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【インタビューレポート】コープこうべ インターネットお買い物システム「iバリアフリー」

「自分で選んで、自分で買う」視覚に障がいのある組合員の方たちに、売り場で買い物をしているような楽しみを。

 
実際の売場をめぐって買い物をするような感覚が楽しめる「iバリアフリー」のサイト
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皆さん、ウィンドーショッピングはお好きですか?昔から東京では、銀座をブラブラしてウィンドーショッピングを楽しむことを「銀ブラ」(大阪なら心斎橋で「心ブラ」)といいますが、そんな言葉があるくらい、たくさんの人たちがウィンドーショッピングを楽しんできました。
家に居ながらカタログやネットで商品を吟味して購入するのも便利でいいのですが、実際に買わなくても、店をめぐって、いろいろな商品を選ぶのは、とても楽しいことです。そんな中、「視覚に障がいのある組合員さんにも、実際に売り場をめぐって買い物をしているような楽しいショッピングをしてほしい」という思いを込めて、インターネットの買い物システムを運営している組織があります。それが生活協同組合コープこうべ。「iバリアフリー」という視覚に障がいのある組合員向け商品注文システムを運営しています。
今回は、「iバリアフリー」の開発・運営をしてきた、インターネット事業部 インターネット事業推進 統括の浜地研一さんに、その誕生の経緯や現状、利用者の声、将来の展望などをお伺いしました。ぜひ、「iバリアフリー」のこだわりを実感してみてください。

 
お話を伺ったインターネット事業部の浜地さん
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視覚に障がいのある方たちとの
対話の中から生まれた「iバリアフリー」

編集部:「iバリアフリー」は、どんな経緯で誕生したのですか?
浜地:私たちコープこうべが、インターネット事業をスタートさせたのは、2000年のことでした。あくまでも、組合員向けサービスの拡充の一環という位置づけで、バリアフリー対策はまったく考慮できていませんでした。当時は、まだウェブアクセシビリティという言葉はなく、ユーザビリティという概念がようやく出はじめたころです。
それから2~3年後、「自分もインターネットで商品購入がしたい」という視覚に障がいのある組合員さんからの問い合わせが届くようになりました。最初は、サイト全体をバリアフリー化しなければならないと考えていたので、その費用を考えると断念せざるを得ず、問い合わせに対して「検討課題とさせていただきます」と定型的な返信しかすることができませんでした。しかし、あまりに熱烈なリクエストが繰り返し来るので、ある日、お問い合わせをいただいた組合員の方とお電話でお話しさせていただいたところ、三田で視覚に障がいのある人向けのパソコン勉強会を運営しておられることがわかり、実際に訪問させていただくことになりました。そこでいただいた「注文コーナーだけでもバリアフリー化してくれたらすごくうれしい」という言葉でハッと気づきました。「全体を変える必要はない」と。「注文部分の対応ならなんとかなる!」ということで、「iバリアフリー」の開発が始まり、半年後の2004年に開設の運びとなりました。
編集部:開発には、どんな苦労がありましたか?
浜地:世の中にこういった開発の手順やノウハウが出揃っていない中で構築しましたので、今見ると不格好なところも多いシステムだなと思います。しかしながら三田のパソコン勉強会に通って、視覚に障がいのある方にプロトタイプを使っていただきながら意見を聞く事ができたので、実際に使いものになるシステムが実現できたかと思っています。会話を重ねる中で、「お店では買い物に補助が必要だけど、ひとりで買い物ができればすごくうれしい」と言われていたのが印象に残り、「実際に売り場をめぐって買い物をしているような感覚が楽しめるページづくり」をめざしました。視覚障がいのある組合員さんに「自分で選んで、自分で買う」という喜びを体験していただきたかったのです。そこで、とにかくシンプルで使いやすいページに仕上げることにしました。

 
使いやすさを重視したシンプルな「iバリアフリー」の画面
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視覚に障がいのある方にも買い物する楽しみを
使う人本意のさまざまな工夫を持ったシステム

編集部:スタート以来10年間、ほとんどリニューアルはされていないそうですが。
浜地:組合員さんたちは、すでに日常生活の一部として利用されているので、「慣れ」を大切にしなければならないこともあって、大きなリニューアルは行っていません。しかし、視覚に障がいのある組合員さんたちの集会などへ定期的に参加してご意見をいただきながら、改善の要望などは収集しています。この間には、JIS規格が導入され、その準拠への対応が求められたりしています。ウェブアクセシビリティへの取り組みも大切なことなのですが、私たちは「使いたい人にとって、本当に使いやすいサイトにする」のが大切だと思っています。そのうえで、買い物を楽しんでいただくことができるのかと。
売り場で買い物をしている感覚をもっていただくためにまず、ページを訪れた組合員さんが、今サイト内のどこに居るかを音声で案内するのですが、それを「ここは野菜売り場です」のように表現しています。ささいなことなのですが、この表現にすることで、“売り場”の前に立っている感じを出したいと考えました。加えて主要な音声読み上げソフトに対応しているので、操作はキーボードを使って簡単にできるようにしています。弱視の方もおられますので、文字の拡大や強いコントラストの画面への変更機能もつけています。
次に、これも細かい点ですが、ある商品の注文を済ませて元の画面に戻るとき、通常はページの先頭に戻るのですが、注文した商品の次のところから読み上げるようにしていることもポイントです。これも開発時にプロトタイプを利用いただく中で出たご要望を取り入れた機能です。地味ですがずいぶん使い勝手を上げてくれています。
さらに、商品情報は、できるだけたくさん掲載するようにしています。視覚に障がいのある組合員さんの場合、ビジュアルによる選択ができないので、服ならポケットの数とか位置とか、食べ物なら生産地とか、できるだけ多くのスペックを知りたいと要望をいただきました。そのため、紙のカタログ用の文字データはすべて表示する機能をつけています。紙のカタログ用データなので、画面で見るとおかしな表現があってこちらとしては出したくなかったのですが、そうであっても多い方がいい、という声が多く、おかしな点はご了承いただきながら商品情報を掲示しています。本来であればオリジナルの情報を作成するのがあるべき姿なのですが、完璧をめざすとシステムの提供が困難になるため、そこは妥協点を探りながら進めてきました。

