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鳥取県公式ホームページ「とりネット」インタビューレポート

評価の高いウェブアクセシビリティ。その背景には鳥取県の人権に対する姿勢がありました。

「とりネット」トップページ。背景色・文字サイズ・読み上げ機能・多言語対応などウェブアクセシビリティに配慮  
「とりネット」トップページ。背景色・文字サイズ・読み上げ機能・多言語対応など
ウェブアクセシビリティに配慮
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皆さん、“ウェブアクセシビリティ”という言葉をお聞きになられたことはありますか。今、話題となっているキーワードで、「高齢者や障がいのある人など、心身の機能に関する制約や利用環境などに関係なく、すべての人がWebで提供されている情報にアクセスして利用できること」を意味しています。
今やWebは、高齢者や障がいのある人たちにとって、重要な情報源になっています。しかし、実際に提供されているWebが、すべて快適で使いやすいわけではありません。中には、使いにくいだけでなく、内容を知ることさえできないものもあるようです。
そんな中、鳥取県公式ホームページ「とりネット」は、高いウェブアクセシビリティを確保していることで知られています。今回のインタビューレポートでは、鳥取県庁の職員の皆様に「とりネット」が誕生した背景や運営していく中で気づいたこと、これからの展望、さらに、人権施策に力を入れる鳥取県の基本方針や、それを踏まえたユニバーサルデザイン浸透への取り組みについてお話を伺いました。

使う人の生の意見を反映、優れたウェブアクセシビリティを確保する「とりネット」

「とりネット」にアクセスすると、まず、ページ上部の閲覧支援ツールのアイコンの多さに驚かされます。背景色は「標準」「黒」「青」の3つから選べ、文字サイズも3段階で大きくできます。また、「音声読み上げ機能」も採用。さらに、「英語」「簡体中文」「繁体中文」「韓国語」「ロシア語」の多言語に対応した自動翻訳機能も搭載しています。

閲覧支援ツールのアイコンが並ぶ「とりネット」上部の表示操作部  
閲覧支援ツールのアイコンが並ぶ「とりネット」上部の表示操作部

できる限りバリアをなくそうとする努力が見えるホームページです。でも、「とりネット」が高い評価を受けているのは、もっとすごいシステムを導入しているからなのです。

●使う人の生の意見を反映させる「ウェブアクセシビリティ向上システム」を導入
アクセシビリティの問題を報告 「とりネット」の各ページの右下には、左のようなハートマークが貼りつけてあります。たとえば、利用される方が、“画像にテキストによる代替情報が提供されていない”“単語の途中にスペースが挿入されていて正確に読み上げてくれない”といった、アクセシビリティ上の問題点を発見された場合、このハートマークをクリックすれば、ユーザーリクエストを送信するためのページに移り、問題を報告することができます。
これは、2010年10月から導入されている「ウェブアクセシビリティ向上システム」の実証実験のひとつ。利用されている方々の生の意見をWebに取り入れて、より使いやすいWebづくりをするために活用されています。導入当時は、マスコミに“世界初のシステム”として紹介されたこともあったそうです。
「立ち上げたばかりのころには月に10件ほどの報告がありましたが、今は少し落ち着いています」と総務部情報政策課の矢田部佑己主事(写真下)。アクセシビリティが向上しているからこそ、報告が減っているのでしょう。

矢田部佑己主事  
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報告された問題は、すぐにWebを管理する委託先企業に伝えられ、修正されます。修正作業を行っているのは作業所に所属している障がいのある人たち。
「このシステムは、障がいのある人たちにも使いやすいWebづくりに加えて、障がいのある人たちの雇用確保の役割も担っており、皆さん、ICTに関わる仕事ができてうれしい、と喜ばれています。もともと、このWebに関しては“使う人にも、作る人にも負担をかけない”という考えがあったので、作る人=障がいのある人たちからも賛同してもらえるのは、本当にうれしいことです」と総務部情報政策課の田中健一課長(写真下)は、笑顔で語ってくださいました。使う人、作る人、お互いがWin-Winの関係を作れる…「ウェブアクセシビリティ向上システム」には、そんなメリットもあるのです。

