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【インタビュー・レポート】一般社団法人 ラバルカグループ代表理事/久遠チョコレート代表 夏目 浩次 氏 

チョコレートを通じて、誰もが自己実現できる
社会をつくりたい

愛知県豊橋市内にあるファクトリーで、夏目氏からお話をお伺いしました
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こんにちは。ドリームアーク編集部です。
障がいのある人たちが、地域で自立した生活が送れるようにと厚生労働省は『「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針』を策定し、2012年度に発表しています。そして、以降、3年ごとに「工賃向上計画」が策定され、都道府県および各事業所において工賃向上に向けた取り組みが進められてきました。さらに、2018年には指針が一部改訂され、実効性を高めようとの努力がなされています。(※1)
しかし、実際には計画の実現には、たくさんのハードルがあり、苦戦の様相を見せているのも確かです。大阪府の発表によると、2017年度の就労継続支援B型事業所の平均工賃は、11,575円。時間給に換算すると、わずか169円です。(※2)

そんな中、チョコレートという食材を使って、「工賃10倍増計画」をミッションにして活動している人物がいます。それが、今回、登場していただく一般社団法人ラバルカグループ代表理事で、久遠チョコレート代表の夏目浩次氏。ラバルカグループが展開するオリジナルブランド「久遠チョコレート」のユニークな取り組みについて、そこに込められた想いや将来の展望などをじっくりとお伺いしました。

※1:「工賃向上計画」を推進するための基本的な指針 (厚生労働省)
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/1200/00000000/sisin.pdf
※2:平成29年度 大阪府の工賃(賃金)の実績について
http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/jyusan/kouchinjisseki.html

2014年から、自社ブランド「久遠チョコレート」を立ち上げ、
現在、20店舗・33拠点で事業を展開中

豊橋本店店頭に掲げられた久遠チョコレートのブランドプレート
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北は北海道、南は鹿児島県まで、直営とブランチ(FC店舗)を含めて20店舗、製造だけの工場を含めると全国で33の拠点を持つ「久遠チョコレート」。2014年のスタートから、わずか5年でこの規模まで成長した優良ブランドです。
総従業員数330名のうち80%にあたる270名が、何らかの障がいのある人たち。「うちの平均工賃は、現在、約6万円です」と、夏目さん。多くの事業所が低工賃に甘んじている中、驚異的な金額を達成しています。これから、夏目さんに、この成長の理由をじっくりとお伺いしたいと思います。

久遠チョコレート 豊橋本店
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福祉のブランドをつくるのではなく、
チョコレートのトップブランドをめざす

「特に“どんな人がつくっているか”というアピールはしていません。かといって隠してもいません。とにかく“いいものをつくろう”というポリシーでつくっています。コンセプトは、“チョコレートをデイリーに、カジュアルに楽しんでいただく”です。日々の暮らしの中で、昨日とは違うチョコレートの様々な味わいを楽しんでもらえたら……と考えています。そういう意味では、福祉ブランドをつくるというよりは、チョコレートのトップブランドをつくるという感覚で続けているんです」と夏目さん。
久遠チョコレートのメイン商品であるテリーヌは、一枚約200円。決して安いものではありません。多くの作業所が、クッキー詰め合わせを100円均一で売っている中、この価格で売れるというのは、やはり商品に質の高さがあるからなのでしょう。トップブランドをめざすという目的があるからこそ、このクオリティーが維持できるのだと思います。理念の高さが、そのまま商品の質の高さにつながっているのですね。

主力商品のQUONテリーヌがズラリと並べられた豊橋本店のセンターテーブル
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人に寄り添ってくれる食材、チョコレートとの出会い
この出会いがあったからこそ、未来が見えた

