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【インタビュー・レポート】『NPO法人Re-Live(リライブ)』

「リモコン農園」という新しいビジネスモデルを構築して、地方創生をめざす。

NPO法人リライブ  
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人口急減・超高齢化という課題を抱え、“2040年には全体の約半数に上る896の自治体が消滅する危機に”という試算が出されるなど、日本の地方で疲弊が進んでいます。そんな中、2014年11月、「まち・ひと・しごと創生法」、いわゆる「地方創生法」が成立し、2015年度から5年間で、地方の人口減少を抑制する取り組みを推し進めることが決まりました。政府は、「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げ、「まち…国民一人一人が夢や希望を持ち、潤いのある豊かな生活を安心して営める地域社会の形成」、「ひと…地域社会を担う個性豊かで多様な人材の確保」、「しごと…地域における魅力ある多様な就業の機会の創出」を目的として活動をはじめています。
このように、地方創生の活動が活発化する中、「『私たちの町は私たちの手で創る』住民一人一人がそんな思いを持てる町」をミッションに掲げて、「リモコン農園」というビジネスモデルを構築し、独自のまちづくりを行っているNPO法人があります。それが、大阪府泉南郡岬町にある「Re-Live(以下「リライブ」)」 。2014年5月に地元の有志によって設立されました。
今回は、創設メンバーで理事長を務める松尾匡(ただし)さんに、活動をはじめたきっかけや理念、将来の展望などをお伺いしました。地方都市の未来の夢がいっぱい詰まったお話をお楽しみください。

 
「Re-Live貸農園」をバックに思いを語る松尾匡理事長
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障がい福祉×ICT×農業、新しいビジネスモデルで
まちの課題を解決していく!

編集部:松尾さんがリライブを設立するきっかけは、何だったのでしょうか?
松尾:僕は、岬町で生まれ育ったのですが、大阪市内の文具関係のメーカーに就職してプロダクトデザイナーとして製品開発を担当していました。製品開発といっても小さな会社だったので、販売促進やマーケティングなど、かなり広範囲で仕事をしていました。もともと独立心が強かったので、2013年に、岬町の実家を改装してオフィスにして独立しました。
それまで、自分のまちに興味もなく、どんな課題があるのかさえ知りませんでした。しかし、地元の商工会の人たちや仲間たちとコミュニケーションを取るうちに、様々な問題があることに危機感を覚えるようになったのです。

 
リライブ設立の経緯を穏やかに語る松尾理事長
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編集部:昨今、話題になっている地方都市の衰退ですか?
松尾:私が生まれ育ち、これからも暮らし続けていく大阪府泉南郡岬町は、和歌山県に接する大阪府最南端に位置し、山と海に囲まれた自然豊かなまちです。かつては、関西電力の火力発電所があり、人口は2万3千人ほどでしたが、発電所が撤退してからは、雇用機会の喪失によって若者がどんどん町外に流出し、1万6千人ほど(※1)に減少。高齢化も進んでいます。その結果、空き家や耕作放棄地、いわゆる休耕田が急増しています。
“このままでは、将来、自分たちのふるさとがなくなってしまう!” という思いが日ごとに強くなっていきました。岬町の将来を地元の仲間たちと話し合う中、「魅力ある仕事をつくり雇用を創出する必要がある」ということに気がつきました。そこで着目したのが、“休耕地の活性化”だったのです。私はICTを活用して休耕地をなんとかできないか、と考えていました。
ある日、縁があって、現在、副理事長をしている北野喬士(たかし)氏と出会いました。障がい者福祉の仕事をしていた彼は、障がい者雇用の機会づくりに休耕地を活用できないかと考えていました。
私たちは初対面で意気投合し、すぐに構想がまとまりました。“休耕地を貸農園にして、障がいのある人たちに世話してもらう。農園の借主は、パソコンのアプリを通して作業を指示する=リモコン農園” 。それは、「障がい者福祉×ICT×農業」という新しいビジネスモデルづくりです。私たちは、すぐにNPO法人リライブを立ち上げました。2014年5月のことです。でも、設立当初、まだアプリができていませんでした(笑)。半年間、全力を注いで、大急ぎでアプリを完成させ、同年10月に「リモコン農園」をスタートさせました。“新しいビジネスモデルで、まちの課題を解決していく”……こうして、私たちの、まちづくりがはじまりました。

