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【ICTレポート】第14回 香川県小豆島町の「オリーブヘルスケアシステム」

ICTを活用して町民の健康意識をアップ。健康寿命を延ばす。

テレビ電話を通して健康相談・保健指導を受ける利用者  
テレビ電話を通して健康相談・保健指導を受ける利用者
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内閣府の「平成26年版高齢社会白書」によると、わが国の65歳以上の高齢者人口は、過去最高の3,190万人(2014年10月1日時点)で、総人口に占める高齢者の比率は25.1%になっています。超高齢社会は、すでに私たちの問題として今そこにあるのです。
超高齢社会の問題は、離島ではさらに深刻なものになっています。今回、ご紹介する小豆島町においても例外ではありません。少子高齢化と人口減少により、65歳以上の高齢化率は、香川県下でもっとも高く、2014年で約38%です。そう遠くない将来、おおよそ2人にひとりが高齢者という社会を迎えると予想されています。このまま高齢者の割合が増え続けると、医療費・介護給付費の増化が懸念されています。
このような状況の中、小豆島町では、高齢者が楽しく健康づくりに取り組むとともに、医療費・介護給付費の増加を抑制するため、2012年11月から65歳以上の高齢者を対象として、ICTを活用した「オリーブヘルスケアシステム」を導入。健康データの蓄積やテレビ電話を使った健康相談を実施することで、町民の健康寿命の延伸に努めています。
今回のICTレポートでは、小豆島町高齢者福祉課・係長の山下善範さんと地域包括支援センターの保健師である藤本奈保子さんに「オリーブヘルスケアシステム」導入の目的や経緯、今後の展望などについてお伺いしました。超高齢社会を迎える、これからの日本の社会づくりのお手本になるようなお話をたくさん聴くことができました。

保健師の藤本奈保子さん 係長の山下善範さん  
(左)保健師の藤本奈保子さん
(右)係長の山下善範さん
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ICTの活用で、健康寿命を延ばす

編集部:「オリーブヘルスケアシステム」は、どういう経緯で導入されたのでしょうか?
山下:小豆島町は、面積95.63㎢、人口1万4,962人、世帯数6,582世帯(2015年6月1日現在)、瀬戸内海国立公園に浮かぶ小豆島の中央から東に位置する海と山が美しい町で、日本のオリーブ発祥の地として知られています。壷井栄の小説を基にした映画「二十四の瞳」の舞台であることでも有名です。

香川県小豆島町ホームページ「小豆島町オリーブヘルスケアシステム(ひかり健康相談)」より  
香川県小豆島町ホームページ「小豆島町オリーブヘルスケアシステム(ひかり健康相談)」より
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同時に、高齢化率38.6%(2014年実績値)と日本の平均よりも先を進む超高齢社会の町でもあります。そのような状況の中、将来、医療費や介護給付費など社会保障費が増え、町の財政を圧迫することが予測されていました。
小豆島町では、町民一人ひとりの健康づくりを促進し、「健康寿命」(※1)を延ばすことで、医療や介護に関わる費用を抑制し、費用の重点化・効率化をめざしたのです。

※1 健康寿命:「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を意味する。2000年にWHO(世界保健機関)により提唱された。

「第6期 小豆島町介護保険事業計画・老人福祉計画」より  
「第6期 小豆島町介護保険事業計画・老人福祉計画」より
健康寿命を延ばすことをめざして「オリーブヘルスケアシステム」が導入された
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当時、住民からの回線高速化の要望と、町内や周辺自治体との情報通信格差解消を目的に、光ファイバーによる町内全域への超高速通信網の整備が計画されていました。その計画に乗せるかたちで、ICTを活用した健康づくりをめざす取り組み「オリーブヘルスケアシステム」の事業化をめざしました。そして、2012年11月28日に、このシステムをスタートさせたのです。
編集部:具体的には、どんなシステムなのですか?
山下:「オリーブヘルスケアシステム」は、NTT西日本の「フレッツフォン(情報端末)」、「フレッツ 光ネクスト(インターネット接続サービス)」とNTTスマートコネクトのクラウド型健康相談サービス「ひかり健康相談」を活用し導入したもので、まず登録された町内の65歳以上の高齢者に歩数計を配布。公民館に設置されたテレビ電話を通して、血圧や体重、日々の歩数などの健康データをサーバに登録し管理するとともに、それらの登録データを見ながら保健師がテレビ電話を使って、フェイス・ツー・フェイスの健康相談・保健指導を行っています。初年度は、草壁公民館と福田公民館の2カ所にシステムを設置しました。翌年の2013年には、安田、苗羽、池田、二生の4カ所の公民館に導入。そして2014年度には、西村、坂手、橘、蒲生、三都の5カ所の公民館にも設置し、すべての公民館でシステムを運用しています。

