スマートフォンでカメラモードが立ち上がっているかの確認。
そして、スマートフォンが水平に保たれているかどうか。
「VIPコードリーダー」は、カメラモード立ち上げ時や水平が保たれていない際に、音で状況を知らせてくれます。
さらに、URLの文字列表記を省略して、すぐにサイトに移動してくれます。
そして、スマートフォンに設定されている言語で、読み上げてくれるのです。
シンプルな操作によって、視覚に障がいのある人に特化した、QRコードリーダーとなっているのです。

※3:「ボイスオーバー(VoiceOver)」はiPhoneに、「トークバック(TalkBack)」はAndroidに、それぞれ搭載されている音声読み上げ機能。

「VIPコードリーダー」でQRコードを読み取ると、
そのページの情報が設定した言語(写真の場合は日本語)で表示される
*クリックすると大きな画像が開きます。

視覚に障がいのある人に特化して使いやすいQRコードリーダーがあれば
情報格差を是正できるかもしれない、との気づきから開発へ

代表取締役の高岡謙二氏(右)と、
グローバル事業部 コンサルタントのレス・ロマン氏(左)
*クリックすると大きな画像が開きます。

「開発のきっかけは、視覚障がい者の自立支援団体である神戸ライトハウス(https://kobelighthouse.com/)さんからの相談だったんです」(※4)とエクスポート・ジャパン株式会社の代表取締役・高岡謙二氏は、開発の経緯を語ってくれました。
「QRコードを使って、視覚に障がいのある人たちに情報提供することはできないか?」そんな相談だったといいます。

※4:関連記事「NPO法人 神戸ライトハウス インタビューレポート」
http://www.dreamarc.jp/archives/3233/

かつては、視覚障がいのある方への情報提供には、点字が主に使われていました。
しかし、高齢社会の到来などの影響で、生まれながらではなく、後天的な視力障がいのある人が増えてきました。
その結果、従来、視覚に障がいのある方の、コミュニケーションのメイン手段とされてきた、点字の識字率が激減したといわれています。
ちなみに、視覚に障がいのある人は、日本全国で約30万人と言われていますが(※5)、そのうち、点字が読める人の割合は10%程度だそうです。(※6)

※5:総務省「1.視覚障がい者の現状と音声案内のニーズ」より。
http://www.soumu.go.jp/soutsu/hokuriku/resarch/houkoku/1.1.pdf

※6:立命館大学生存学研究所『生存学研究センター報告書[12]』 「第2章 視覚障害者用支援機器と文字情報へのアクセス」 掲載「障害程度別にみた点字習得および点字必要性の状況」より。
https://www.ritsumei-arsvi.org/publication/center_report/publication-center12/publication-188/

相談が入ってから、間もなく、エクスポート・ジャパンのチャレンジが開始されました。
一社でトライするには、大きすぎるプロジェクトだったので、日本最大の技術開発推進機関であるNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)に相談したところ、関連する支援制度を紹介され、その正式な認可を受けてから、開発を進めていったそうです。

ところで、神戸ライトハウスさんから相談が入った背景には、元々、エクスポート・ジャパンの関連会社である株式会社PIJIN(ピジン)が、QRコードを活用した多言語音声対応のソリューションを開発・運用していたということがあります。
(このソリューションについては後述します)
QRコードについての知識やノウハウを期待されてのことでした。

本当のニーズは、現場にいないと分からない…
数多くの実証実験を重ねる理由

「VIPコードリーダー」の開発にあたっては、全国各地で、数多くの実証実験が重ねられてきました。
そして、現在も様々な実験が継続的に実施されています。
「実証実験をするのは、現場の声を聞きたいからです」と高岡氏は語ります。
「本当のニーズは、現場にいないと分からない。 開発者が机の上で想像しているだけでは、実際に使う人が本当に求めているもの・ことを見逃してしまう」

