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【ICTレポート】第13回 社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団 兵庫県立リハビリテーション中央病院 「ロボットリハビリテーションセンター」後編

現場のニーズに基づいたロボット技術を、リハビリテーションに導入。障がいのある人のQOL向上に貢献。

「ロボットリハビリテーションセンター」の陳隆明センター長  
「ロボットリハビリテーションセンター」の陳隆明センター長
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最先端の医療として、国内外で取り組みが進んでいるロボット医療。前回は、リハビリテーション(以下リハビリ)にロボットテクノロジー(以下RT)を導入して、四肢欠損など身体に障がいのある人のQOL向上に貢献している兵庫県立リハビリテーション中央病院の「ロボットリハビリテーションセンター」の概要をご紹介しました。
今回は、陳隆明センター長をはじめ、療法士、工学研究者、患者さんなど、「ロボットリハビリテーションセンター」を実際に動かしている現場の方々にお話を伺いました。最先端医療の実際をお伝えします。

ロボットは万能ではない
リハビリには「訓練」が必要不可欠

まず、最先端のロボットリハビリの牽引役を担われている「ロボットリハビリテーションセンター」の陳隆明センター長に、ロボットリハビリの現状と課題、将来の展望などをお伺いしました。

ロボットリハビリについて熱く語る陳センター長  
ロボットリハビリについて熱く語る陳センター長
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編集部:ロボットリハビリが、医療・福祉の場で何かと話題にのぼっていますが、陳センター長は、現状に関してどうお考えですか?
陳:「ロボット」という言葉には、「任せておけば、勝手に何でもしてくれる」といった夢物語のようなイメージがありますが、決してロボットは万能ではありません。確かにコンピューター制御によって、幾通りのことができるようになってきましたが、その能力には限界があります。ロボットさえあれば何でもできると考えるのはリスキーなことです。ロボットがあれば、これまで不可能だったことが、夢のように可能になるわけではありません。掃除機や洗濯機みたいな「全自動」なんてことはありえないのです。
たとえば、車を思い浮かべてみてください。いきなり車を渡されても運転できないでしょう。教習所に通って練習を重ねてこそ運転できるようになるのです。結局、モノや技術だけがあってもダメなんですね。人がそれを使いこなすスキルを身につけなければならないのです。
リハビリに関しても同様で、義肢を装着して、思うように使いこなすためには訓練が必須です。野球やサッカーなどのスポーツも同じですね。上手になるためには素振りやリフティングなどの基礎練習を積んでいかなければなりません。地道な努力が必要なのです。バットやボールを持っているだけでは、試合に出ても活躍することはできません。最先端のリハビリ機器が開発されても、それを使いこなすスキルを身につけなくては社会復帰への道は決して近づいてこないのです。
持っているだけでホームランが打てるような魔法のバットはありませんよね。ロボットはある意味、魔法のバットのように伝えられていますが、優れてはいるけれどしょせんはひとつの道具に過ぎません。つまり「道具を使いこなすための訓練なくして効果を発揮するリハビリはない」ということです。

効果的な訓練を進めるためには
文章化されたマニュアルが必要

編集部:効果的な訓練をするために必要なことを教えていただけますか?
陳:先ほど、車をたとえに使いましたが、「ロボットリハビリテーションセンター」は、自動車教習所のような存在なんですね。患者さんに義手や義足などのリハビリ器具の使いこなし方を身につけてもらう機関なんです。教習所にはマニュアルやカリキュラムがあって、それに沿って均質の教習を行っています。リハビリも同じで、どの療法士でも均質のリハビリができる体制を整えておく必要があります。行きあたりばったりのリハビリをしていては、どんなに良い機器があっても、患者さんに「使ってみよう!」と思ってもらうことはできないでしょう。大切なのは、「訓練方法」の確立なのです。つまりはマニュアルの作成が必要だということです。
たとえば、筋電義手は40年も前から存在していました。欧米では1970年代から子ども用筋電義手の普及が始まっています。大人用はそれ以前からということです。我々は2006年に筋電義手のマニュアルを作成しました。筋電義手が普及しだしたのはそれ以降です。使いこなし方を文章化して明確にしたからこそ、均質のリハビリを提供することが可能となり、普及につながったのだと思っています。
患者さんは、うまく使えないものには価値を見いだすことができません。マニュアルに基づいた均質のリハビリを提供することで、早く確実にスキルの上達が図れると「やっぱり使ってよかった」「もっと使いこなしてみたい」という気持ちが膨らんでいくものです。そういった意味でもマニュアルは欠かせないものだと考えています。

