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【ウェブアクセシビリティ インタビュー・レポート】名古屋市立大学

誇りを持ち愛される大学をめざして、ウェブアクセシビリティの向上を追求。

 
使いやすさにこだわったシンプルな構成の名古屋市立大学ウェブサイト
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ICT(情報通信技術)の進展により、世界中の情報を瞬時に知ることができたり、専門的な事項を手軽に獲得したり……私たちは様々な社会的恩恵を受けています。それと同時に、ICTを使いこなせる人とそうでない人との間に情報格差が生じるなど、社会に大きな変革をもたらしてもいます。

そんな中、「情報バリアフリー環境の整備」について、政府レベルでの取り組みが進められています。たとえば、インターネットから情報を受け取るまでの過程=アクセシビリティの確保や文字のサイズ、色などのユニバーサルデザイン化、あるいは音声によるガイダンスなどのインターフェイスを含めた充実が模索されているのです。それらの施策は、障がい者や高齢者を含むすべての人々が社会のICT化による利益を享受できることを目的として進められています。

この情報バリアフリー化の潮流は、大学などの教育機関にも広がってきています。民間の情報関連企業である、株式会社 日経BPコンサルティングが実施している「全国大学サイト・ユーザビリティ調査」もその流れによるものといえるでしょう。
「[PC編]全国大学サイト・ユーザビリティ調査」は、下記のような8つの指標をもって行われています。

1.トップページ・ユーザビリティ
トップページが、ビジターを誘導する適切なナビゲーションを用意しているか、探しやすい環境になっているか、などをチェック。

2.サイト・ユーザビリティ
ビジターがサイト内を効率よく巡回できる環境になっているかをチェック。統一したナビゲーションバーや、サイト内で迷子にならない工夫、適切なページ見出しなどを多角的に診断。

3.スマートフォン対応
利用者が急増しているスマートフォンに配慮したページをどれだけ用意しているか、また誘導は適切かを診断。

4.メインコンテンツへのアクセス
入試日程や学費など大学サイトの“人気コンテンツ” が訪問者別ページからでもスムーズにたどり着けるかチェック。情報そのものについても、不足はないか、情報が古いままになっていないかなどをチェック。

5.サイト内検索
大学が多くの情報を発信するようになるにつれ、情報を探す手段として使用機会が増えているサイト内検索機能の7つの検索ワードについて、期待するページが上位に挙がるか、タイトルや要約文が適切かチェック。

6.アクセシビリティ
ブラウザで拡大(ズーム)したときにアクセシビリティに問題はないか、などを診断。

7.インタラクティブ
交通アクセス情報を掲載しているか、問い合わせが電子メール/Webフォームでできるか、などをチェック。

8.プライバシー・ポリシー
ビジターが安心して個人情報を提供できるよう、適切なプライバシーポリシーを掲げているかチェック。

以上のチェックポイントで、全国110大学のサイト調査を実施。毎年、そのランキングを発表しています。

今回のインタビュー・レポートは、この「[PC編]全国大学サイト・ユーザビリティ調査」で2年連続2位、そして「スマートフォン編」でも今年度2位を獲得した名古屋市立大学で、ウェブサイトの制作を担当された事務局・企画広報課の永田雅隆課長、小松一哉係長、渡邊麗主事に、ウェブアクセシビリティに秀でたウェブサイト誕生の経緯や、アクセシビリティの必要性、これからの目標などをお伺いしました。

 
左から、小松一哉係長、永田雅隆課長、渡邊麗主事
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「ウェブアクセシビリティ」と「ウェブユーザビリティ」の違い

インタビューに移る前に、予備知識のおさらいをしておきましょう。
皆さんは、「ウェブアクセシビリティ」あるいは「ウェブユーザビリティ」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。よく似た言葉なので、少なくない方々が混同されているかもしれません。実際、かなりあいまいに使われているのが実状のようです。ここでは、「ウェブアクセシビリティ」と「ウェブユーザビリティ」それぞれの定義や違いを説明いたします。

○ウェブユーザビリティとは、ユーザーにとっての「使い勝手のよさ」
「使い勝手のよさ」とは、ユーザーがストレスを感じず快適に操作できるか、画像などの様々な要素のわかりやすさ、目的の情報にたどりつくまでに必要な労力の少なさなどがあげられます。また、スマートフォン対応も「どこにいても手元でウェブにアクセスできる」という点で、ユーザビリティアップの一施策と考えることができます。