楽しみながら、町民の「健康への意識」が育っている

編集部:システムの運用が始まって2年半余りが経ちましたが、これまでの成果や苦労に関してお聞かせ願えますか?
藤本:スタートしたばかりのころは、なかなか人が集まらず、町の広報誌での募集のほか、老人クラブやグラウンドゴルフの会場など現場に出向いて事業の紹介をしました。直接、お声かけすると、多くの方が登録してくださいましたね。現在は男性55名、女性55名の方々がシステムを利用されています(2015年6月16日現在)。
保健師として、このシステムに関わる中で一番うれしいのは、利用者の方一人ひとりの健康意識がとても高くなっていることですね。システムの利用をやめていかれる方もいますが、「健康づくりの習慣が身についたから」という理由がほとんど、まるで「卒業」するような感じですね。
利用者の方には、配布した歩数計で、毎日の歩数を管理してもらっています。そして、15日に1回以上、公民館に来ていただいて血圧や体重などの体組成をチェックしてもらい、歩数計のデータと一緒に登録してもらっています。機械の操作がちょっと苦手、という方でも「認知症の予防になるから」と楽しみながら使っていただいています。特に歩数計の影響は大きくて、「これを持っていると、歩かなければ……と思って、がんばって歩いてしまう」と話してくださる方が多いんです。歩くことが習慣になって、血圧が下がり、内服薬が減った、という方もいらっしゃいます。こういう事例を見ていると、確実にこのシステムは成果をあげているな、と感じます。

システム運営状況(現在は、11公民館で運営中)  
システム運営状況(現在は、11公民館で運営中)
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公民館に設置されたテレビ電話(フレッツフォン)のモニター 登録者に配布される歩数計
(左)公民館に設置されたテレビ電話(フレッツフォン)のモニター
(右)登録者に配布される歩数計
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公民館に置かれた体組成計 同じく血圧計
(左)公民館に置かれた体組成計 (右)同じく血圧計
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編集部:テレビ電話を使った遠隔健康相談・保健指導が、このシステムの魅力のひとつだと思いますが、実際に活用されて、どう感じていらっしゃいますか?
藤本:テレビ電話での遠隔健康相談・保健指導は、一人あたり月に1回、予約制で行っています。1回の時間は、15分くらいです。睡眠時間や食事、運動のことなどを、日常生活の様子を聞くかたちで伺っています。この会話の中に、健康に関するヒントがいっぱいあるんですよ。たとえば、「最近どこへ行きましたか?」と尋ねたら「どこどこへ行った」と答えてくださいますね。それだけでも、足腰の状態や外出の頻度などの情報を得ることができるんです。相談の記録を取っているので、長年システムを使い続けている方なら、変化を知ることもできます。それを参照しながら介護予防教室への参加を促したり、先手の対応ができるのもテレビ電話のおかげですね。利用者の方には独り暮らしの方もいらっしゃって、テレビ電話での会話を楽しみにしてくださっている人もいます。そういう意味では、体の健康づくりはもちろん、心の健康づくりにも役に立っているな、と思っています。
編集部:「健康づくり」に関して、ICTは大いに役立っているでしょうか?
藤本:今、高齢者福祉課ではふたりの保健師が、町内の5,000人以上の高齢者の方と関わっていますが、一人ひとりに合った「健康づくり」を提案できたらいいな、と考えています。そのためにも、ICTで得たデータをもっと有効に活用していきたいと思っています。

■実際に利用されている方の声を聞いてみました

ここでは、実際に「オリーブヘルスケアシステム」を活用されている利用者の方々の声を聞いてみました。

2012年のシステム発足時からの利用者 西長次子さん(68歳)  
2012年のシステム発足時からの利用者
西長次子さん(68歳)
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友だちといっしょに、楽しく「健康づくり」に励んでいます。

西長さんは月に2回、健康データを登録するために草壁公民館を訪れます。それが何よりの楽しみ。登録を済ませたら、仲よしの利用者4人でテーブルを囲み、大好きな韓流タレントや健康のことなどについてワイワイガヤガヤ話して、楽しいひとときを過ごすそうです。
「機械の操作はちょっと難しいけれど、皆で教え合いながらだと何とかなるものです」
4年ほど前に退職したとき77㎏あった体重が、今では67㎏に。このダイエットが成功したのもシステムを利用していたからだそうです。昔は、会社で年に1度の健康診断を受けるくらいだったのが、毎日の歩数を数えたり、定期的に血圧や体重などを測るうちに、健康意識が高まっていったのです。
藤本さんから管理栄養士の方を紹介してもらって、今では食事のカロリー計算もできるようになりました。
「健康づくりの努力ができるようになり、成果を出すこともできました。これからも、ずっと利用していきたいと思っています」
と、明るく笑う西長さんでした。何より、心の健康を手に入れられていると感じました。