※1:岬町年齢別人口(平成28年3月末)
 http://www.town.misaki.osaka.jp/kyotsu/ky_page/ky_page_0005.html

新しいビジネスモデルの「リモコン農園」をコアにして
障がい者の雇用を生み出していく!

編集部:編集部:「リモコン農園」とは、具体的にはどんなシステムなのですか?
松尾:「リモコン農園」とは、パソコンやスマートフォンなどの端末から遠隔操作して野菜を育てるシステム。いつでも、どこにいても野菜づくりが楽しめる、まったく新しい画期的な貸し農園です。
種まきや水やり、除草、害虫駆除などをボタン操作で指示し、発育状況を画面で見ながら野菜づくりができます。ゲーム感覚で楽しめますが、実際の農地では、私たちのスタッフが徹底した有機農法で安心・安全な野菜づくりを行います。また、農業アドバイザー・渕原照己(ふちはら・てるき)氏から的確なアドバイスが文章で送られてくるので、農作業が未経験の方でも安心して栽培できます。実は、渕原氏は理事のひとりで、有機農法を学ぶために高知に行って、5年前に岬町に戻ってきたという人物で、まちへの思いがつないでくれた縁だと感じています。
野菜が実れば、収穫してお届けします。農園の畑は5m1畝を1単位として、月800円で貸し出していますので、年間契約だと8000円、2カ月分お得になっています(笑)。

(左)「リモコン農園」サイトのトップページ
(右)愛用のパソコンを使って「リモコン農園」を解説する松尾さん
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編集部:「リモコン農園」のアイデアは、どんなところから生まれたのでしょうか?
松尾:私が仕事を独立するところまで話が遡りますが、会社員の時代に、プロダクトデザイナーとして新製品開発など大量生産のものづくりに携わっていたことで、使われた後のことまで考えた製品の設計――たとえば廃棄がスムーズにできるよう、分解が容易な設計になっていたり、ひとつの製品として寿命を終えた後には、違う製品として新たに使えるような設計をされているなど、製品のトータルでの生涯設計――が考えられていない、「使い捨て」消費ありきの社会への疑問を持ったのがきっかけです。
そこから、循環型社会の形成をめざしたいと思いはじめ、「3R(※2)」活動の一環として、3Rのひとつであるリユース、とりわけ修理市場を促進させるようなWebアプリを独自で開発しました。修理事業者や修理のできる一般の人と、モノを修理したくて困っている人とのマッチングを促すというものです。このアプリを制作しだしたころから、私の根本的な考えとして「資源を有効活用」し「人と人とをつなげる」ことで、「循環型社会の形成」をしていきたいという強い思いが生まれました。
「リモコン農園」もこのアプリと同じです。耕作放棄地という使われていない資源を有効活用するために、畑をしたいと願っている方々に絶えず使ってもらい、それによって地域が持続して活性していけば、という思いから開発しました。耕作地とそれを希望する人たちとの繋がりを、「自分のICTやデザインのスキル を生かして、Webアプリという形にすれば、ゲーム性を取り入れられるので面白くできるし、全国どこにいる人でも使ってもらえるので、広がりを持てる」と考えたのです。

※2:3R……大量廃棄社会から循環型社会への転換が求められる中で、ごみの減量やリサイクルの促進などへ向け、定式化された行動目標を表す標語。発生抑制(reduce、買う量や使う量を減らすこと)、再使用(reuse、使えるものは繰り返し使うこと)、再生利用(recycle、再び資源として生かすこと)という英語の頭文字に由来する。

