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【ICTレポート】第33回 オーティコン補聴器 「Oticon Opn(オーティコン オープン)」

ピープル・ファーストを企業理念に、先進テクノロジーと優れたクラフトマンシップで難聴者に360°広がる音の世界を届ける。

オーティコン補聴器「Oticon Opn」のラインナップ
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こんにちは。ドリームアーク編集部です。
日本には、いったいどれくらい難聴に悩まれている人がいらっしゃるのでしょうか。一般社団法人日本補聴器工業会の調査によると総数は約1400万人と推計されています(※1)。これは、日本の全人口の約11%にあたります。また、統計結果を見ると(下グラフ参照)、特に65歳以上で
難聴者数が増えていることが分かります。どうやら高齢化と難聴には、深い関わりがあるようですね。

難聴者率(難聴またはおそらく難聴だと思っている人の割合)
一般社団法人 日本補聴器工業会「Japan Trak 2018調査報告」より
http://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2018_report.pdf
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※1…一般社団法人 日本補聴器工業会 ホームページ「国内の現状と取り組み」の「難聴者率(自己申告)と補聴器使用率と補聴器使用率」より
http://www.hochouki.com/about/report/program.html

このような状況の下、補聴器を実際に使われている難聴者の方々の割合(補聴器使用率)はというと、日本の場合、13.5%。これは、人口換算すると約200万人となります。一方、海外に目を向けると、イギリス42.4%、ドイツ34.9%、フランス34.1%、アメリカ30.2%と、日本よりはるかに高い使用率になっています(※1)。高齢化先進国の我が国は、“補聴器後進国” となっているのです。

なぜ、補聴器の使用が進まないのでしょう。その理由はいくつかあるようですが、多くの人が補聴器購入のための公的補助制度があることを知らない、つけるのがわずらわしい、つけたところで元の聞こえは戻らない、それほど難聴がひどくない……などが上げられています。特に、わずらわしさに関してはきつい、大きすぎるなどの声が寄せられているようです(※2)

このような状況の中、ひとりでも多くの難聴者をサポートしたい、と活動されている補聴器メーカーがあります。それが、オーティコン補聴器。1904年の創設以来、110余年の長きにわたり、「ピープル・ファースト」を企業理念に、先進の補聴器を研究・開発しているデンマーク生まれの会社です。今回のレポートでは、オーティコン補聴器を訪問して、“360°の広がりのある音”を届ける先進補聴器「Oticon Opn(以下、オーティコン オープン)」について伺いました。聞こえに悩む人々を第一に考えて生まれた補聴器の話をお楽しみください。

※2…一般社団法人 日本補聴器工業会「Japan Trak 2018調査報告」内「4. 補聴器非所有難聴者に関する分析」より
http://www.hochouki.com/files/JAPAN_Trak_2018_report.pdf

騒がしい環境でも複数の会話を耳に届ける
先進のテクノロジーが生み出す新たな聞こえの世界

まずは、オーティコン オープンのコンセプトを伝える動画をご覧ください。

このオーティコン オープンの概要を、オーティコン補聴器プロダクト・マーケティング部 部長の渋谷桂子さんから、下記のようにお伺いしました。

◎「オープンサウンドナビゲーター」という新たな技術を導入

これまでの補聴器は、主に正面からのひとりの声を聞き取りやすくする「指向性」という機能が用いられてきましたが、この技術には限界がありました。このやり方は正面の声には集中できるのですが、横や後ろからの音は拾いにくいという問題があります。この課題克服にチャレンジしたのが「オーティコン オープン」なのです。
その特長は、「360°あらゆる方向から届く音を聞くことができる」「それぞれの音源を聞き取りやすいバランスにする」「届いた音をノイズに邪魔されることなく聞くことができる」ということ。その結果、「にぎやかな聞こえの環境下でも、会話の聞き取りが向上する」「補聴器ユーザーの脳の疲れを軽減する」「会話の覚えやすさが向上する」ことが可能になっています。
「たとえば、パーティーでの会話を思い浮かべてみてください。騒がしい中、横や後ろから声がかかったり、少し離れたところで興味深い会話が交わされていたり……。健聴者でも、なかなか聞き取りにくいですよね。難聴者の方ならなおさらです。でも、オーティコン オープンならストレスなく360°の音の情景を楽しんでいただけます」と渋谷さん。
このように画期的な聞こえの広がりを実現できたのは、「オープンサウンドナビゲーター」という機能を搭載したから。これは、“すべての方向からくるはっきりした声は届けつつ、邪魔になる騒音は抑制する”というもの。具体的には、