本当に患者さんに役立つものを
医工連携の体制を確立

編集部:「ロボットリハビリテーションセンター」の特長のひとつに「医工連携」がうたわれていますが、それについて詳しく教えていただけますか?
陳:リハビリの現場に身をおいて思うことは、各セクションがバラバラに動いてしまっていることです。現場ではニーズがいっぱい発生しているのに、ツールに関してはシーズ(製品化の可能性のある技術やノウハウ)に基づいた開発しかできていない……開発側から技術を押し売りされている状況です。その結果、現場で使われない、機能しないツールが次々と作られ、訓練がなおざりにされています。中には盛り込まれた機能がリハビリの邪魔になることすらあるくらいです。もっと現場で使えるものがほしい、役立つツールがほしい……そのためには、現場のニーズをきちんと開発に活かせる体制を作らなければいけない。そこで、現場を担う医師や療法士と開発を担う工学研究者が密接につながりながらリハビリを進めていける医工連携体制の「ロボットリハビリテーションセンター」を設立したのです。この体制を敷いた結果、風通しがよくなって、現場のニーズに適した開発ができるようになりました。やはり、大切なのは「誰のためのリハビリなのか」を考えることですね。患者さんのことを第一に考えた体制が求められているのです。

いつの日か訓練用筋電義手の支給が
国策になることを願って

編集部:ところで「小児筋電義手バンク」を設立されていますが、それに関する思いをお聞かせ願えますか?
陳:センターの周知が進む中、やってくる子どもの患者さんは確実に増えてきています。訓練用の筋電義手に関しては、ひとつ150万円もするのに補助が出ません。しかも、子ども用の筋電義手は、成長に合わせて2~3年ごとにリニューアル、ソケットは半年ごとにリニューアルする必要があります。これまでは、兵庫県や病院で負担していましたが、とても追いつかない状況になってきました。そこで、寄付を募って、それを資金に筋電義手を購入し、訓練のために必要な子どもに貸し出そうと設立したのが「小児筋電義手バンク」です(※)。兵庫県知事よりマッチングファンド制度という支援をいただき、集まった寄付と同額を負担してもらうことも実現しました。東京大学医学部附属病院(以下 東大病院)と第一号姉妹病院の提携を行い、訓練用筋電義手の貸与と訓練ノウハウの供与をはじめる予定です。将来的に、うちが西日本の、東大病院が東日本の筋電義手リハビリの拠点になればと願っています。
「小児筋電義手バンク」設立の狙いは、もうひとつあって、将来、子ども用を含めた訓練用筋電義手の支給が国策になるように持っていきたいということがあります。現在、うちでリハビリをされている方は、兵庫県はもちろん、鳥取、広島、岡山、三重、滋賀、奈良、京都、大阪といった関西広域にわたっています。できれば、関西広域からの応援を募りたいし、世論を盛り上げて国策にまで持っていきたいと考えています。
この案件に関しては、後進に宿題を残さないように、私が現役のうちに実現したいと思っているので、厚生労働省に働きかけたり、努力していきます。

※「小児筋電義手バンク」の詳細は…
http://www.hwc.or.jp/hospital/pdf/gishu-bank.pdf

総合リハビリテーションセンターの伝統を守り
患者さん第一のリハビリを続けていきたい

編集部:これからのリハビリに期待されることや夢などをお聞かせ願えますか?
陳:当病院の名誉院長である澤村誠志先生の座右の銘に「患者さんが先生、地域が教科書」という言葉があります。私たちの原点は、当たり前ですが「患者さんありき」です。意外とこの当たり前が忘れられがちになっています。私たちは、原点に立って、当たり前のことを粛々と積み重ねてきました。それが私たちの「伝統」となっています。人間本位のリハビリの実施もマニュアル作りも医工連携体制も、すべてこの「伝統」から生まれてきたものです。
また、ここには、リハビリを終えて、社会復帰したOBともいえる人たちが気軽に寄ってくれます。そこで、現在リハビリ中の患者さんを叱咤激励したり、アドバイスを与えたりしてくれています。リハビリはある意味、野球の部活のようなものです。患者さんを選手とすれば、療法士はコーチ、工学研究者はテクニカルスタッフです。そこにOBがやって来て後進を指導する……そんな体制で患者さんの社会復帰へのスキルを高めていくのがリハビリの現場なのです。このような雰囲気というか体制が作れているのも伝統のおかげだと感謝しています。
ただ、この伝統を守っていくには、若い人材を育てていかなければなりません。少子化の中、それはなかなかハードルの高いことになっています。しかし、今のメンバーで終わらせるわけにはいきません。ロボットリハビリのパイオニアとしての自負を持って、これからも「患者さん第一」のリハビリを続けていこうと考えています。
編集部:まさに、陳センター長は、リハビリの「監督」ですね。