実証実験を通じて、

〇カメラモードになっていることを知らせてくれる
〇スマートフォンが水平になっているかを知らせてくれる
〇アプリの最初に利用方法を説明する画面が立ち上がる

といった操作性を付加することが必要だ、ということに気づいたそうです。

これらは、現場と密接につながっているからこそ、見つけることができたニーズなのですね。

実証実験を重ねる意義を語る高岡氏
*クリックすると大きな画像が開きます。

できる限り多くの人たちに、ベネフィットを届けるために
自ら課した高いハードル

開発を担当したレス・ロマン氏はフランス人
多言語対応の「VIPコードリーダー」をつくる会社に国の垣根はない
*クリックすると大きな画像が開きます。

視覚に障がいのあるより多くの人たちに、「VIPコードリーダー」のベネフィットを届けるためには、現在使われているスマートフォンのほぼすべての機種に対応できるアプリケーションに仕上げなければなりません。
「iOSはもちろん、Androidのほとんどの機種に対応できるようなプログラムを作らねばならない……というのが大変でした」と、開発を担当したレス・ロマン氏は苦笑い。

現在、使われているデバイス(機種)は1万種以上あるそうで、それらの一つひとつにプログラムを対応させることが必要だというのです。
それは、想像を絶するような細かな作業だったといいます。
そして、今も、新しい機種が出るたびに、このきめ細かな改変対応が続いています。

画期的な開発の陰には、このような涙ぐましい繊細な作業があるのですね。
水面を滑る水鳥の足……そんなことを思い起こすお話でした。

「QR Translator」で発行したQRコードを読み取ることで
印刷物などの情報を多言語対応で読み上げ

「QR Translator」とは、QRコードを活用した多言語対応ソリューション。
エクスポート・ジャパンの関連会社である株式会社PIJINが開発しました。
「VIPコードリーダー」の経緯のくだりで紹介したソリューションがこれにあたります。
2014年の公開以来、大阪城・大阪城公園、伏見稲荷大社、奈良市、泉佐野市、南海電鉄など、関西の行政、公共機関、企業をはじめ、日本全国はもちろん、フランスのサクレ・クール寺院など、世界レベルで「QR Translator」で発行したQRコードが、看板や印刷物に採用され、情報提供をしています。
※詳細はこちらをどうぞ。

「QR Translator」で発行されるQRコード
*クリックすると大きな画像が開きます。

その特長は……

〇読み取った人のスマートフォンに合わせて、それぞれの言語で文章を表示し、読み上げる事ができる。

〇QRコードを変更することなく、間違いを直したり緊急の情報などを表示させることができる。
〇テキスト入力から翻訳、コードの生成までワンストップで作業できる。

というものです。

早い話が、「QR Translator」で発行したQRコードを、「VIPコードリーダー」で読み込めば、そのまま多言語対応の音声情報が得られるということなのです。

現在、多くの自治体や公共機関、企業が、「QR Translator」を使ったコンテンツ作成とQRコード発行に取り組みはじめています。
それは、企業紹介やイベント案内などの印刷物に「QR Translator」を対応させて、音声情報を提供するといった活動です。
このような取り組みが浸透していくことで、視覚に障がいのある人たちはもちろん、小さな文字が見えにくくなったご高齢の方や、日本語がよく分からない外国の人たちにも、確実に情報を届けることができる、ユニバーサルな環境が整備されていくのでしょうね。

テクノロジーには溺れない
ほんとうに必要なものを、使う人の発想でつくる

下の冊子をご覧ください。
右下がカットされているのが分かりますね。

右下がカットされた冊子
*クリックすると大きな画像が開きます。

これは、QRコードの位置を認識するための目印です。
いわゆる技術者という人たちは、時として自らの技術に溺れて、足りないところを技術で補おうとしてしまいがちです。
そういった発想からは、この冊子のような「部分カットをする」といったアナログな解決法は浮かばないでしょう。
高岡氏は言います。
「私たちは、使う人の発想に基づいて、使う人が本当に必要なものをつくるべきです。決してテクノロジーに溺れてはいけません」と。
使う人に寄り添って、つくる。
そんな理念が礎にあるからこそ、本当に心地よく使えるものが生みだせるのです。

夢は、このプラットフォームがデファクト・スタンダード(※7)として
世界に受け入れられること

たとえば、日本語しか知らない人が外国に行くと、ある意味において “言語に障がいのある人”になります。
同様に、日本語の分からない外国人の人たちは、日本に来ると”言語に障がいのある人“となります。
このように、障がいというものは、環境がつくり出しているともいえるのです。