①ノイズを特定するために周囲360°の音環境をスキャンし、音声とノイズを区別する、毎秒100回以上の「分析」
②音声はしっかりと耳に届けつつ、大きな騒音は抑えて、聞き取りを妨げない音量で届けるなど、周囲の環境音を調整する「バランス」
③拡散したノイズや言葉と言葉の間にあるノイズまでも高速処理で効果的に抑制する「ノイズの除去」

という3つの働きを持っています。これらを瞬時に処理し、同時に連携させることで、オーティコン オープンの優れたパフォーマンスが生み出されているのです。

「オープンサウンドナビゲーター」について説明される渋谷さん
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◎ないものは自らつくる。革新的な「ベロックス」プラットフォーム

オーティコン オープンの優れたパフォーマンスを実現できたのは、オープンに搭載されたチップの処理能力によるところが大きいと渋谷さんは語ります。「ないものは自分でつくる、ということでチップも自社で研究開発しています」
この研究開発で誕生したのが、「Velox(べロックス)」。ちょっと難しい話になりますが、このチップは、ハイスピード・ネットワーク・オン・チップといわれ、11のコアで構成された、画期的な3次元積層チップです。オーティコンの従来のチップに比べて約50倍の処理能力を持ち、音環境を毎秒100回以上分析して、1秒間に5億回の動作命令を処理することができます。
「このチップの開発には、8年もの歳月がかけられているんですよ」と渋谷さん。
この開発の背景にあるのが、「エリクスホルム研究センター」の存在。これは、オーティコンが1977年に設立した、聴覚ケア業界では唯一独自の専門研究機関で、オーディオロジー(※3) 、認知聴覚学、音響心理学、物理学、コンピューターサイエンスなど、世界各国の幅広い分野の研究者や専門家と連携して研究を重ねています。さらに、これらの研究に基づく技術を製品に搭載する際には、難聴者や補聴器ユーザーの声を反映させるなど、エリクスホルムによる研究はオーティコンの補聴器づくりに大きく貢献しているのです。

※3 オーディオロジー…音を人体が受容する過程についての学問。聴覚学とも。

オーティコン オープンの心臓部、べロックスの働き
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◎オーティコン オープンの基本にあるのは、「脳」から聞こえを考えるBrainHearing™(ブレインヒアリング)

音を聞くということは脳の働きによるもの。その考えに基づいて、オーティコン補聴器は、20年以上にわたって「脳」を第一優先に考えて補聴器の開発に取り組んできたそうです。
その開発コンセプトを表現したものが「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」。「脳」から聞こえを考え、耳を通して届いた音の意味を「脳」がよりよく理解できるように難聴者を助けることをめざしています。
「脳」が音の意味を理解するためには、下の図の4つのプロセスを支えることが重要となります。

脳が音を理解するために重要な4つのプロセス
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「脳」ができるだけ負担なく音を理解するために、上の4つのプロセスをより楽に行えるよう助ける技術が、「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」なのです。具体的には、

〈捉える〉
音の細かな空間情報が脳に届くことで、音環境(音の方向や距離など)を自然に捉えやすくします。
〈聞き分ける〉
様々な音の要素のコントラストを強調し、不要な騒音の中から聞きたい音を聞き分けやすくします。
〈集中する〉 
複雑な環境であっても、あらゆる音が耳に届いていると、その中から脳が特定の音を選びとって集中しやすくなり、興味のある音や聞きたい声に瞬時に注意を切り替えることができます。
〈理解する〉
バランスが整えられた音は、それぞれの違いが分かりやすく、また理解しやすくなります。楽に音を理解できると脳に余裕が生まれ、会話を記憶したり、覚えたりすることにその力を使うことができます。

この「BrainHearing™(ブレインヒアリング)」を新たなレベルにひきあげるべく、オーティコン オープンは誕生したのです。

◎世界初、オーティコン オープンはインターネットとつながる補聴器

たとえば、テレビやラジオ、ゲーム機器とつなぐ、クルマとつなぐ、eメールを受信したらお知らせが届くなどスマートフォンとつなぐ、自宅のセキュリティシステムのオン・オフ時に通知を受ける……といったことができる、世界初のインターネット接続可能な補聴器です。
スマートフォンとつながることで、YouTubeやSpotifyなどのストリーミングサービスが手軽に楽しめるようになったり、自宅の電気製品の制御なども行えます。また、数あるWebサービスを連結させて相互に情報のやり取りを可能にするサービス「IFTTT(イフト)」にも対応。これまでに出会ったことのない便利さや楽しみや感動を届けることで、補聴器の可能性を広げる、IoT(※4)時代の補聴器といえるでしょう。