以前は、パンづくりを通して活動していた夏目さん。「パンは50種類を提供していたのですが、これを毎日続けるとなると50通りのオペレーションを日々こなさなくてはなりません。この流れについて来られない人は排除されてしまうんですね。商品が人を選んでいるのです。一方、チョコレートの場合、素材を溶かして固めるというひとつのオペレーションでできます。失敗すれば、また溶かして一からやり直せばいい。パンのように失敗することでロスを生じることがないのです。さらに、混ぜるものを変えるだけで、多彩な商品をつくることができる。“チョコレートこそ、人に寄り添ってくれる食材”だとよく分かったんです。チョコレートとの出会いがあったからこそ、ぼくが思い描いていた“働き方”の未来が見えてきたんです」
チョコレートという食材と出会ったおかげで、製造作業は、“人にやさしい”ものとなりました。たとえば、豊橋市内にある製造センターでは、入って2年目の発達障がいと知的障がいがある製造スタッフが、メイン商材であるテリーヌの製造を担っているのですが、1日(もちろん定時内です)に1,000枚も仕上げているそうです。このような高効率の製造を可能にしているのが、何よりシンプルなチョコレートの製造工程なのです。“溶かす・混ぜる・固める”という簡単な製造工程が、多様な人に労働機会を開放しているといえます。

厨房の風景。QUONテリーヌを筆頭に、様々なチョコレートがつくられている
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チョコレートのポテンシャルを活かして、
選べる楽しさ、地域を再発見する楽しさも

久遠チョコレートは、最初、6種類のテリーヌからスタートしたそうです。「商品カテゴリーの開発は積極的にはしていないんですよ。いまでも5カテゴリーくらいです。ただ、6種類だったテリーヌは、今は140種類以上になっています。カテゴリーは絞っていますが、アイテム数は増やすように努力しています」
ここにも、チョコレートの特性が活かされています。「溶かす・固める・混ぜるというシンプルな工程の“混ぜる”というところを多様化するだけで、次々と新しい製品をつくることができるのです。同じつくり方でできるので、つくり手に負担をかけずに新製品をどんどん出すことができます。このように、つくり手にとってもお客様にとってもいいものとなるのがチョコレートなんです」
世界にチョコレートは数千種類あるといいます。「カカオには3種類あって、国が変われば味が変わります。さらに、同じ国でも産地によって異なるのです。この多様なカカオを混ぜ合わせることで、無限に異なる味がつくれるのです。まさに、選べる楽しさを提供できる食材なのです」
さらに、夏目氏は、地方創生も視野に入れて活動しています。地域ごとの魅力的な食材をチョコレートにミックスしてテリーヌの新製品を続々と生み出しているのです。「たとえば、新潟県には“村上茶”という名物があります。鹿児島県には“知覧茶(ちらんちゃ)”、そして京都には言わずと知れた“宇治茶”が。僕の地元である愛知にも、“額田茶(ぬかたちゃ)”があります。これら地域の名産物を練り込んで新しいテリーヌを開発しています。“ディスカバリー・ジャパン”というコンセプトで、この事業を進めているんですよ。チョコレートは、地域を再発見する楽しさも提供してくれる食材なのです」

店内には他にタブレットなど豊富な種類の商品が並ぶ
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障がいのある人に限らず、
多様な人たちの“働き”を支えたい

久遠チョコレートの直営店のスタッフは直接雇用になっています。ブランチの多くは、就労継続支援B型事業所だそうです。「例をあげると、熊本ブランチには、13名のスタッフがいますが、その中には不登校や引きこもりの学生さんのアルバイトがいます。また、名古屋ブランチは、2階スペースにデイケアサービスの施設を設けています。これは、医療的なケアが必要な子どもさんを持っているお母さんが安心して働けるように、という思いから生まれたものです」
夏目氏は、障がいのある人に限らず、いわゆる社会的弱者と呼ばれる人たちにも想いを寄せているのです。「人が、そのときの立場や特性で、生活や生き方が制限される社会はナンセンスだと思います。どんな特性があったとしても、常に自己実現することができて、“こんな生き方がしたい”とか“こんな暮らしがしたい”という選択肢が多様にあるのが、センスある社会だと考えています」
久遠チョコレートのスタッフの中には、交通事故で1年間昏睡状態に陥って、その後、突然2週間ほど朝に起きることができなくなるという後遺症を持っている人がいるそうです。「こういった人は、まず、一般企業で雇ってもらうことは難しいでしょう。うちは、そんな人にも門戸を開けたい。今の社会は、まだまだ“凹凸が排除されることで均一化される”傾向にあります。それを“凹凸を受け入れて成長していく社会”にできたらいいな、と思っています。それには、チョコレートが重要な役割を果たしてくれるのではないか、と期待しているんですよ」