○ウェブアクセシビリティとは、「アクセスのしやすさ」
ウェブアクセシビリティは、「どのような環境にいても平等にアクセス可能で、すべてのコンテンツや機能が利用できる状態」の実現をめざすもの。高齢者でも障がい者でも問題なく利用できるウェブコンテンツ構築を目的に、WAI(Web Accessibility Initiative)が世界基準のガイドラインを策定していて、日本においてもJISが「JISX8341-3(高齢者・障害者等配慮 設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ)」という規格を設けています。

このように「アクセシビリティ」は誰でもインターネットを平等に使えるようにするというウェブ上のユニバーサルデザインの普及を促すものであり、「ユーザビリティ」はアクセシビリティを構成するひとつの要素と考えられます。
さて、いよいよインタビューに移りたいと思います。

ランキングは、あくまでも“結果”。
目的は、“誰もが使いやすい”サイトにすること

編集部:「[PC編]日経BP全国大学サイト・ユーザビリティ調査」では、2年連続2位を獲られて、おめでとうございます。しかも、今回は[スマートフォン編]との両部門で2位獲得ということで、素晴らしい快挙ですね。
小松:ありがとうございます。2年連続2位ということで、昨年よりランキングが下がらなかったので胸をなでおろしています(笑)。ただ、私たちは、ランキングはあくまでも“結果に過ぎない”と考えています。目的は、“どなたにも、より快適に使っていただけるサイトを作ること”です。その努力の結果がランキングに現れるのだと思っています。もちろん、ランキングは、モチベーションアップに役立っていますが、私たちスタッフは、常にランキング至上主義に陥らないよう、心に銘じて活動しています。

 
ランキング至上主義にならないように気をつけていると話す小松係長
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教員、事務職、学生、全学体制で、ウェブアクセシビリティ向上に向き合う

編集部:どういった経緯で、ウェブアクセシビリティの向上を意識されるようになられたのですか?
渡邊:2010年の「全国大学サイト・ユーザビリティ調査」において、恥ずかしながら本学のウェブサイトは、調査対象200大学のうちの197位という散々な結果であることがわかりました。本学は公立大学でもあり、誰もが平等に使え、利用しやすいサイトを作ることは急務であると考え、ウェブアクセシビリティの向上に力を入れました。

 
名古屋市立大学のウェブアクセシビリティ向上を示す資料
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編集部:その後、ウェブアクセシビリティ向上に向けて、どんな施策を採られたのですか?
渡邊:2012年から2013年にかけて、学生対象にサイトに関する大規模なアンケートを実施し、在校生2500人以上が回答を寄せてくれました。その結果、「(サイトの)どこに、どんな情報があるのかがわかりづらい」「入試の情報がわかりづらい」「どんなことが学べるのかがわかりにくい」などの問題点が明らかになりました。
これらの声を活かして、サイトの構造改革やSEO対策(※1)を実施していきました。具体的には、インデックスとサイドメニューの重複を是正したり、メニュー項目の名称や配置を改善したり、もちろん、トップページの変更やサイト内検索の充実も図りました。また、CMS(※2)を導入して、より簡易にサイト制作ができるようにしました。
その結果、2012年度は33位、翌2013年は7位、2014年は4位と、コンスタントに上位が得られるようになってきたのです。その底力のアップが、前年度と今年度の2年連続2位獲得につながったのだと考えています。

※1 SEO対策:SEO(Search Engine Optimization)=「検索エンジン最適化」の意味の通り、GoogleやYahooといった検索エンジンで、特定のキーワードで検索した場合、上位に表示されるための対策。

※2 CMS:Content management systemの略。ウェブサイトのコンテンツを統合的に管理・保守・更新するためのシステム、およびソフトウェアのこと。

編集部:ウェブアクセシビリティの維持向上を図るために、どんな体制でサイト運営をされていますか?
小松:6学部7研究科にいる教員と事務職で構成されている「ウェブサイト向上委員会」や、統括組織である大学広報委員会を定期的に開催して、ウェブサイトの魅力向上やアクセシビリティの維持向上に努めています。長期にわたる活動なので、担当者が変わったりしていますが、ウェブアクセシビリティへの「思い」は、確実に受け継がれていると感じています。私たちも先達の思いを大切にしていきたいと考えています。

