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【ICTレポート】第23回 株式会社ビッツ「eye棒」商品企画チーム

“社会に役立つモノづくりを!”
ソフトウェア会社が挑む、視覚障がい者サポートツール開発

 
「eye棒」商品企画チームの面々。左から片桐博文さん(執行役員・営業本部長)、大和田幸弘さん(営業本部第2営業部部門長代理)、筒井美里さん(営業本部)、村上達也さん(営業本部第2営業部長)
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2017年3月1日に厚生労働省が発表した2015年分の日本人の平均寿命データ(※1)によると、男性は80.75歳、女性は86.99歳となりました。このように長寿国の日本は、別の見方をすれば、疾病大国でもあります。近年、糖尿病網膜症、緑内障、加齢黄斑変性症などで視覚に障がいのある人の数が増えてきました。今後は、人生の半ばを過ぎてから視覚に障がいが出る人の数がますます増えることが予想されています。
少し古いものになりますが、2007年に日本眼科医会が発表したデータ(※2)によると、2007年での視覚障がい者数は約164万人で、高齢化がさらに進む2030年には、202万人とピークに達すると予測されています。その結果、医療費や家族負担の増加、QOL(※3)の低下などによるコスト増加は、金額に換算すると11兆円に膨らむと試算されています。
そんな状況の下、“社会に役立つモノをつくろう!”をミッションにして、視覚障がいのある人たちを支援する活動をしている皆さんがいます。それが、“視覚障害者支援近接アラーム器「eye棒」”の開発を進めているソフトウェア開発企業・株式会社ビッツです。今回は、スタッフのみなさんに、「eye棒」開発の経緯やこれからの展望などをじっくりお伺いしました。

※1:厚生労働省「第22回生命表(完全生命表)の概況」より 「参考資料2 平均寿命の国際比較」
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/22th/dl/22th_06.pdf
※2:日本眼科医会 報道用資料「視覚障害がもたらす社会損失額、8.8兆円!!」
http://www.gankaikai.or.jp/press/20091115_socialcost.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%9C%BC%E7%A7%91%E5%8C%BB%E4%BC%9A+%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E6%95%B0%27
※3:言葉の豆知識-QOLとADL-
http://www.dreamarc.jp/archives/1314/

「eye棒」とは、超音波距離センサーで視覚に障がいのある人たちの
頭部や上半身にあるリスクを知らせる近接アラーム器

 
「eye棒」(右)と、対応するスマートフォンの画面 (左)
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先ほどから、名前の挙がっている視覚障がい者支援近接アラーム器「eye棒」とは、どんなものなのでしょうか?ここからは、その詳細をご紹介したいと思います。
「eye棒」は、超音波距離センサーを搭載し、視覚に障がいのある人たちが白杖だけでは知覚することができない「高いところにあるリスク」を感知して音や振動で知らせるアラーム器。たとえば、開けられたままの乗用車のテールゲート(後部荷室扉)や駐車中のトラックのミラー、電柱の支線など、高いところにあるモノの存在を知らせることで、頭部や上半身への接触を防ぐことができます。
その仕組みは、ユーザーが胸部や頭部、手などに装着した「eye棒」が、内蔵した超音波距離センサーで高いところにある障害物を検知するとリンクされたスマートフォンに情報を伝え、アラーム音やバイブレーター振動で装着者にリスクを知らせるというもの。その検知範囲は、近距離設定(100cm)と遠距離設定(200cm)の選択が可能で、3段階設けた距離レベル(レベル1~3)に合わせてアラーム音やバイブレーターの振動を変えて知らせます。もし、スマートフォンを持っていない場合でも、eye棒本体がアラーム音を鳴らし、装着者に知らせることもできます。

(左)上方の障害物を感知するとアラームなどで知らせる
(右)検知できる範囲は図の通り
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現在、「eye棒」は、2017年度中の製品化をめざして、着々と開発が進行中。視覚に障がいのある人たちへのヒアリングの実施をはじめ、視覚障がい者のいる学校への試験導入などが予定されています。これらの活動を通じて、得られた意見や要望をフィードバックさせながら、機能の精度を高めて製品化を実現していくそうです。