田中健一課長  
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●さらなるウェブアクセシビリティ向上をめざして、改良を続ける
鳥取県は、2010年に改正されたウェブアクセシビリティに関する日本工業規格JISX8341-3:2010(改正WEB-JIS)に基づき、目標とするウェブアクセシビリティ方針を策定し、公開してきました。具体的には、鳥取県公式ホームページ(http://www.pref.tottori.lg.jp/で始まるサイト)のうちトップページから第4階層目までを、日本工業規格JISX8341-3:2010「高齢者・障害者等配慮設計指針-第3部:コンテンツ」の等級Aに準拠、等級AAに一部準拠することを目標に改良やリニューアルを続けています。

●インパクトのあるWebよりも、きちんと使ってもらえるWebを作る
より多くのアクセス数を求めて、インパクトのあるWebがたくさん作られています。その結果、デザインを重視し過ぎて、高齢者や障がいのある人のアクセシビリティへの配慮に欠けるようなWebも少なくありません。Webは情報を提供するツールのひとつ。アクセスする方の年齢や心身の条件に関わらず、正確に伝わるようにする必要があります。インパクトよりも伝達力なのです。
「確かに、『とりネット』は、デザイン的なインパクトは弱いかもしれませんが、バリアのない閲覧ができるように工夫を凝らしています。派手ではありませんが、必要な情報をより多くの人たちに伝えるということで役に立っていると考えています」と、元気づくり総本部広報課の河﨑秀幸係長(写真下)は、きっぱり。

河さき秀幸係長  
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「とりネット」は、レイアウト変更をほとんどしないWebだそうです。“いつも新鮮なビジュアルを提供する”というWebの少なからぬ流れとは、方向性を逆にしています。これは、「本当にいいものは、変わらない」という考えが根底にあるからだそうです。いつか「不変が普遍になる」ことでしょう。

「とりネット」のバックボーンにあるのは、鳥取県の人権施策

優れたウェブアクセシビリティで、様々なところから高い評価を得ている「とりネット」。その誕生の背景には、鳥取県の先進的な人権施策があります。
1996年に、鳥取県は全国に先駆けて「鳥取県人権尊重の社会づくり条例」を制定しました。それに基づいて翌1997年に鳥取県人権施策基本方針(以下「基本方針」)を策定し、「同和問題」「女性に関する人権問題」「障がいのある人の人権問題」「子どもの人権問題」「高齢者の人権問題」「外国人の人権問題」「病気にかかわる人の人権問題」「個人プライバシーの保護」という8分野の人権問題を掲げました。社会情勢や各種制度、県民意識の変化へ対応するために、2004年に第1次改訂を、そして2010年には第2次改訂を実施しています。第2次改訂では、新たに「刑を終えて出所した人の人権問題」「犯罪被害者等の人権問題」「性的マイノリティの人権問題」「非正規雇用等による生活困難者の人権問題」「インターネットにおける人権問題」が取り上げられました。
鳥取県の人権施策の基本姿勢は、「お互いの人権が尊重され、誇りをもって生きることができる差別と偏見のない社会」をめざし、基本理念として「(1)一人ひとりが自己決定権に基づいて個性と能力を発揮(自己実現)する公平な機会が保障された社会の構築」「(2)人権侵害、差別をもたらす社会的要因の解消と一人ひとりの人権尊重意識の高揚」「(3)すべての人の尊厳と社会参加が保障され、等しく社会の一員として尊重される社会の基礎的な条件の整備の推進(ユニバーサルデザインの推進)」を掲げ、それに基づく様々な施策が総合的に展開されています。
「鳥取県人権尊重の社会づくり条例」の前文にはこう書かれています。

すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であり、人間として尊重され、基本的人権の享有が保障されなければならない。これは、人類普遍の原理であり、自由と正義と平和の基礎であり、かつ、法の下の平等及び基本的人権の保障を定めた日本国憲法の精神にかなうものである。
この理念の下に、お互いの人権が尊重され、誇りをもって生きることができる差別と偏見のない社会が実現されなければならない。
ここに、我々鳥取県に暮らすすべての者は、豊かな自然に抱かれ、歴史と文化を育んできたふるさと鳥取の地で、共に力を合わせてこの使命を達成することを決意し、真に人権が尊重される社会とするため、この条例を制定する。