※4 IoT…“Internet of Things”の略。「モノのインターネット」とも呼ばれる。コンピューター関連以外の多種多様な「モノ」がインターネットに接続され、相互に情報をやりとりすること。

様々なデバイスやシステムとの接続を可能に

ここまで、オーティコン オープンの新しさについて伺ってきましたが、続いては、オーティコン補聴器が考える「HearingFitness(以下、ヒアリングフィットネス)」について、プロダクト・マーケティング部 プロダクトマネジメント・スペシャリストの箕輪匡洋さんにお伺いしました。

◎ユーザーの聞こえの健康をサポート、「ヒアリングフィットネステクノロジー」

今、医療の世界では大きな変化が起こっています。それは、ビッグデータ(※5)を活用した予防システムの構築です。これまでの治療中心の医療システムから、発症予防に取り組むシステムへの変換が進められているのです。こうした潮流の中で、オーティコン補聴器は、「ヒアリングフィットネス」という概念を導入しています。これは、聞こえと健康の問題をリンクさせて解決していこうという考え。聞こえを維持することは健康維持につながるということです。これは、

Personalised:個別化(ユーザーごとにカスタマイズされたヘルスケア)
Participatory:ユーザー参加型(ユーザー自身が主体的に関与)
Predictive:予測(大勢のデータ情報から得られた個人に関する予見)
Prevention:予防(転ばぬ先の杖)

という4つのPから導かれています。これを基にした「ヒアリングフィットネステクノロジー」が、「オーティコンONアプリ」の新コンテンツとして提供されます(2018年12月現在※5)。
「ヒアリングフィットネステクノロジー」は、トレーニング・フィットネスアプリのように、日常生活における補聴器の装用に関する情報を収集し、補聴器ユーザーが自身の聞こえを最適化するために役立つ、様々なヒントを提供するというもの。自分自身の聞こえの健康について、客観的な確認が可能になることで、ユーザーの聞こえの健康に対する意識を高めることができます。

※5…オーティコンONアプリは、App StoreまたはGoogle Playからダウンロードできます。

オーティコンONアプリのスマートフォン画面での表示例(2018年10月時点)。補聴器の装用時間と補聴器プログラム使用の割合を確認できる、ヒアリングフィットネスの基本的な画面構成(左)と、ユーザー各自が設定した目標の到達度が表示された際の画面(右)
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「ヒアリングフィットネスは、補聴器ユーザーのモチベーションを高め、装着への動機づけを行うことを目的としています。その中で、聞こえの健康におけるメリットをアピールしていきます。まだまだ、その長い旅路の第一歩を踏み出した段階ですが、聴覚ケア=ヘルスケアになるように努めていきます」と箕輪さんは決意を語ってくださいました。

アプリについて説明される箕輪さん
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一つひとつを丁寧な手作業で
先進の補聴器はクラフトマンシップがつくりだす

最後に、オーティコン オープンの製造現場を、DGSオペレーション本部 製造技術チーム チームリーダーの稲垣貴之さんに案内していただきました。

◎クラフトマンシップが集う環境。モノづくりの原点がここにある

ラボと呼ばれる製造現場は、ワンフロアを仕切りなく使った広大な空間。生産工程ごとにコーナーが設けられています。
「各工程のスタッフがオープンにコミュニケーションできるように仕切りをなくしています。ラボで唯一仕切られているのは、部品を収納している倉庫スペースだけです。あとは開放しています。だから、例えば、設計担当者が組み立て担当者と相談したり、塗装担当が研磨担当者と微調整したり……といった細かなコミュニケーションを図りながら、丁寧な製品づくりをすることができるのです」と稲垣さん。

ラボは、コミュニケーションの密度を高めるオープンスペース
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製造する製品は、仕様などが明確に識別できるように個別のカラーボックスに収納され、各工程を進んでいきます。
「どの製品を製造するか、すぐに分かるように色分けしています。うっかりミスを防ぐ対策です。一つひとつの製品が、一人ひとりの生活を支える大切なもの。ミスが発生しないように細心の注意を払い、最善の対策をしているんです」と稲垣さんはおっしゃいます。