編集部:「リモコン農園」は、どのように障がい者雇用に役だっていますか?
松尾:「リモコン農園」の実際の栽培作業を担っているのは、リライブが運営している障害者就労継続支援A型・B型事業所「いにしき」に通われている障がいのある人たちです。現在、10名余りの方々が作業にあたっています。精神障がいのある方がほとんどで、若干、知的障がいの方がいらっしゃいます。入所されて最初から仕事をしてもらうのは難しいので、まずは生活のリズムをつけてもらうところからはじめて、就労できるような流れにもっていっています。そして、各人の特性に適した作業を割り振りするように努めています。
農業には草取り、畝づくり、収穫など様々な作業があります。それを14種類に分類し、作業をする人の体調などに合わせて、慣れてもらいながら少しずつ難しい業務をこなしていってもらうようにしているのも、その取り組みのひとつです。
障がいのある人たちの就労支援は、リライブの大切な仕事のひとつです。多くの技術を身につけた人には、賃金を上げるなどの支援も行っていきたいですが、ここで自信を得て、どこかに就職したり、独立してもらうことを最終目的にしています。ずっと居たいという人もいるけれど、できるだけ卒業してほしいと考えています。また、農作業を通して障がいの緩和ができたらいいなとも思っています。実際、農作業は自分のペースで進めることができるので、精神的な重圧が少なく働きやすいと言う方もいます。効果を数字で表すのは難しいけれど、たとえば、20代からずっと引きこもりだった30代の人が農作業がしたくて毎日通所してくれるといったこともありますし、からだを動かす&土と触れ合うということもいい影響を与えてくれているように感じています。

(左右とも)「リモコン農園」収穫時の風景
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編集部:「リモコン農園」はたいへん新しい試みだと思いますが、世に広めるにあたってご苦労などはありませんか。
松尾:これは今でも苦労しているところです。まず他ではない、全く新しいサービスなので、「リモコン農園」のシステム自体を理解していただけるよう、うまく説明できるようになるまで、トライアンドエラーを繰り返し、今の状況に至るまで時間がかかりました。あと、アプリを広めることの難しさは、今に至っても変わりはありません。テレビのワイドショーなど、各メディアで取り上げていただいたこともありますが、現在も苦労はしています。

編集部:実際に使用されている方からの反響はいかがでしょうか。
松尾:離れた場所で、実作業に関われなくても、無農薬の安全な野菜が収穫できるというので、利用者には好評をいただいています。中には、大阪のレストランで、リモコン農園を活用して、ここで採れた野菜を材料に使われているところもあります。地産地消の新鮮な野菜を使った料理が提供できるので、お客様にも喜んでいただけているようです。

思いをひとつに。私たちのまちを創れるのは私たち自身しかいない

編集部:リライブの活動は、将来どのように発展していくのでしょう?
松尾:リライブの命名の由来は、「再生」を意味する”Re”と、「活動的」を意味する”Live”を合わせた「再活性」という思いです。私たちリライブは、岬町が抱える数々の課題に向き合い、岬町が持つ豊かな自然や歴史、文化などの資源などを使って、新しくて面白いビジネスモデルをつくり、町の再活性化をめざしています。
現在も休耕地管理のオファーが次々に舞い込んでいて、管理からの発展が図れていないのが実状ですが、その活用策として実施した「Re-Live貸農園」を発展させてきた経緯もあり、この事業をコアに新しいビジネスモデルづくりを進めていこうと考えています。それは、「Re-Live体験農園」として結実しようとしています。
2016年度は、土日を使って、月に1回ペースで地域体験ツアーを開催しました。たとえば、春には、古代米である赤米の田植え体験や古代米おにぎり、蛍見物をセットにしたツアーを実施。夏には、海鮮バーベキューとカブトムシ採集、ウミホタル鑑賞をまとめたツアーを行いました。いずれのツアーも親子で10組~20組、30人ほどに来ていただきました。また、リライブが拠点にしている古民家では、農園で採れた野菜を使って、ドラム缶の窯でホウレンソウのピザを焼いたり、かまどで古代米を炊いたりするイベントも行いました。ここは、畳を上げると囲炉裏が現れる仕掛けもあります。このように、岬町でしかできないイベントを展開し、近隣の人とのつながりを得る……そんな岬町の観光ビジネスのモデルづくりができたらな、とも考えています。岬町には基幹産業がないので、体験型の観光でビジネスモデルをつくっていくことが重要だと思います。そして、外の人に来てもらって、岬町の魅力に触れていただいて、ここに住んでみたいと思ってもらって、Iターンなどにつながることを理想にしています。ただ、これに関しては、現在、模索中というところです。