この条例が定められている鳥取県では、人権に対する県民意識や、県民が求めている施策の方向性などを把握するために、県民に定期的に「人権意識調査」を行っています。それらの結果を参考に、様々な分野の人権問題について活動を行っており、県内で活動する団体が自ら企画し、県事業担当課などと協働して実施する人権啓発事業「県民企画による人権啓発活動」や後に登場する「情報アクセス・コミュニケーション研究会」などが実施されています。そして、「とりネット」もその一環。いわば、「とりネット」は、鳥取県の人権施策という木に咲いた一輪の花といえるでしょう。

これからは「ユニバーサルデザイン」への取り組みに注力

全国に先駆けて人権に関する条例を制定した鳥取県。人権に関わる様々な具体的活動を推進する中、これからはウェブアクセシビリティを含めた「ユニバーサルデザイン」(以下、固有名称以外はUD)の領域に、特に力を注いでいくそうです。たとえば、基本方針の第3次改訂が進められていますが、新しい領域に「UD」が盛り込まれる予定になっているようです。
「きっかけは、2002年に開催された『第17回国民文化祭・とっとり2002』でした。開催後、会場の段差が使いにくかったという声があり、県の各課にいる人権職場研修推進員が、イベントなどを実施する施設などについて人権尊重の視点からの一斉調査を行いました。そこでわかったのが、段差などのバリアの多さや公共サインの不備などがたくさんあるということでした。これをきっかけに翌年度から2年にわたって職員に対するUD理念の普及啓発研修を実施し、2005年に“とっとりユニバーサルデザイン推進事業”を事業化したんです」と、総務部人権局人権・同和対策課の石田重幸さん(写真下)は語ってくださいました。

石田重幸さん  
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●「ユニバーサルデザイン出前講座」など、啓発・浸透を図る企画を実施
UDとは、年齢や性別、障がいのあるなしに関わらず、すべての人ができる限り快適に利用できるように製品や環境をデザインすることです。その根本にある考え方は「より暮らしやすい社会をめざして工夫していく」ということです。そこで県では、希望される場所に出かけてUDをわかりやすく説明する「ユニバーサルデザイン出前講座」を実施しています。この講座ではUDの概念やバリアフリーとの違い、身近な事例、カラーUD、心のUDなどの説明とともにUD製品の展示や体験などを行っています。
また、県内の小中高校でも「ユニバーサルデザイン出前授業」が積極的に実施されています。2009年度は8校での実施でしたが、今年度は30校まで広がっています。
この啓発活動では、UD製品の展示をはじめ、時にはUD概念や最新の動向などのレクチャーも行っているそうです。このように、鳥取県では、「より暮らしやすい社会をめざして工夫していく」=「UD」が推進されているのです。

小学校でのユニバーサルデザイン出前授業の風景1 小学校でのユニバーサルデザイン出前授業の風景2
(左右とも)小学校でのユニバーサルデザイン出前授業の風景
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ユニバーサルデザイン出前授業を受けた子どもたちの感想文 ノートに描かれたUD製品のアイデア  
ユニバーサルデザイン出前授業を受けた子どもたちの感想文とノートに描かれたUD製品のアイデア
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さらに鳥取県では、UDの概念やバリアフリーとの違い、製品情報、県の取り組み例などを掲載した「ユニバーサルデザインガイドブック」を制作。また、特定非営利活動法人 カラーユニバーサルデザイン機構の監修・資料提供による「カラーユニバーサルデザインガイドブック」では、カラーUDの概要や色覚の仕組み、色弱の人の見え方、カラーUD実施例などを掲載、カラーUDのことがよくわかると、県内外からたくさんの問い合わせがあるそうです。
「カラーユニバーサルデザインガイドブック」の中に掲載されている興味深いアプリをご紹介しましょう。それは、医学博士・メディアデザイン学博士の浅田一憲氏が開発され、無償で配布されている「色のシミュレータ」。スマートフォンやタブレット、パソコンなどの内蔵カメラの画像を色弱の人が見ている色世界に変換してくれる色覚シミュレーションツールです。iPhone、Andoroid、コンピューターのブラウザなどに対応しています。ぜひ、カラーUDの大切さを実感してみてください。
http://asada.tukusi.ne.jp/cvsimulator/j/