製造する製品を収納・識別するための色分けボックス
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最初に、入口そばにある修理コーナーを見せていただきました。電子顕微鏡が並ぶコーナーは、さながら医療研究所のような雰囲気。補聴器を拡大して小さな部品を手直ししているとのこと。まさに、ラボ。

外科医のように顕微鏡で見ながら緻密な作業をする修理スタッフ
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次は、すぐ奥にある設計コーナーに。大画面に映し出された3DCADの図面は360°回転させて確認することができます。利用される方一人ひとりの耳の穴にジャストフィットするように設計するためには、やはり熟練の技量が必要とのこと。一人前になるまで5年は必要なのだそうです。そして、ベテランになれば、1日20個以上の設計をこなすそうです。
「先進の補聴器づくりは、コンピューターや機械だけでなく、こういったクラフトマンの技量が支えているんですよ」と稲垣さん。

(左)真剣なまなざしで画面と向き合う設計スタッフたち
(右)何度も角度を変えながら仕上がりの状態が確認される
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次が、実際の組み立て過程のコーナーになります。まずは、スピーカー部分の取り付け。小さな部品をハンダづけします。0.1ミリの狂いもゆるされないような職人技が求められる細かな作業です。
続く本体との取り付けも、マイクとスピーカー部分が近すぎるとハウリングを起こしてしまいます。離しすぎると音を効率よく拾うことができません。絶妙な距離で配置することが求められます。これも職人技の見せどころです。

(左)0.1ミリレベルの緻密な精度で進められるハンダづけ
(右)聴診器でハウリングの発生を確かめながら本体を取り付ける
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最終仕上げのコーナーでは、まず、研磨の工程を見せていただきました。みごとなグラインダー操作で製品が磨き上げられていきます。直接肌にふれる補聴器に、表面を滑らかにする研磨は必須の工程。人にやさしい肌触りは、人の手が生み出していることを実感しました。
研磨されたものを塗装する工程は、さながらネイルアーティストでしょうか。補聴器が、肌触りよく、美しく塗り上げられていきます。これで、ひとまず完成となります。

(左)まるで歯科技工士のような精密さで磨き上げられていく補聴器
(右)丁寧に、美しく塗装されていく
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形になった補聴器は、検査コーナーで最終チェックされます。集音状況やハウリングの有無などが厳しく審査され、合格したものだけが完成品として出荷されるのです。

厳しくチェックを行う検査コーナー
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このように、たくさんの人の眼や手を通して、オーティコンの補聴器はつくられています。「脳から聞こえを考える」という斬新な発想、360°の聞こえ、IoT機器としてIFTTTにも対応、アプリで聞こえの健康を管理……など、先進をいく思考とテクノロジーの極みのような補聴器は、実はこうしたクラフトマンシップあふれる人たちの手により完成され、ユーザーの元に届けられるのです。だからこそ、人を幸せにする力を持つことができるのでしょうね。素直に、そう感じました。

編集後記

外資系企業だということで、日本人の耳にフィットしたものがつくれるのだろうか、などと失礼ながら思ったりもしましたが、「日本語には日本語にふさわしい音の調整がある」と考えたオーティコンは、約4年かけて、日本語の聞き心地にこだわった独自の調整理論を考案し、「オーティコン オープン」に採用。研究は九州大学病院と国際医療福祉大学三田病院との共同で、補聴器ユーザーによる検証も重ねているようです。このようなあくなき「聞こえ」の追求が、優れた補聴器を生み出す原動力になっているのです。
また、先進の補聴器をつくっている会社。ということで、もしかしたら、ロボットが次々と製品をつくっているのかな……と想像したりしていましたが、製造過程を見せていただいて、とても人肌を感じられる会社だということを知りました。理念の「ピープル・ファースト」は、使う人のことだけではなく、つくる人たちのことも含めた言葉だったと実感した次第です。こういうふうに人の手を通しているからこそ、使う人が満足できるモノづくりができるのですね。
信頼というのは、きっと、このような地味でたゆまぬ努力と人の人への想いがつくり出すのでしょうね。それを実感させていただいた取材でした。ありがとうございました。

-先進補聴器「オーティコン オープン」についての問い合わせ先-

オーティコン補聴器

オーティコン補聴器
〒212-0013
神奈川県川崎市幸区堀川町580番地
ソリッドスクエア西館16F
TEL.:0120-1133-21(フリーコール)
FAX.:044-543-0616
ホームページ:http://www.oticon.co.jp

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