(左)リライブが拠点としている古民家の一室 (右)ドラム缶で作られたピザ窯。イベントで活躍
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編集部:障がい者の雇用支援に関してはいかがですか?
松尾:障害者就労継続支援A型・B型事業所「いにしき」の充実もありますが、新しい展開として、放課後等デイサービス「ちょいす」を設立しました。ここでは、障がいのある子どもたちの放課後の支援を行います。遊びを通じて、社会的生活スキルの取得を図るというのが目的です。あと、ニートや引きこもりの若者を対象とした相談事業の構想もあります。
編集部:最後に松尾さんの岬町への思いを聞かせていただけますか?
松尾:リライブは、「自分のやりたい仕事がないから」という理由で町外へ流出してしまう若い人材の受け入れ先となること、「岬町で起業したい」と思ってもらえる環境をつくること、 そう思ってくれる人材を育てていくこと、これらを目的にビジネスモデルをつくる組織として活動していく事にこだわりたいと考えています。 それには、この先何十年にわたってこのまちで暮らしていく私たちの思いをひとつにして活動を続けていくことで、 まちのあるべき姿を次の世代へ永続的に引き継ぐことを私たちの使命にしなければいけないと考えています。
私たちのまちをつくれるのは、私たち自身しかいないのです。

編集後記

終始、和やかにお話してくださった松尾理事長。趣味はクルマと旅だそうです。古民家から農園まで行くのに乗せていただいた愛車は80年代のランドクルーザー。インパネ(ダッシュボードに組み付けられた計器盤)回りはもちろん、塗装まで自作ということで、そのこだわりぶりにビックリしました。
「リモコン農園」を地方創生のビジネスモデルとして普及させたいと願っている松尾理事長。このアプリを使って、さまざまな自治体と連携できないかと考えています。それは、単なる「遠隔操作で楽しむ農業」としてではなく、就労システムを含んだ「障がい者福祉」での連携です。
リライブは、助成金などに頼らず、自力で運営していく、という覚悟を持っている松尾理事長。その覚悟こそが、持続可能な組織やシステム、ビジネスモデルを生み出す原動力となっているように感じました。地方自治体のお手本となるような仕組みづくり……これからも全力で向き合っていってください。ありがとうございました。

-NPO法人Re-Live(リライブ)-

NPO法人リライブ  
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〒559-0301
大阪府泉南郡岬町淡輪710-2
http://www.npo-relive.com/index.html

〈事業内容〉
・「リモコン農園」の運営
・「Re-Live貸農園」の運営
・「Re-Live体験農園」の運営
・障害者就労継続支援A型・B型事業所「いにしき」の運営
・ハーブや野菜の栽培と販売・商品化の研究
・耕作放棄地(休耕地)と空き家の長期管理の引受
・放課後等デイサービス「ちょいす」の運営
・ニート・ひきこもりの若者を対象とした相談事業(予定)

『リモコン農園』サイト
http://remocon.npo-relive.com/

 
風情あふれるリライブの建物と中庭
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