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【インタビュー・レポート】きょうされんネットショッピングモール「TOMO市(ともいち)」

“私たち抜きに私たちのことを決めないで”「障害者権利条約」に込められた思いを基本に、全国の作業所が参加してネットショッピングモールを展開。

きょうされんネットショッピングモール「TOMO市(ともいち)」
http://www.tomoichiba.jp

ウェブアクセシビリティに配慮してシンプルかつわかりやすく作られた「TOMO市」のページ  
ウェブアクセシビリティに配慮してシンプルかつわかりやすく作られた「TOMO市」のページ
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近年、ネットショップで買物をする人が急増しています。総務省が行っている「家計消費状況調査」(*1)によると2015年9月には、ネットショッピングを利用している世帯の割合は26.4%。およそ3割の世帯がネットショッピングを活用していることになります。
いわゆるEC(*2)市場も着実に成長していて、経済産業省の「平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、EC市場は約12.8兆円(前年比14.6%増)に拡大し、EC化率は4.37%に伸びています(*3)
このような環境のもと、手軽にネットショップを開けるサービスも増え、自らショップを運営する人も増えています。これらの背景にあるのが、インターネットの普及。今やインターネットは、社会活動に欠かせないインフラとして機能しているのです。
そんな中、全国各地の障がいのある人たちの働く作業所が商品を一堂に集め、インターネットを介して発信しようというネットショッピングモールが立ち上がっています。それが、成人期の障がいのある人たちが、地域で働く・活動する・ 生活することを応援する事業所の全国組織「きょうされん」が運営する「TOMO市(ともいち)」。“安心”“安全”“手づくり”をキーワードに、オリジナル商品や地域の特性を活かした地元企業とのコラボレーション商品などを販売しています。
今回は、「TOMO市」の運営に携わっておられる「きょうされん」の渡部伸太郎さんと瓜生田耕さんに、ネットショッピングモールと障がいのある人たちの関わりなどについてお伺いしました。

*1:「総務省家計消費状況調査(支出関連項目:二人以上の世帯) 平成27年(2015年)9月分(確報) 結果の概要」(PDFファイル)
*2:EC(Electronic Commerce)…インターネットなど電子的な手段を介して行う商取引のこと。
*3:「平成26年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」(PDFファイル)

渡部伸太郎さん 瓜生田耕さん  
お話を伺った「きょうされん」の渡部伸太郎さん(左)と瓜生田耕さん(右)
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オープンから6年。今や49店舗、1,500アイテムをそろえる
ネットショッピングモールに成長した「TOMO市」

1.障害のある人びとが働く作業所で製造したオリジナル商品、及びその地域の特性を生かして共同開発や共同販売で生まれた商品、「安心」「安全」「手づくり」をテーマとした商品をネット上で販売。
2.社会に広く障害福祉の現状を伝え、障害のある人びとに対する理解を深める場。
3.障害のある本人が利用することを想定して、便利性、快適性はもちろんのこと、アクセシビリティーを考慮したシステム構築。

これらのコンセプトを掲げて構築されたネットショッピングモール「TOMO市」は、2009年6月1日にオープンしました。スタートして6年が経過した現在、参加店舗は、北は青森から南は鹿児島まで22都府県49店舗に増え、掲載商品は1,500アイテムに拡大、毎月8万アクセスを達成しています。
「どうすればネットショップが開設できるのかわからない」「ネットショップを開くにはお金がかかりそう……」「開設しても訪問してくれる人が少ない」といった作業所・施設・事業所のネットショップへの不安や疑問を払しょくして、販路拡大のサポートを続けています。

「TOMO市」のショッピングページ  
「TOMO市」のショッピングページ
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作業所商品の販路拡大、利用者の給料アップをめざして