(左)『ユニバーサルデザインガイドブック』(右)『カラーユニバーサルデザインガイドブック』  
(左)『ユニバーサルデザインガイドブック』
(右)『カラーユニバーサルデザインガイドブック』
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●障がい者の生の声を施策に活かす「情報アクセス・コミュニケーション研究会」
2014年からスタートしている「情報アクセス・コミュニケーション研究会」は、2015年7月に第3回が行われ、鳥取県の情報アクセス・コミュニケーションに関する取り組みや障害者差別解消法施行に向けての意見交換が行われました。その日の出席者は、鳥取県視覚障害者福祉協会や鳥取県聴覚障害者協会、人工内耳友の会鳥取支部、鳥取県清音会、鳥取盲ろう者友の会の方々と県の関連部署の担当の方々。
ひと口に「障がい」といっても、視覚・聴覚・音声機能など、様々な形態があります。それにともないコミュニケーション手段も千差万別。情報アクセスやコミュニケーションに困難を抱える当事者の方からのご意見、ご要望を直接お聞きするためにスタートした研究会です。研究会の中でいただいたご意見をもとに、県内に70名ほどいらっしゃると推測される、支援に結びついていない盲ろう者(鳥取盲ろう者友の会を通じて県の支援を受けておられる方はわずか7名)を対象に訪問して支援につなげる専門職員「盲ろう者支援コーディネーター」を採用するなどの成果を出しています。
「“皆が困らない社会をつくろう!”という意気込みで、参加者全員が前向きに取り組んでいます」と期待を語るのは福祉保健部障がい福祉課社会参加推進室の岡村弘美課長補佐(写真下)。県庁一体となって、障がいのある人が暮らしやすい地域社会づくりを進めていきたいと夢を語ってくださいました。

岡村弘美課長補佐  
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夢は「UD立県」。鳥取県のチャレンジは、これからも続く

「とりネット」がきっかけで訪問した鳥取県庁でしたが、その根底にある人権施策、そして様々な具体的な取り組みを伺い、「鳥取県は人権に関する巨大な氷山」だと感じました。「とりネット」という見えるところだけではなく、もっと深いところに、もっと大きなものがあることを実感しました。そこには、条例の前文にある「すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であり、人間として尊重され、基本的人権の享有が保障されなければならない」という思いがひしひしと感じられました。
2013年に全国初の「手話言語条例」を制定し、県庁の総合窓口でも、タブレット端末を用いた手話による案内サービスを行い、また2014年からは「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」を開催するなど、手話の普及に関しても県ぐるみで取り組んでおられます。まさに、すべての人が暮らしやすい町づくりが実践されているようです。
「夢は“UD立県”ですね。誰もが快適に暮らせる県にできるように、チャレンジし続けていきたいものですね」
という河﨑係長の言葉に、鳥取県の今後の展開にさらなる期待を膨らませつつ、県庁を後にしました。

編集後記

鳥取県庁の1階ロビーの片隅に漫画家・水木しげる先生のキャラクターのひとつ「ぬりかべ」の巨大なフィギュアが飾られていました。イベントの際に制作されて、縁があって、ここに鎮座されているとのことでした。
現代では、人の暮らしや心に余裕がなくなったせいなのか、とかく妖怪が住みにくい世の中になった……と水木先生は嘆きの言葉を吐露されているようですが、人権施策を推進している鳥取県なら、きっと、彼らも住みやすいんだろうな……と思えた取材でした。

「ぬりかべ」の巨大フィギュア  
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-概要-
鳥取県庁
所在地:〒680-8570 鳥取県鳥取市東町1丁目220
「とりネット」:http://www.pref.tottori.lg.jp
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