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【ICTレポート】第16回 神戸デジタル・ラボが挑戦するウェアラブルアプリケーション「WearAssist(ウェアシスト)」

注目のウェアラブルを、日常生活のバリアフリー化に活用することをめざして。

メガネ型ウェアラブルデバイスの一種  
メガネ型ウェアラブルデバイスの一種
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この数年、ICTの世界で画期的な出来事が起こりました。“Google Glass(グーグルグラス)”などのスマートグラス(メガネ型デバイス)や“Apple Watch(アップルウォッチ)”といったスマートウォッチなど、身につけて使用するデジタル端末、いわゆる“ウェアラブルデバイス”が相次いで発表されたのです。世間は、ICTの新しい市場として注目し始めました。また、ウェアラブルデバイスは、ハンズフリーやコミュニケーション・サポートといった機能を持つことから、福祉や介護の分野での活躍も期待されています。
そして、今年2015年は、“ウェアラブル元年”ともいわれ、指輪やペンダントなどのアクセサリータイプや衣服に埋め込むタイプなど、様々な形態のウェアラブルデバイスが登場し、注目を集めています。しかし、ウェアラブルデバイスの進化は始まったばかり。その機能や能力を十二分に発揮させるアプリケーションの開発は、発展途上の状態にあります。
そんな中、いち早くアプリケーションに着目し、研究・開発に取り組んでいる企業があります。それが、神戸に本拠を置く株式会社神戸デジタル・ラボ。“日常生活のピンチからあなたを守る”をコンセプトに、福祉・介護に比重を置いたアプリケーション「WearAssist(以下、ウェアシスト)」の開発を2014年からスタートさせています。
今回のICTレポートは、神戸デジタル・ラボの開発担当者である先端技術開発事業部ウェアラブル技術開発チームリーダーのボーロン アントワーヌさんに「ウェアシスト」開発の背景や実態、将来の可能性などについて伺いました。

フランス生まれ京都在住のボーロン アントワーヌさん  
フランス生まれ京都在住のボーロン アントワーヌさん
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日常生活で活躍するウェアラブルをめざした「ウェアシスト」

昭和30~40年代、当時の子どもたちは円谷プロが制作した「ウルトラシリーズ」に心ときめかせました。その中で多くの子どもたちが憧れて止まなかったのが、胸のペンダント型の通信機と腕時計型の映像通信機でした。また、大人たちも映画「007シリーズ」に登場する腕時計型や指輪型の先進ツールに魅せられていました。それらは、まさに今で言うところの“ウェアラブルデバイス”。あのころの夢は、今、現実のものになろうとしています。その推進に大きく貢献するであろうアプリケーションが、今回ご紹介する「ウェアシスト」なのです。

●2015年1月「第1回ウェアラブルEXPO」でデビュー
ウェアラブルアプリケーション「ウェアシスト」は、2015年1月14日から16日までの3日間、東京ビッグサイトで開催された「第1回ウェアラブルEXPO~装着型デバイス技術展~」で堂々のデビューを果たしました。ウェアラブルデバイスは、2015年中に世界市場の規模が1億台を突破するという予測もあり、最近はブームといえるほど、この分野に対するビジネスの可能性が注目されていますが、まだまだデバイス(機器)への関心に留まっています。そんな中、アプリケーションである「ウェアシスト」は、小さなブースでの出展ながら、多くの来訪者で賑わったそうです。

「第1回ウェアラブルEXPO」出展の様子  
「第1回ウェアラブルEXPO」出展の様子
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●「ウェアシスト」のコンセプトは、“日常生活のピンチからあなたを守る”
現在、ウェアラブルデバイスが力を発揮できる分野として注目されているのは、ヘルスケアの分野。その理由は、デバイスを身につけること(ウェアラブル)で、利用者のバイオデータ(血圧・心拍数・体温・歩行数・消費エネルギーなど)を常時測定することが可能となり、健康の維持や管理が容易になるからです。そんな中、「ウェアシスト」は、さらに踏み込んで、日常生活の中で起こる様々な危険や不便、ハンディキャップを感じるシチュエーション(健康状態・コミュニケーション・障がいなど)を解消することをめざしています。つまり、「ウェアシスト」は、日常生活を取り巻く様々な障壁を減らし(バリアフリー化)、誰もが快適で安全な暮らしができるようにサポートする、身近なアシスタントとなるウェアラブルアプリケーションなのです。