リハビリの主体は患者さん、と語る陳センター長  
リハビリの主体は患者さん、と語る陳センター長
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-陳隆明氏プロフィール-
社会福祉法人 兵庫県社会福祉事業団 兵庫県立リハビリテーション中央病院 中央病院参事兼ロボットリハビリテーションセンター長・リハビリテーション科部長
福祉のまちづくり研究所長
日本整形外科学会認定整形外科専門医
日本リハビリテーション医学会認定 リハビリテーション科専門医
国際義肢装具協会日本支部会長
神戸大学客員准教授

患者さんのリハビリに役立つものを
現場の希望や意見を取り入れて、使いたくなるものを開発

陳センター長に続いて、研究開発を担当されている、特別研究員の本田雄一郎さんと中村豪さんに医工連携による開発の成果などをお伺いしました。

本田さん 中村さん  
(左)本田さん(右)中村さん
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編集部:医工連携の開発による効果についてお聞かせください。
本田:私たち「ロボットリハビリテーションセンター」の工学研究者の仕事は、最新技術満載のすごいツールを開発することではなく、患者さんのリハビリに役立つツールを開発することだと考えています。よくある話ですが、筋電義手を開発する場合、いかに手の機能を再現するかが課題となったりします。5本指で、すべての関節も作って、できれば手首も可動するものを……となるんですね。でも、リハビリの現場では、まったく意味をなさないことが多いのです。まず、開発に時間とコストがかかり過ぎます。また、その義手のできる動作が多くなり、扱い方が複雑すぎて、訓練方法の確立が困難になります。必要なのは、手の再現ではなく、手の働きの再現なのです。過度の機能の盛り込みはリハビリの邪魔をしてしまいます。使えないものを作ることになるんですね。それは結局、エンジニアのひとりよがりに過ぎません。そのことに気づくべきだと思います。
編集部:でも、ほとんどの研究者の人は、すごいものを作りたがっていますね。
本田:そのようですが、私は、そういう考えを捨てています。繰り返しますが、私の目的は、リハビリの現場で役に立つものを開発することです。それは、現場の医師や療法士の声を聞いて、ニーズにマッチしたものを作ることです。だから、時にはリハビリの現場に同席して話を聞くこともあります。患者さんの思いを聞くためです。開発に関しても療法士の人たちときめ細かく話し合いながら進めています。たとえば、筋電信号の出力状況を表示する装置を開発した際には、モニターの大きさを決めるために、様々なサイズのモックアップ(試作品)を作って見てもらいました。表示するグラフに関しても線の太さや色まで事細かにチェックしながら進めたんです。その結果、とても現場で使いやすいものができました。筋電信号の出力量がわかると子どもへのリハビリがとてもやりやすくなるんですね。従来は患者さんが操作する義手の指先の動きで判断していましたが、まだ話すこともできない小さな子どもの場合、顔だけでがんばったふりをしていることもあります。ベテランの療法士なら、それを見抜くことができるのですが、キャリアの浅い人には難しいものです。でも、信号の量がわかれば新人にも状況判断が容易にできます。この機器の開発も現場のニーズから生まれた成果ですね。
編集部:連携による成果ということですね。
本田:そうですね。現場の人たちとはよく話をします。時には雑談の中から画期的なアイデアが生まれることもあります。現場と開発はリハビリの両輪です。お互いの信頼関係ができていないと成り立ちません。そういった意味で、「ロボットリハビリテーションセンター」が実践している医工連携体制は、いい環境を生み出していると思います。
編集部:これからのRT開発の展開などについてお聞かせください。
中村:現場スタッフの人たちは膨大なデータを持っています。それを活用して、本当に役に立つものを作っていきたいですね。工学研究者は研究室に閉じこもりがちですが、医工連携という体制を活かして、何かあればすぐに現場に飛んで行って患者さんやスタッフの意見を聞いて……そんな開発を心がけていきたいと考えています。
本田:作られたものがローテク、ハイテクに関わらず、使う人のニーズを満たすものなら使ってもらえるはずです。これからも現場の人たちとコミュニケーションをしながら、開発をしていきたいです。そこには、新しい発見や社会への貢献といった喜びがあります。開発者冥利にあふれる「ロボットリハビリテーションセンター」だからこそできる活動をこれからも続けていきます。