編集部:まずは、「TOMO市」をオープンさせた経緯についてお聞かせ願えますか?
渡部:「TOMO市」の話をする前に、まず、その母体である「きょうされん」について説明させていただきます。「きょうされん」の出発点は、障がいのある人の働く場である共同作業所16カ所が集まって1977年8月6日に結成された「共同作業所全国連絡会(略称・共作連)」です。障がいのある人を支える地域での実践、事業の経営、運動を軸に、障がいのある人が働く事業所、暮らす事業所が集まって、障がいのある人の暮らしを豊かにすることを目的に設立されました。今は、グループホームや相談支援センターなど多様な事業所が集まって、障がいのある人が生きていくうえで関わるすべての事業を対象に活動しています。現在、加盟している作業所は全国1,880カ所です。
共作連が発足した当時から、作業所・施設・事業所での仕事づくりと併せて、加盟事業所で取り組んでいる自主商品のレベルアップを働きかけ、また障がいのある人のボーナスや作業所運営財源のためにカタログ販売を実施してきました。その40年近い活動の中で、商品は、味や使い勝手ばかりでなく、パッケージデザインなども含めたトータルでの品質が向上してきました。また、プロのデザイナーとの共同での製品開発など、新しい展開も生まれています。今や、百貨店に出しても遜色のない商品がたくさんあるのです。
このように、一定の品質が確保できるようになった作業所商品ですが、多くの作業所・施設・事業所では、商品が売れない、売り方がわからない、売る場所がない、といった声がまだまだ聞かれます。もっと、作業所商品をたくさんの人たちに知っていただくにはどうしたらいいのか? そう考えて、辿りついたのが「ネットショッピングモール」だったのです。
最近、「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」の考え方が浸透してきました。その結果、障がい者福祉の分野にも目を向けていただく機会が増え、きょうされんにも「作業所の商品は、どこで手に入るのか」といった問い合わせをいただくようになりました。そういった背景もあって、「せひ、ネットショッピングモールを作ろう!」ということになり、2007年に作業所商品のネットショッピングモールを立ち上げるためのチームを作り、準備を始めたのです。
インターネットを使って販路を拡大し、商品が売れるようになれば、利用者の給料や工賃にも反映させることができます。それぞれの作業所の商品を持ち寄ることで、作業所間で切磋琢磨し、商品の品質向上につなげることもできます。また、インターネットに公開されることで、ほかの一般商品との比較もされる中で、商品力アップを視野に入れた取り組みをしていただけるようになることも意識しています。

利用者の給料アップにつなげたい、と語る渡部さん  
利用者の給料アップにつなげたい、と語る渡部さん
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地域の特性を活かしたストーリーのある商品づくりをめざす

編集部:「TOMO市」ならではのポイントは何でしょうか?
瓜生田:全国規模のネットショッピングモールということもあり、商品に地域の独自性が出ているのではないか、と考えています。
たとえば、秋田県の作業所が作っているペットフードには、エゾジカの肉が使われています。青森県のアップルパイは、パティシエが作ったレシピをもとに障がいのある人が名産のりんごを使って仕上げた逸品で、弘前の市長賞をもらったほどです。また、鹿児島県の作業所が作っているそばぼうろには、江戸時代からの特産品であるそばが使われています。シラス台地の特性に適したそばを使うことで独自性を出しています。さらに、名古屋の作業所では、白菜や名古屋コーチンを使った商品を展開しています。日本の球状白菜は、名古屋発祥と伝わっていて、“日本初の白菜の産地から”というのがポイントになっています。名古屋コーチンは、明治維新のころ、尾張藩解体の折、仕事がなくなって困っていた士族たちが、新しい産業を生み出そう、ということで鶏を飼い出したのが始まりとされています。その発祥の鶏肉を使っているところがミソとなっています。
各作業所は、いずれも地域に密着して活動しています。どうしても地産地消の狭いエリアでの発信になりがちです。でも、考えてみれば、地元の人たちにとって、地元のものは“あって当たり前”のものです。なかなか積極的な購買につなげることが難しいのです。でも、それが他県の人なら、珍しい貴重なものとなります。付加価値が付くわけですね。その地域の独自性にストーリーを加えれば、ネット上でも十二分に勝負できる商品になります。その発信拠点として「TOMO市」を活用していただけたら、と願っています。