●「ウェアシスト」が実現する5つの機能
これまで神戸デジタル・ラボが外部機関との連携で培ってきた「オープンデータ」「音声認識技術」「翻訳技術」「画像認識技術」「位置情報」「バーチャルリアリティ」といった6つのICT技術(※)を駆使して誕生させた「ウェアシスト」。このアプリケーションが実現する5つの機能は……

※6つのICT技術について:「オープンデータ」「画像認識技術」「位置情報」は神戸デジタル・ラボにて様々な分野の技術を組み合わせたもの。「音声認識技術」「翻訳技術」はNICT(国立研究開発法人 情報通信研究機構 *第7回、第15回ICTレポートで取材)開発の、「バーチャルリアリティ」はシンガポールのRAPTECH PTE.LTD.提供の技術。

6つのICT技術とウェアラブルデバイスイメージ  
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①メニュー認識
メガネ型デバイスを使って、画面に表示された料理メニューの文字情報から塩分量やカロリー値、アレルゲン情報などを取得できます。メニューの英語への翻訳も可能です。
使用されているIT技術:[画像認識技術][翻訳技術][オープンデータ]

メニュー認識  
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②デバイス連携安否確認
認知症の方の徘徊や子どもの迷子を知らせる用途などを想定。時計型デバイスを身につけた人の位置情報が一定以上の距離になると、メガネ型デバイスにアラート表示で知らせます。
使用されているIT技術:[位置情報]

デバイス連携安否確認  
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③方向・方角認識案内
メガネ型デバイスを通して周囲を見ると、その方向にある宿泊施設や観光スポット、公共交通機関などの案内を表示。バリアフリー対応の施設情報も取得できます。
使用されているIT技術:[位置情報][オープンデータ]

方向・方角認識案内  
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④施設内表示VR(バーチャルリアリティ)
メガネ型デバイスを通して、施設内をバーチャル映像で再現し、施設内の環境を事前に確認することができます。
使用されているIT技術:[バーチャルリアリティ]
*RAPTECH PTE.LTD.(シンガポール)が技術提供しています。

施設内表示VR(バーチャルリアリティ)  
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⑤同時通訳
メガネ型デバイスを使った「ウェアシスト」同士なら、違う言語を使う人であっても同時通訳でコミュニケーションを取ることができるようになります。 
使用されているIT技術:[音声認識技術][翻訳技術]
*NICTの音声翻訳ライブラリを使用しています。

同時通訳  
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●開発担当者に聞く「ウェアシスト」開発の経緯と現状、課題
ウェアラブルが実現する5つの機能の活用をめざす「ウェアシスト」。その開発の経緯と現状、課題を開発担当者のアントワーヌさんに伺いました。

編集部:どんな経緯で開発はスタートしたのですか?
アントワーヌ:以前からウェアラブルは、ICTの世界で話題になっていました。でも、それはデバイス中心で、かつヘルスケアやゲーム中心の用途での話題でした。そこで私たちが考えたことは、日常にある障壁(バリア)を減らすためにウェアラブルを活用できないか、ということでした。たとえば知らない言語で話しかけられても理解できませんね。これはある意味、言語がその人のバリアになっているということです。使い方がわからないデバイスを前にしたら使えませんね。こういったバリアを抑えることで、誰もがデバイスなどを使いやすい環境をつくる……それをサポートするためにウェアラブルデバイスを活用したいと考えて、「ウェアシスト」の開発をスタートさせました。
編集部:今、「ウェアシスト」は、どんな発展段階にありますか。
アントワーヌ:「ウェアシスト」は、まだ生まれたばかりです。そもそもウェアラブル自体がまったく新しいテクノロジーなので、すべてが手探りの状態と言ってもいいでしょう。そんな中で、常に試行錯誤を繰り返して研究・開発を進めています。機能・性能において、まだまだ発展の余地がたくさんあります。デバイスの進化も日進月歩で、すべてが発展途上なのです。逆に言うと、それだけ多くの可能性を秘めているということです。生まれたばかりの赤ちゃんのような、計りしれない可能性を持っている段階だと言っていいのではないでしょうか。
編集部:これからの課題についてお話しいただけますか?
アントワーヌ:まず、もっとデバイスの操作をシンプルにしなければなりません。スマートフォンくらいの簡単な操作ができるようになれば、より多くの人たちが使いこなせるようになりますから。それと汎用性を持たせることも大切です。今は、デバイスごとに操作や機能がバラバラになっていますが、それを統合する方向に進めることで、使いやすさはもっと進化するでしょう。あと、データベースとの連携も重要視しています。これから先、どれだけのデータがオープン化されていくのか、それに期待を寄せています。より多くのデータがオープン化されれば、アプリケーションの精度を上げることができますから。そして、一番大切なことは、やはりデバイスの進化・浸透ですね。デバイスとアプリケーションはテクノロジーの両輪ですから、どちらもバランス良く発展していかなければ、一般化することはできません。

