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ぜひ読んでください!おすすめ書籍-“文字が読めない”という壁の向こうへ―ディスレクシアを扱ったコミック2編―

ぜひ読んでください!おすすめ書籍-“文字が読めない”という壁の向こうへ―ディスレクシアを扱ったコミック2編―

学生の方は夏休みに入り、社会人の方も休暇を取る人が増えるこの季節。今の時代、コミックも読書だ!と考えるドリームアーク編集部がお薦めする、時間のあるときにこそじっくり読んでほしいコミック2編をご紹介します。

「ディスレクシア(発達性読み書き障がい)」に関して、ドリームアークでは過去に何度か記事内で取り上げてきました。近年では、「OTON GLASS」(※)のような、読みづらさをサポートしてくれるICT機器も開発され、注目を集めていますが、人によってはADHDや自閉症スペクトラム障がいなどと併存するなど、発現の仕方も様々で、社会的な認知もまだ十分とはいえません。
今回紹介する2編は、ディスレクシアの男の子を主人公に、文字が読めない・書けないことで、否応なしにぶつかる社会の壁、でもその先に続く人生をあきらめることはないと、希望をくれる作品です。ご興味お持ちいただけましたら、この機会にぜひお読みください。

※:関連記事「【ICTレポート】第31回 OTON GLASS 株式会社オトングラス 代表取締役 島影 圭佑」
http://www.dreamarc.jp/archives/5130/

★『ぼくの素晴らしい人生』愛本みずほ
(講談社BE LOVE KC 全5巻 各429円+税 ※電子書籍あり)

「これから先の人生 障害のせいにして
何かをあきらめるようなことは 絶対しないって」

 
第1巻書影。文字をあしらったカバーデザインも印象的

生まれつき文字の読み書きが苦手な青年・忍(しのぶ)。高校も卒業できず、バイトを転々としていたある日、偶然入った喫茶店のマスター・遥(はるか)に、ディスレクシアという障がいがあるのではと教えられ……。
同じ障がいのあるマスターとの出会いを機に、忍が自分の障がいと向き合い、あきらめかけた人生を掴もうと歩んでいく姿を描いていく本作は、ディスレクシアの忍の目に文字がどう映るのかということや、読めないものはスマートフォンで撮影し拡大して読む、読んでいるところが分からなくならないよう、文字列に定規をあてるといった日常での対処、福祉サポートでできる事とできない事、資格取得へ向けた勉強の仕方などを丁寧に描写。遥が言うところの「持って生まれたカードで勝負するしかない」忍の現実と、それを認識しながら探し当てていく“できること”を、説得力を持って提示してくれます。 
軽度の知的障がいがある女性がシングルマザーとして生きていく姿を描き、ドラマ化でも話題となった『だいすき!!~ゆずの子育て日記~』の作者らしい、地に足のついた穏やかな語り口に、自分のカードを見据え、徐々に選択肢を増やしながら一歩一歩進む忍を、いつしか応援したくなる作品です。

公式サイト:https://be-love.jp/c/bokusuba.html

★『ファンタジウム』杉本亜未
(ナンバーナイン 全9巻 各600円+税 ※電子書籍のみ)

「人にバカにされるのは いつものことだけど
そんな奴らに 俺が変えられないことを証明してみせる」

 
第1巻書影 (C)杉本亜未/ナンバーナイン

いち早くディスレクシアを取り上げた作品として、過去にもこのコーナーで紹介した『ファンタジウム』が、雑誌掲載時のカラーページを完全再現したパーフェクトエディションで、電子書籍全9巻が配信されています。

 
第4巻より。今回の版は再現されたカラーページの美しさも見どころ
(C)杉本亜未/ナンバーナイン
*クリックすると大きな画像が開きます。

ディスレクシアのため、家でも学校でもあらぬ誤解を受け、居場所のない主人公の少年・長見良(ながみ・りょう)。しかし彼には天才的なマジックの才能があった。彼の師匠である伝説のマジシャンの孫・北條(ほうじょう)は良の才能を見抜き、2人は“相棒”として、二人三脚でプロのマジシャンの世界へ歩きだしていく――。
というのが主なストーリーですが、良と北條の歩みを通して、それだけにとどまらない、様々な奥行きのあるエピソードが繰り広げられていくのが本作の魅力。
文字の読み書きができないために、世間の“当たり前”が壁として立ちふさがる、という経験を何度も重ねる良。普通とされることが困難なこと、“言葉”で自分の心をあらわせないことの絶対的な孤独を自覚して、自分なりの筋を通しながら「デタラメな浮き世」と戦い続ける彼の姿は、障がいのあるなしに関係なく“自立とは何か?”を考えさせられます。
それだけに、良が愛し、披露するマジックの劇的な美しさは、どの場面も鳥肌もの。現実の閉塞に一瞬でも風穴を空け、こんな感動を得られるなら明日からも生きていこう、と思わせられる、エンターテインメントの持つ力が存分に表現されています。

『ファンタジウム』の内容をより知りたい方はこちらの動画を!
マジック描写は美しさに加え、解説など豆知識が得られるのも楽しい
(C)杉本亜未/ナンバーナイン

たとえ言葉というカードを自由に操れなくとも、何かひとつ心に決めた大切なものがあれば、人生は歩んでいける――世界を広げる出会いも、その先にあるかもしれない。少年マジシャンの歩む道を、決して綺麗ごとではなく描きつつ、そんな希望をくれる骨太の、読み応えある物語です。

配信先URL:https://amzn.to/32U2PbL
※上記ほかBOOK☆WALKER、ebookjapanなど多くの電子書籍ストアで購入可能です。

いかがでしょうか。いずれも、読み終えられるころには、ディスレクシアへの理解が深まるのみならず、何か大事なものが心に残るのでは、と思います。ぜひご一読を!

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