「東北物産展被災地商品」の特集ページ  
「東北物産展被災地商品」の特集ページ
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もうひとつ「TOMO市」の特長といえるものがあります。それは、「東北物産展被災地商品」のコーナーを設けていること。ここには、2011年3月11日の東日本大震災で被災しながらも元気に商品づくりに励んでいらっしゃる作業所の皆さんの商品が並んでいます。歳月を経るごとに風化していく感のある震災ですが、私たちは、いつまでも変わることなく、被災した障がいのある人たちに寄り添い、作業所・事業所の復旧・復興に向けて支援活動を続けたいと考えています。
実際のところ、今でも震災支援を続けたいと思っていてもどうすればいいのかわからない、自分たちの支援が本当に現地の役に立っているのかという迷いのある方もいらっしゃると思います。この被災地商品ショップでは直接被災地の障がいのある人たちの仕事を応援することができるということで、お客様から感謝や応援の声も寄せていただいています。インターネットショップだからこそ、距離を越えて被災地と全国の方々の心を、それも皆さんの日常をつなぐ支援ができているのだと思いますし、震災で街、つまり近隣の市場がなくなってしまった作業所からは「TOMO市があったからこそ全国の皆さんに支えられ震災前の給与水準に戻りました」といった声も寄せられています。
あともうひとつお伝えしたいのが、カレンダー&スケジュール帳の製作・販売活動です。これは「はたらく仲間のうた」というタイトルで、カレンダーは1986年から、スケジュール帳は2年前から展開しています。このシリーズは、作業所・事業所などで「働く・活動する」障がいのある人たちが、感動した風景や夢、日々の想いを描いた作品を基に作っています。毎年、全国200カ所ほどの作業所・事業所から1,700点以上の作品応募があり、その中から厳選しています。それらの作品を使ったカレンダー&スケジュール帳は、社名を入れて年末の挨拶に配られるなど、企業のCSR活動の一環としても使っていただいています。

地域の特性を活かした商品を発信したい、と瓜生田さん  
地域の特性を活かした商品を発信したい、と瓜生田さん
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ウェブアクセシビリティには、ホスピタリティの考え方が必要

編集部:「TOMO市」のウェブアクセシビリティへの取り組みをお聞かせください。
渡部:やはり、「きょうされん」が作るネットショッピングモールということで、障がいのある人が利用することを想定して、便利性、快適性を包括した機能を付加する“アクセシビリティを考慮したシステム”づくりを最も重視しました。また、作業所が出店する際に、特別なインターネットの知識をあまり必要としないシステム、障がいのある人でも操作しやすいシステムを考え、協力していただけるソフトメーカーを探し、名古屋にあるソフトウェアハウスに依頼することにしました。
視覚障がいのある人への音声読み上げソフトへの対応や、マウスを使うのが困難な方には、TabキーやEnterキーなど指1本で操作ができるようにするなど、JIS規格や国際機構であるW3C(*4)の指針を基に、ネットショッピングモールのシステムを構築しています。
このようなICTの工夫に加え、電話やファクスでの対応や代理発注などの対応も行っています。真に誰もが楽しめるネットショッピングモールをめざすなら、パソコンやモバイル機器が使えない人にも対応できるシステムが必要なのではないか、と考えたからです。私たちの目的は、作業所・事業所の商品をより多くの人に買っていただくことです。インターネットを使って購入していただくことは、そのひとつの手段です。あらゆる手段に対応してこそ、真のアクセシビリティではないでしょうか。そういう意味では、ウェブアクセシビリティにはホスピタリティの考え方が必要だと考えています。