メガネ型デバイスを装着し、夢を語るアントワーヌさん  
メガネ型デバイスを装着し、夢を語るアントワーヌさん
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編集部:「ウェアシスト」の現時点での目標を教えてください。
アントワーヌ:まずは、5つの機能のうち、今年中にひとつでも実用化することです。データベースとの連携や通信精度の水準など超えなければならないハードルがいっぱいありますが、現状で、実用化の可能性が高いのは「同時通訳」だと考えています。この機能を実用化することが、ひとつの突破口になると思っています。実用化できれば、それを磨き、練っていき、残りの機能の実用化につなげていくことができるはずです。私は、障がいのある人向け、健常者向け、と分けるのではなく、誰もが何でも簡単にできるようになるアプリの開発をめざしていますので、まずは、子どもを育てるように、じっくり、確実に、きめ細かく進めていきたいと思っています。

介護現場を支えるアプリケーション開発の実績を持つ神戸デジタル・ラボ

これまで、神戸デジタル・ラボは、介護事業者向けのアプリケ―ション開発をいくつか行ってきました。iPadを使ってケアの記録が簡単に入力でき、日々の業務負担の軽減や効率化を支援する「ケア記録アプリ」、入所時にiPhoneやiPadのカメラを使って持ち物を撮影するだけで、その場で簡単に持ち物リストが作れ、退所時に写真と照合するだけで正確に持ち物のチェックができる、短期入所療養介護(ショートステイ)施設向けの「持ち物チェックアプリ」を世に送り出してきた実績があります。いずれも介護職員など現場の声を基にして開発されました。これらの介護アプリケーションのウェアラブル化も検討中だそうです。
これらの実績を基に、「ウェアシスト」も将来、高齢者、障がいのある人のピンチを防ぐためのみならず、介護する側の人たちを補助するためのアプリケーションとして活用されることが期待されます。

ケア記録アプリ フライヤー 持ち物チェックアプリ フライヤー  
(左)ケア記録アプリ フライヤー
(右)持ち物チェックアプリ フライヤー
*クリックするとPDFが開きます。

様々な実証実験が行われはじめているウェアラブル

現在、様々なところで、ウェアラブルの可能性を試すべく実証実験が始まっています。ある日本の航空会社では、ホノルル空港での機体整備業務にメガネ型デバイスを導入し、ハンズフリーで機体チェックを行うと同時に、日本国内のサポートチームと視点の共有を実現。効率的で確実な整備業務を実施しています。また、この航空会社では、羽田空港の搭乗ゲートで勤務する地上スタッフが時計型デバイスを装着。スタッフの位置把握と業務指示やコミュニケーションの効率化を検証しています。これらのハンズフリー化やコミュニケーション支援は、航空会社のみならず、様々なサービス業に応用できるもの。これからの活躍が期待されています。
まだまだ、市場形成がはじまったばかりのウェアラブル。一般生活者へ爆発的に普及するのはもうしばらく先のことでしょう。まだ見ぬ未来に向け、これらの実証実験を踏まえて、ウェアラブルデバイスやウェアラブルアプリケーションは、ますます進化していくことでしょう。そして、より身近なものとして、あらゆる人の、あらゆる日常のバリアをとりのぞいてくれる存在に育っていくことでしょう。

編集後記

京都大学やけいはんな学研都市の研究機関に常駐して、研究に没頭してきたというアントワーヌさん。フランス生まれというのに、とても流暢な日本語でお話ししてくださいました。世の中にあるバリアを少しでも減らしたい、という思いで研究・開発に取り組んでおられるそうです。国境を越え、人種を超えたところで、ICTは進化していくんだな、ということを実感した取材でした。
ウェアラブルはまだ生まれたばかり。その産声を聞きながら、彼らは、やさしく、時には厳しくウェアラブルを育てていってくれるのでしょう。私たちが幼いころ、思い描いた夢の未来世界を、彼らの開発するウェアラブルが現実のものにしてくれるのも、そう遠い日ではない、と確信しました。

-概要-
株式会社 神戸デジタル・ラボ
株式会社 神戸デジタル・ラボ
〒650-0034
兵庫県神戸市中央区京町72番地 新クレセントビル
TEL:.078-335-2280(代表) 
FAX:078-327-2278
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