チョコレートを通じて多様な人たちの“働き”を支えたい、と語る夏目氏
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これまでの努力と成果が認められて
第2回「ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞」を受賞

久遠チョコレートは、2018年12月21日、第2回「ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞」を受賞しました。「ジャパンSDGsアワード」とは、平成27年に国連で採択されたSDGs(※3)の達成に向けて、優れた取り組みを行う企業・団体等を表彰する制度です。(※4)「この受賞は、ソーシャル・イノベーションやフェアトレードを通じたSDGs(持続可能な開発目標)の推進と持続可能な地域社会の実現にむけて連携させていただいた株式会社ベルシステム24ホールディングスさんのおかげでもあります。豊橋市にある製造センターも株式会社ベルシステム24ホールディングスさんと一緒に運営しているんですよ。とにかく、この受賞は、皆の活動が認められたということで、たいへん嬉しく思っています」

※3:SDGsの詳細(外務省)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html
※4:第2回「ジャパンSDGsアワード内閣官房長官賞」の詳細
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/award2_4_la_barca.pdf

第2回「ジャパンSDGsアワード」のトロフィーと表彰状
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チョコレートは、ワインと同じ
文化に育てて、センスある社会をつくりたい

赤道の南北20度のエリアなら、どこでも栽培することができるというカカオ。「カカオからつくられるチョコレートは、ワインと同じなんです。土壌や気候で味が変わる。そして、年ごとでも味が変化します。この味の変化を楽しめるようになるには、やはり、チョコレート文化のようなものを育てていかなければならないと考えています。カカオの産地は、元々、植民地だったところが多く、どうしても生産効率ばかりが重視されたり、中にはまだ児童労働が行われているところもあるようです。それらを払拭して、“ひと手間かける”生産に移行することが必要だと思います。そういった意味でも、いつかハワイなどで、自家農園をしてみたいという夢を持っています」
夏目氏のチョコレートと人への愛情が、近い将来、どんな特性のある人たちでも自己実現できるセンスある社会を築いてくれるでしょう。

編集後記

久遠チョコレートの活動は、製造だけに留まりません。直営店でのコンセプトに基づいた販売はもちろん、全国各地の百貨店などの商業施設でのユニークな販売にも力を入れています。たとえば、新潟では、雪国に伝わる保存方法で熟成させた地元のコーヒーと、新潟の名産品を使ったテリーヌでギフトボックスをつくったり、長崎では「西洋浪漫ボックス」と銘打って、出島に日本初上陸を果たしたコーヒーを使ったテリーヌを提供したり、関西でも大阪の梅田や京都の百貨店でのバレンタインフェアに参加しています。
チョコレートに惚れ込んでいる夏目氏。その想いは、スタッフにもしっかりと浸透しているようです。訪問させていただいた製造センターでは、スタッフのみなさんが、テキパキと仕事をされていました。こんな愛情が注がれたチョコレートが、おいしくないわけありませんよね。皆さんも、ぜひ、味わってみてください。

-「久遠チョコレート」についてのお問い合わせ先-

ラバルカ

一般社団法人 ラバルカグループ
所在地:〒440-0897 愛知県豊橋市松葉町1-4
TEL/FAX:0532-53-5577
E-mail:info@labarca.or.jp
URL:http://labarca-group.jp/

夏目氏のブログ

夏目氏のブログ
http://blog.livedoor.jp/labarca3120/

~関西で久遠チョコレートを買いたい方へ~

久遠チョコレートのブランチ第1号「NEW STANDARD CHOCOLATE kyoto by 久遠」も取材させていただきました。
記事は下記URLに掲載しております。ぜひご覧ください。
http://www.dreamarc.jp/archives/5357/

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