療法士はリハビリのコーチ役
日々の訓練の中で、患者さんに教えてもらっている

続いて、リハビリの現場で訓練に携わっている療法士の方のお話を伺いました。主任理学療法士の山本直樹さんは脊髄損傷のリハビリのスペシャリスト。作業療法士の溝部二十四(ふとし)さんは、筋電義手のスペシャリスト。現場での喜びや苦労などを聞かせていただきました。

脊髄損傷のリハビリ担当山本さん 上肢切断担当溝部さん
(左)脊髄損傷のリハビリ担当山本さん(右)上肢切断担当溝部さん
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編集部:RTがリハビリの現場に導入されて変化したことはありますか?
山本:人間は自然回復力を持っています。RTを活用したロボットスーツHAL®などが登場する以前でも、歩行器や手すりを使ったリハビリで、自力で立てなかった人がひとりで立てるようになった例はいくつも見てきています。つまり、機能回復は、訓練の成果であって、RTはその訓練を効率よく進めるための、ひとつの方法に過ぎないということかもしれません。効率よく、安全にできるので、役に立っていることは確かです。
溝部:選択肢が増えたのは事実ですね。筋電義手、能動義手、装飾義手など、いろいろな手段を選んでもらえるようになっています。私たちがリハビリを通して伝えていることは、この選択肢のうち、どれを選べばいいかを提案することだと考えています。もちろん、義手なんていらない、という人もいるでしょう。でも、それぞれの義手に、どんな機能やメリットがあって、どんな使用価値があるのかを認識してもらった上で、選択してもらうことが大切だと考えています。そういう意味ではRTの導入で選択の幅が広がったように感じています。
編集部:これまでの経験の中で感じたリハビリの難しさなどはありますか?
溝部:「病院と日常生活の差」でしょうか。四肢を欠損された患者さんの多くは、義手や義足に対して「すごいことができるようになる」というイメージをお持ちです。でも、実際にリハビリを体験してみると「こんなものか」という感想をお持ちになります。そこで、モチベーションが下がることもあるのですが、このモチベーションを維持させるのが私たちの仕事だと考えています。そこで、リハビリのためのリハビリではなく、日常生活の中でどう義肢が役に立つのかが認識できるようなリハビリを心がけています。訓練の中で、義肢の機能やメリットを伝えきれず、患者さんが義手の必要性を実感できないまま、使用を止めてしまわれるのは、本当に切ないことですから。
山本:結局、リハビリの主体は患者さんであり、目的は機能回復による社会復帰なんですね。義手や義足を使いこなすのも、使わずに放っておくのも患者さん次第。私たちの役目は、患者さんが高いモチベーションを維持できるように関わっていくことなんです。いわゆるコーチングのスキルが求められています。そこが難しいところですね。私も溝部さんと同じように実生活で使いこなせるようなリハビリを行っています。さらに、患者さんと接する中で発見した工夫やノウハウをできるだけほかの患者さんにも伝えるようにしています。そう考えてみると、私のリハビリノウハウは、そのほとんどが患者さんから教えてもらったことから成り立っていると言えます。まさに「患者さんが先生」なのですね。
編集部:これからのリハビリに関する夢や理想はありますか?
溝部:これまでのリハビリ、特に子どもさんへのリハビリに関しては、個人セラピーがほとんどでした。そこで、数年前から始めたことなんですが、子どもの患者さんの交流会を年に1度のペースで開催しています。今年は運動会をしたんですが、そんな交流会を通じて子どもはもちろん、家族間の横のつながりができたらいいな、と考えています。子どもの将来に関して不安をお持ちの親御さんがほとんどですから、お互いの思いを交えることで、勇気や安心を持てるようになってほしいのです。やはり、経験者の言葉は説得力を持っていますから。
山本:医工連携という風通しのいい環境の中で、もっとコミュニケーションを密にして、効果的なリハビリを遂行していきたいですね。医師はもちろん、義肢装具士や工学研究者の方々とも仲良くさせてもらっていますし、こちらの希望や意見も聞いてもらっています。このようにリハビリに関わる人たちが、みんな同じ目的、「患者さんの社会復帰」のために一丸となってリハビリの方法や技術を磨いていけば、きっと理想のリハビリシステムを構築することができるはずです。ゴールはないのでしょうが、とにかく前に向かって進んでいきたいと思います。

義肢を使いこなすには、好奇心と遊び心が必要
日常生活でどんどん使うこと

最後になりましたが、患者さんの声として、かつて総合リハビリテーションセンターでリハビリを経験され、現在は職員として働いていらっしゃる小寺正健(まさたけ)さんにお話をお伺いしました。