*4:W3C…httpやhtmlなどのWWW関連の仕様や規格を策定する業界団体、World Wide Web Consortium(ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム)の略称。

障がいのある人が、あたりまえに働き、選べる暮らしを

編集部:「TOMO市」の将来の夢や展開をお聞かせください。
瓜生田:「障害のある人があたりまえに働き、暮らしの形を選べる」これは、2014年に、私たち「きょうされん」が決めた新しいスローガンです。働く意欲や力がありながらも、支援が不十分なために力を発揮できない。結婚したい、ひとり暮らしがしたいけれど、所得が低いために諦めざるを得ない。そんな実態を私たちは変えていきたいのです。そのためにも「TOMO市」をもっと活用してほしいと思います。
日本の社会保障制度の整備はまだまだ低いといわざるを得ません。世界第3位の経済力を誇る日本であっても、障がいのある人に関わる予算の割合は先進国の平均以下です。生活保護と比べてもあまりにも低い障害基礎年金額などがその代表でしょう。また、作業所・施設・事業所での給料の低さも考えていかなければならない要素だと思います。厚生労働省の調査(2013年)によると、全国のB型事業所での平均工賃は月額14,437円、A型でも月額69,458円です(*5)。調査の対象には入っていない小規模作業所では、もっと低い金額であると想定できます。このような厳しい経済的基盤をなんとかしたいと考えています。
渡部:「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)」というものがあります。2006年に国連総会で採択され、2014年に日本でも批准した条約です(*6)。ここには、“他の市民との平等”な生活を障がいのある人に保障していくことが謳われています。また、障がいのある人のための政策を決めるうえで、障がいのある当事者が参画することの重要性も確認されています。それを端的に表わすのが条約を策定する際に何度も確認された“Nothing about us without us(私たち抜きに私たちのことを決めないで)”という意見です。私たちは、この思いを礎に、日々活動を行っています。支援というと、時に上から物を言うような態度になりがちでもありますが、私たちは常に障がいのある人たちと同じ視点で、支援活動を進めていきたいと考えています。
「TOMO市」では、訪れたお客様が楽しんで商品を選んでもらえるように、さらに出店ショップを増やすとともに、商品数を増やしていきます。同時に、商品やサイト自体の質も向上させていきます。
障がいのある人たちの願いに、1日でも早く近づくことができるように、「TOMO市」をもっともっと多くの方々に知っていただき、ご利用いただくためにも、ウェブアクセシビリティを含め、あらゆる面で向上していきたいと考えています。

*5:厚生労働省「平成25年度工賃(賃金)の実績について」(PDFファイル)
*6:外務省「障害者の権利に関する条約(略称:障害者権利条約)」
   http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html

編集後記

“当たり前に暮らしたい”障がいのあるなしに関わらず、それはごく普通の願いです。その願い=障がいのある人の暮らしを豊かにするためには、ひとつの事業所、ひとつの法人だけでは変えることができないことがあります。皆で集まれば、大きな力が生まれる……それを実践されているのが「きょうされん」であり「TOMO市」だということが、取材を通してよくわかりました。
お話を伺った瓜生田さんは、精神の障がいをお持ちだということです。たくさんの人が居るところに行くことができないのだそうです。そんな障がいを持ちながらも、「きょうされん」ではごく普通に仕事ができるとおっしゃっていました。
“障がいは環境が作る”といわれることがあります。環境を変えることができたなら、もっとたくさんの障がいのある方々が、ごく普通の暮らしを送ることができるでしょう。
「きょうされん」そして「TOMO市」の活動が、そんな環境づくりに貢献することを願ってやみません。

「TOMO市」リーフレット1  
「TOMO市」リーフレット2  
「TOMO市」リーフレット
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-きょうされん概要-
〒169-0074
東京都新宿区北新宿4-8-16 北新宿君嶋ビル9階TEL.03-5937-2444 FAX.03-5937-4888
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