ここまで読んでいただいて、
「eye棒」の概要はご理解いただけたのではないか、と思います。
ここからは、実際に「eye棒」の開発に携わっておられる
商品企画チームの皆さんに、お話を伺っていきます。

「eye棒」の製品化を心待ちにされている方がいる…
そんな方々の思いに応えるために汗を流す日々

編集部:「eye棒」の開発は、どんなきっかけではじまったのですか?
村上:ビッツは、メーカーさんからの受託で、ソフトウェアを開発するという、いわゆるソフトウェア会社なのですが、 “自社のアイデアで、世の中で役に立つモノをつくろう!”という理念を持っていまして、その一環として2012年ごろに、GPSや距離感知など、私たちが持っているすべてのセンサー技術を搭載した、究極の電子白杖をつくろうという構想が持ち上がりました。
そこで、企画書をつくって、いろんなところにプレゼンテーションして回ったのですが、なかなか受け入れてもらうことができずに苦戦していたんですね。
そんな中、2016年の春に宮城県にある視覚障がい者学校に企画提案をしたのですが、やはりダメ出しをいただいて…。ただ、その学校はとても協力的なところで、校内でいろんなアンケートを実施してくださって、私たちに情報を提供してくださったんです。それらの貴重な情報からわかったことが、“視覚障がいのある方は、上の方にある障害物に頭をぶつけてケガをすることが多い”ということでした。
「じゃあ、白杖だけでは知覚できない高いところにある障害物を感知できるツールをつくろう!」ということで、この開発プロジェクトをスタートさせたんです。

開発のきっかけを語る村上さん
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編集部:2016年からスタートされて、すごいスピードで開発が進んでいますね。
大和田:村上も申していましたが、私たちビッツはソフトウェア会社です。これまで、さまざまなソフトウェアの開発を行ってきたので、たくさんのノウハウの蓄積を持っています。だから、ソフトに関わることは比較的スピーディかつスムーズに進めることができたんですね。ただ、ソフトウェア会社ゆえに、ハードウェアへの対応が難しくて苦労しました。自社でつくることができないので、どうしてもコストが高くなり、開発スピードも鈍化してしまうんですね。そこで、仙台市産業振興事業団様のご協力をいただいて産学連携(※4)で進めたり、市販のものを応用したりして、開発を進めてきました。
また、こういうツールは、コンパクトかつ低コストであることがポイントになります。もっと手軽に持ち歩けるようなコンパクト化を進めたいのですが、どうしてもセンサーのサイズが問題になってくるんですね。一般に市販されているモノだとどうしても大きくなる。かといって大手メーカーのモノは、手に入りにくい。玩具系のモノなら大手メーカーも対応してくれるんですが、福祉系になると、どうしても事故が起こった際の責任問題などで二の足を踏まれてしまうんですね。そういったハードウェアの問題はつきまとうのですが、私たちはソフトウェア会社だからこそできるポジションやノウハウで、この開発を進めていくつもりです。これまでの展示会などでの反応から、とにかく「eye棒」を心待ちにされている方がたくさんいらっしゃるとわかっていますので。

※4:産学連携…産業界と学校(特に高専・大学)がお互いに協力して、新製品などの共同研究や開発、技術教育、学校の持つ特許の使用などについて促進していくこと。

開発の苦労を語る大和田さん
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編集部:この1年程、開発はどのように進んできたのでしょうか?
筒井:まず、2016年11月にパシフィコ横浜で開催された「Embedded Technology 2016」及び「IoT Technology 2016」に第1号器を出展しました。これは、東北大学と協働し、3Dプリンターで製作したものです。i-Macをイメージさせるカラフルなデザインになっています。ただ、サイズとの兼ね合いでバッテリーを内蔵することができず、外付け対応となってしまいました。
さらに、実際にリサーチする中でわかったことですが、デザインはいいのだけれど、首からペンダントのように吊り下げて使用することを想定した結果、ツールの向きや位置を固定するのが難しくて、センサーの機能を十分に発揮させることができないという弱点がわかりました。加えて、3Dプリンターを使ったので、どうしてもコスト高になってしまうという難点もありました。
これらの課題を踏まえて作成したのが、市販の小型で軽量なケースにセンサーを収めた第2号器です。このモデルでは、バッテリーも内蔵することができ、コンパクト化を実現しました。タブレット菓子のようなフォルムで、コンパクトさやカジュアルさを伝えることができるデザインになっています。胸元にバッジのように装着できることが可能な形にしたのですが、服の素材によっては、本体の重みで機器自体がすぐ下を向いてしまうなど、こちらも第1号器と同様にポジションの固定化に難がありました。