 
「全学でウェブアクセシビリティ向上に向き合っています」と渡邊さん
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編集部:視力の弱い方や、視覚障がいがある方のために、音声読み上げ機能を採用されていますが、障がいのある方や高齢の方に向けては、ほかにどのような配慮をなさっているのでしょうか?
渡邊:読み上げ機能によりよく対応してもらうために、ウェブサイトを更新する各部署の職員が、日時の表記や、表組の作成の際には、音声読み上げソフトが読み上げていく順番に配慮したり、読み上げには不適当な機種依存文字を使わないようにしたり、画像を載せる場合は、データの一部に画像が伝える内容についてのテキストを入れるようにするなど、気をつけるようにしています。
サイトの配色についても、アクセシビリティの指標に沿ったCMSのチェック機能を利用しながら、担当の者が目視チェックも行って、見えにくい色使いにならないよう注意しています。障がいのある方も高齢の方も含めて、サイトに来訪される皆さんが同じようにご覧になることができ、どなたでもサイト内の情報に、わかりやすくアクセスしていただけるよう、できるだけ配慮しています。
小松:前述の委員会の場や、以前の担当者の中で、障がい者や高齢者に配慮するにはどうすればいいか、という議論が行われており、現担当者である私たちにもそれが引き継がれていると思います。

派手で見栄えのするサイトよりも、シンプルで使いやすいサイトに

編集部:これまでに苦労されたことはありますか?
渡邊:「もっと派手で見栄えのするデザインのサイトにしたら?」という声を聞くことがあるのですが、私たちがめざしているのは、あくまでも「使いやすいサイトづくり」です。いくら見栄えがよくても使いにくければ役に立ちません。奇をてらわない、誠意のあるシンプルなサイトづくりを意識しているのです。この考えを理解してもらうのに時間はかかりましたが、長年、活動を続けてきて、今ではよく理解していただいていると感じています。

 
大学のカラー(えんじ色)を用いたシンプルで見やすいデザイン
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編集部:これからは、どんなことを課題に改善をされていかれますか?
小松:今後の世界は、ますますグローバル化が進んでいきます。大学も海外に向けてさらに認知度を高めていく必要があるでしょう。でも、私たちのサイトは、まだまだ多言語対応が弱いところがあって、そういった点を改善していきたいと考えています。また、旬の情報など本学に愛着を持っていただけるような記事に、トップページから、よりストレスなくアクセスできるような工夫を盛り込んでいきたいとも考えています。そのためにも全学一丸となって取り組んでいきます。

 
これからは、情報の質こそが問われる時代、と語る永田課長
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永田:ウェブアクセシビリティへの取り組みは、とても地道な活動です。これまでも「もっとカッコいいサイトを!」といった意見も出ていましたが、私たちは「使いやすさ」を第一にがんばってきました。そんな中、ランキングが上がったということは、私たちの意識をより高めるのに大きな役割を果たしてくれています。これを励みにして、これからもよりよいサイトづくりを続けていこうと決意しています。
ウェブアクセシビリティが向上すると情報の伝達スピードも高まります。そこで大切になってくるのが「情報の中身=質」です。これまでは「情報が見つからなかった」ということがないように努力してきましたが、これからは「情報が期待したものではなかった」とならないように「情報の質の向上」を図っていかなければならないと考えています。
私たちのサイトは、市民講座などの告知を含め、広く市民の方々に見ていただいています。そういった意味で、今後とも全学一丸となって、多くの情報を発信し、社会に貢献できるサイトに育てていきたいと考えています。これからも、どうぞ、よろしくお願いします。
編集部:本日は、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
永田・小松・渡邊:こちらこそ、ありがとうございました。

 
「これからもサイトを育てていきます」と力強いお言葉の皆さん
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編集後記

1995年に公開された米映画「フォレスト・ガンプ/一期一会」は、作品賞・監督賞・主演男優賞などアカデミー賞6部門を獲得し、一世を風靡しました。ご記憶の方も多いと思います。この作品が評価された要因のひとつに、コンピューター処理による特殊効果(VFX)をさりげなく活用したということがありました。主人公のトム・ハンクスが、当時には故人となっていたジョン・レノンやケネディ大統領などと共演するシーンに最先端の技術が使われていたのです。
今回、名古屋市立大学のウェブサイトを見せていただいて、この「フォレスト・ガンプ」が思い浮かんできました。いわゆるSF映画のようなド派手な様相のVFXではなく、ごく普通のシーン(それは現実にはありえないのですが)で技術を駆使する……。まさに「奇をてらわない、誠実な制作意識」が流れているのを感じたのです。
これからも「見栄えよりも使いやすさ」というポリシーでウェブアクセシビリティ向上に努めていってください。ありがとうございました。

―名古屋市立大学―

名古屋市立大学  

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