逆にいうならば、環境を整えれば、障がいは少なくすることができる、といってもいいのではないでしょうか。

※7:デファクト・スタンダード…公的機関などにより標準として認定されてはいないが、使いやすさなどの理由から、市場で評価され、標準となっていること。

「VIPコードリーダー」と「QR Translator」の未来について語る高岡氏
*クリックすると大きな画像が開きます。

高岡氏は言います。
「VIPコードリーダーとQR Translatorというプラットフォームを、全世界的に普及させたい。デファクト・スタンダードとして定着させたい。
そのためにも、VIPコードリーダーは、これからも無償で提供し続ける。
QR Translatorについては、より多くの採用を募っていきます」

様々な製品情報に「QR Translator」を導入、展開していく……。
これからは、そのことに注力していくそうです。
たとえば、食品や医療品の世界についていえば、成分(アレルギー表記などを含む)や用法、消費期限などは、使う人にとって、とても重要な情報です。
これを読み上げることで、情報伝達はより拡大できます。
皆が安心して食品や医療品を使うことができるのです。
今は、実証実験段階ですが、近いうちに市場に公開される予定だそうです。

障がいのあるなし、言語の問題に関わらず、すべての人に情報が届く……。
そういったバリアフリーな、かつユニバーサルな環境が整えば、少なくとも「情報格差」という障がいはなくなっていくのではないでしょうか。
近年は、電子決済で脚光を浴びているQRコードですが、使う人の発想で展開していけば、必ずや「豊かな社会」づくりの、頼れる基幹技術として大活躍してくれるのでは、と思います。

高岡氏とロマン氏のお話を伺う中で、来るべき輝く未来への期待が大きくふくらみました。

編集後記

高岡氏は、元フライ級のボクサーだったそうです。
お話を伺っていて、シャープな眼差しに、経歴を実感しました。
揺らぎない志のもとに活動されているんだな、と。
エクスポート・ジャパン株式会社は、立ち上げのころ、日本国内の製品を英語で海外に紹介するサイトを運営していたそうです。
「あのアリババより先に越境ECに取り組んでいたんですよ。先見の明だけはあったんですかね。すっかり差がついてしまいましたが……」と話す、高岡氏の笑顔がとても印象に残りました。
信念にブレることなく事業を推進していく。
言葉で書けば簡単です。
しかし、それを実際に継続していくことは並大抵の努力では足りません。
それを続けてこられたのは、ボクサーとして戦ってきた高岡氏の経験が生かされているからなのかもしれません。
デファクト・スタンダード獲得の試合のゴングはもうすでに鳴っています。
この試合の最終ゴングが鳴るまで、果敢なファイトを見せてください。
勝利を期待しています。

◆VIPコードリーダー

VIPコードリーダー

下記より無償でダウンロードできます。

Google Play:
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.pvip&hl=ja
App Store:
https://apps.apple.com/jp/app/vip-%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC-%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89-%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85/id1273427754

詳しくは…
https://www.export-japan.co.jp/solution/qr4vip/

◆QR Translator
詳しくは…
https://4vip.qrtranslator.com/jp

お問い合わせは…

◆エクスポート・ジャパン株式会社

大阪本社
〒541-0046
大阪府大阪市中央区平野町2-1-14 KDX北浜ビル 10F
TEL: 06-6208-0161
FAX: 06-6208-0163

東京支社
〒103-0022
東京都中央区日本橋室町1-6-3 山本ビル別館3F
TEL: 03-6214-5881
FAX: 03-6214-5883

URL:https://www.export-japan.co.jp/

その他の新着記事

【ICTレポート】第36回 SoundUDクラウド SoundUD推進コンソーシアム 言語、聴力の不安のない社会実現に向け官民を挙げて「音のユニバーサルデザイン化」を推進する
【ICTレポート】第35回 ソーシャルスキルトレーニングVR「emouエモウ」 株式会社ジョリーグッド VRでSST(ソーシャルスキルトレーニング)。何度でも失敗できる、やり直せる。安心感の中でソーシャルスキルを学ぶ。
印刷用ページを表示する

バックナンバー

*クリックまたは、エンターキーによりメニューが表示されます