 
(左)「iバリアフリー」の視覚障がい者のネット利用についての概要
(右)弱視の人に対応するコントラストの強い画面
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「自分で選び、買い物をする」ことを楽しんでいます!
寄せられる組合員さんの喜びの声が活動の支え

編集部:「iバリアフリー」の利用状況を教えてください。
浜地:今は、約70名の組合員さんが「iバリアフリー」をお使いになっています。2004年のスタート時には20名ほどでしたから、入れ替わりはありますが、年に4~5名のペースで増えています。元々、コープこうべでは、視覚に障がいのある組合員さん向けにカセットテープやCDでの音声を使った商品案内・筆記発注のサービスをしているのですが、その利用者は100名ほどいらっしゃいます。インターネットが使えればもっと便利にお買い物いただけるのですが、インターネットは難しくて……という方もおられます。視覚に障がいのある方向けのインターネット教室でこの「iバリアフリー」を練習台としていただいてるところも多いので、これからもっとインターネットの利用が広がればと思っています。
編集部:「iバリアフリー」をお使いの組合員さんからは、どんな声が寄せられていますか?
浜地:全般的に喜んでいただいているようです。メールで寄せられた声を紹介しますと、「とてもわかりやすくて、喜んでいます」「視覚に障がいのある人にわかりやすいように、そこかしこに工夫がされていたので、とてもうれしく思いました」「私たち視覚に障がいのある者は、自分以外の人に見てもらうことが多いです。また、弱視の方は画面をきめ細かく見ることができず、自分の買いたい物を上手に探すことができなかったり、欲しい物とは違う物を買ってしまったり、苦労します。自分で選び、楽しみながら買い物ができるのでうれしいです」など、その声の一つひとつに「iバリアフリー」の活動を後押ししてもらっています。

 
組合員さんから届いたうれしい声を語る浜地さん
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ご利用いただける方を増やし、
継続的にサービスを改善していきたい

編集部:「iバリアフリー」のこれからの展望をお聞かせ願えますか?
浜地:今後も継続的に改善できるよう、ご利用いただく方をさらに増やしたいと思っています。そのため地道な普及活動とクチコミでの拡大を心がけています。併せて、2016年はこれまでいただいている意見を含めて改善できるような動きをしていくつもりです。また、長く事業を持続させていくために、後継者の育成も行いながらこれからも末永く、生協らしいスタンスで、視覚に障がいのある組合員さんの暮らしをサポートしていきたいです。
この取り組みを通じて、インターネットは視覚に障がいのある方の世界を広げることもできるんだ、というのを実感しました。まだまだ至らない点が多々ありますので、これからも勉強しながら人の役に立つインターネットサービスを提供していきたいと思っています。

編集後記

ネットショッピングは、カタログ的な品選びをするのが一般的ですが、「iバリアフリー」は、実際に売り場で商品選びをするように、リアルな感覚のショッピングが楽しめます。それが、視覚に障がいのある人たちに評価されているように感じました。お話を伺って、 「障がいのある人の暮らしを応援したい」という強い意志も伝わってきました。
「iバリアフリー」は、コープこうべ組合員へのサービスなので、兵庫県内と大阪府・大阪市・京都府の一部地域限定になるのですが、このようなアプローチが広く普及してくれたらいいな、と思いました。
これからもホスピタリティを基本においたウェブアクセシビリティを大切にして、生協ならではの障がいのある人へのサポートを続けていってほしいと思います。

生活協同組合コープこうべ-概要-
名称:生活協同組合コープこうべ
設立:1921年(大正10年)4月12日
所在地(住吉事務所) :〒658-8555 神戸市東灘区住吉本町1丁目3番19号
事業エリア:兵庫県全域、京都府京丹後市、大阪府北部(豊中市・箕面市・池田市・吹田市・茨木市・高槻市・摂津市・能勢町・豊能町・島本町・大阪市淀川3 区)
URL : http://www.kobe.coop.or.jp/
「iバリアフリー」トップページ:http://www.coop-kobe.net/member/shop/barrierfree/top.aspx
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