元ホテルマンの河原伸行さん(76歳)  
元ホテルマンの河原伸行さん(76歳)
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歳相応に無理をせず、健康の自己管理に活用しています。

河原さんは、友人に誘われて2014年3月からシステムを利用されています。以前から健康への意識は高く、3カ月に1回の血液検査など定期的に受診をされていました。このシステムを利用し、歩数計を持つことで、「歩かなければ」という意識が強くなったといいます。
「1日1万歩を目標に歩いていたんですが、少し体を壊して考え方が変わりました。今では、鍛えるという発想から、バランスを整えるという考えで歩くようにしています。股関節や膝、ふくらはぎなどに痛みを感じたら、すぐにゆっくり歩くようにしているんです。歩数も1日6,000歩を目標にしています」
散歩に出かけて歩数計を携帯するのを忘れたときには、慌てて家に戻って、歩数計を持って散歩をやり直すほどの熱心さ。
「とにかく結果が出るのが楽しいし、励みになりますね。以前は、出かける際に車や自転車を使うことが多かったのが、今では、ほとんど歩いていくようにしています」
システムのおかげで、歳相応の無理のない健康づくりができるようになったのが、何よりの成果だ、と旅やグラウンドゴルフで、人生を謳歌されている河原さんは話してくださいました。

さらに、使いやすく、役に立つシステムをめざして

編集部:これからの「オリーブヘルスケアシステム」の展望をお聞かせください。
山下:2014年に11カ所すべての公民館へのシステムの導入が完了しました。これで全町体制でシステム運用が可能になりました。
そこで、今年、2015年には、機能の拡充を実施する予定です。そのひとつが、日々の消費カロリーや速い・遅いなどの歩行状態も認識できる「活動量計」の導入。これで、一人ひとりの健康データをより詳しく知ることができるようになります。もうひとつが、「タブレット端末」の設置です。このデバイスを使って、認知症予防のための脳トレソフトを提供しようと考えています。
また、瀬戸内国際芸術祭2013(※2)の出品作品として作られた馬木キャンプでは、年齢制限を設けない「オリーブヘルスケアシステム」の社会実験を行っています。テレビ電話での相談は実施していませんが、2カ月に1度、保健師が体操教室などを開催し、世代を問わず健康づくり、健康意識向上に努めています。

※2 瀬戸内国際芸術祭:瀬戸内海の島々を舞台に3年に一度開催される現代アートの国際芸術祭。2010年に第1回が開催された。

ICTへの期待を熱く語る山下さんと藤本さん  
ICTへの期待を熱く語る山下さんと藤本さん
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編集部:最後に、これからICTに、どんな期待を寄せていらっしゃいますか?
藤本:ICTは、町民の健康意識の向上にとても役立っていると思います。でも、まだまだ、「誰にも使いやすい」とは言えないと思うので、高齢者や障がいのある方でも利用しやすいICTになってもらいたいです。とはいうものの、より多くの方々に、効率良く健康相談ができるようになったのは、ICTのおかげです。だからこそ、もっともっと、役に立つICTになってほしいと思っています。

-編集後記-

今回の取材では、ICTが「情報コミュニケーション技術」であることを改めて実感しました。話を伺っている中で、山下さん、藤本さんは、高齢者の方々への温かな気持ちを最大限に伝えるために、上手にICTを活用されているなと感じました。
技術は、それだけで機能するのではなく、それを使いこなすことができる人がいてこそ、その実力を発揮することができます。人がいてこそのICTなのです。その事実が、瀬戸内海の島で実証されていました。その現場に立てたことが、何よりの喜びです。
これからもICTが、健康寿命を延ばせるキーファクターになれるように、知恵・工夫・経験を積んでいきたいものです。皆さん、ありがとうございました。

くつろげる空間の中で健康相談  
くつろげる空間の中で健康相談
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-概要-
小豆島町高齢者福祉課
〒761-4492
香川県小豆郡小豆島町安田甲144番地90
TEL:0879-82-7006  
ホームページ:http://www.town.shodoshima.lg.jp/index.html

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