(左)カラーバリエーション豊富な第1号器
(右)コンパクトに仕上がった第2号器
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これまでの開発でわかったことは、ペンダントタイプにしろ、バッジタイプにしろ、ポジションを固定することは難しいということでした。コンパクト&軽量を実現しながら、コストも抑え、しかもデザインにもこだわる……。とても難しい課題に立ち向かっているんだな、と思います。でも、当初からの目的である「社会に役立つモノづくり」を実現させるためには、必ず超えなければならないハードルだという決意を持って、開発を進めていきたいと考えています。特にデザインに関しては、ユーザーの多くがとてもこだわりを持っていらっしゃいます。その方々の思いに応えられるようにアイデアを注ぎ込んでいきたいものですね。

開発の経緯を語る筒井さん
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編集部:現在は、どんな開発が進められていますか?
大和田:第1号器と第2号器の開発で得られた課題を基にして、第3号器を作成しています。具体的には、帽子に装着するタイプとフィンガーホルダーを装備させたタイプです。どちらもセンサーの位置固定がこれまでよりも容易になるので、より正確な情報を得ることができます。なにより視覚に障がいのある人たちは、外見に関して「他の人と違うこと」を避けられる傾向をお持ちです。その点、帽子やフィンガーホルダーを装着したタイプならさりげなく使用することができます。2017年7月にグランフロント大阪で開催される「IoT Technology West 2017」には、これら第3号器の改良版を展示したいと、現在、日々汗をかいている状態です。

第3号器。(左)帽子装着と(右)フィンガーホルダー付き
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編集部:「eye棒」の今後の展開について教えてください。
村上:昨今、ウェアラブルデバイスに注目が集まっています。たとえばメガネタイプのツールなどの機器の開発が進んでいますが、私たちもそういった先端を駆けている企業とのコラボレーションなどを図って、「eye棒」をより使い勝手のよいツールに仕上げていきたいものです。
大和田も筒井も申していますが、ソフトウェア会社だからこそつくれる「世の中に役立つモノ」を具現化するために、これからも開発にまい進していきたいものです。決して平坦な道ではありませんが、必ず乗り越えねば、と考えております。高村光太郎ではありませんが「僕の後に道はできる」と信じて歩んでいきます。

「eye棒」……。一度、聞いたら忘れられないインパクトのあるネーミングです。この名前は、スタッフの話し合いから生まれたといいます。「eye棒」が、その名の通り、視覚に障がいのある人たちの「目=eye」となり、「転ばぬ先の杖=棒」となって、いつまでも頼れる「相棒」となるように、開発を進めていただき、製品化を実現していただきたいと思います。

「eye棒」のスペック一覧
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編集後記

村上さんと大和田さんは、この取材のために仙台から足を運んでくださいました。おふたりとも2011年3月11日の東日本大震災の際には、大変な被害に遭われたそうです。そんな経験が、障がいのある人たちへの支援活動の礎になっているのでしょう。とても温かい気持ちのこもった取材になりました。
筒井さんは、元アパレル関係の仕事をされていたとのこと。そのセンスを活かして、「eye棒」に素敵なデザインを施してくださることでしょう。とても個性的で輝いているスタッフに恵まれ、「eye棒」は、必ずや視覚に障がいのある人たちを幸せにするツールになることでしょう。製品化される日を心待ちにしております。

「eye棒」に関するお問い合わせ窓口

株式会社ビッツ 営業本部

〒141-0031
東京都品川区西五反田8-11-13
五反田マークビル

TEL:03-3779-2150
URL:https://www.bits.co.jp/inquiry/

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