やりたいことがいっぱいあり過ぎて…と小寺さん  
やりたいことがいっぱいあり過ぎて…と小寺さん
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編集部:失礼かと存じますが、小寺さんが筋電義手を使われるようになった経緯をお聞かせ願えますか。
小寺:2000年のことです。私は食品加工の会社に勤めていたのですが、焼売の具材を混ぜる機械に巻き込まれて利き手である右手を失いました。病院に運ばれて緊急手術をして、肘から少し下が残りました。その病院からリハビリテーション中央病院を紹介されてリハビリをすることにしたんです。
編集部:右手を失われた時はショックだったでしょうね。
小寺:いや、それが一瞬だけで。というのも19歳の時に汽車にはねられて片足を失ってずっと義足の生活を送っていた父親から「大丈夫だ」と言ってもらって、気分がすっと楽になったんです。何の根拠もなく言ったんですけどね(笑)。
編集部:当事者の言葉は、説得力があるんですね。
小寺:以来、前向きに生活を送っています。リハビリを終えた4カ月後には職場に復帰しました。しかし、仕事を続けていく中で、だんだんと「障がいのある人の役に立つ仕事がしたい」という思いが強くなっていって、2005年に、総合リハビリテーションセンターに就職しました。現在は、多機能型事業所「あけぼのの家」で就職支援の仕事をしています。就職に必要なマナーやスキルなどをレクチャーしています。
編集部:筋電義手を使いこなされているようですが、その秘訣はなんですか?
小寺:とにかく日常生活でいかに使うかですね。意外とほとんどのことが片手でできるんですよ。ただ、靴のひもを結ぶとかボタンをかけるといった些細なことに不便を感じます。筋電義手によって、そんな些細なことができることに喜びを感じながら、もっとうまく使ってやろうと考えていましたね。今では、子どもを抱きあげて肩車したりしています。
こんなことができるのも、好奇心が旺盛なことと遊び心があったからだと思っています。やりたいことがいっぱいあるんです。これまでトライアスロンやバイクなどにチャレンジしてきました。今は、ダーツに挑戦したいと思っています。
編集部:すごくアクティブに過ごしていらっしゃいますね。ところで、義手を検討されている人に何かアドバイスはありますか?
小寺:筋電でも能動でも装飾でもいいから、義手は着けたほうがいいと思っています。体のバランスを保つためにもね。着けないというのも選択肢のひとつではあるんですが。しかし、着けてみると「もっとうまく使いたい」という思いが湧いてくるものなんですね。私の家族は妻と子どもが3人なんですが、私は家事のうち、洗濯を担当しています。そんな中、筋電義手なら洗濯物を干すときに力を込めて伸ばすことができます。食器を洗うときだって、コップの中まで洗うことができるし、包丁を使いこなしたり、切符を買うことだってできます。とにかく日常生活の様々なシーンで「ここでも使ってみよう」という好奇心を持つことですね。そうすれば、どんどん上手に使えるようになります。
編集部:これからの筋電義手に期待することはありますか?
小寺:もっと軽くなってほしいですね。そうすればもっと普及すると思います。誰もが簡単に使えて、長持ちで安いものが出てきてほしいですね。何も五本指の義手は必要ないと思います。強度やバッテリーの問題もありますし。今までのものを改良していくのがいいのではないでしょうか。

-編集後記-

2回にわたってお届けした「ロボットリハビリテーションセンター」のレポートはいかがでしたか?
この取材を通して感じたのは、RTを使った最先端医療の現場で活躍されている人たちの思いの根底には「人間本位」という意思が脈々と流れているんだ、ということでした。
「ロボットは万能ではない」
「リハビリの主体は患者さん」
「本当に患者さんに役立つものを」
そんな言葉の一つひとつから、「医療は仁術」ということを実感しました。「利」ではなく「理」を求める医療・福祉が実践されていると感動を覚えました。
超高齢社会や少子化など、荒波が押し寄せている医療・福祉ですが、伝統と信念を守りながら、諦めず、粛々と理想を追求していっていただきたいと思います。
ありがとうございました。

兵庫県立リハビリテーション中央病院ロボットリハビリテーションセンター-施設概要-
名称:兵庫県立リハビリテーション中央病院
ロボットリハビリテーションセンター
※2014年第6回ロボット大賞審査員特別賞受賞
〒651-2181 兵庫県神戸市西区曙町1070
TEL:078-927-2727
FAX:078-925-9203
ホームページ:
http://www.hwc.or.jp/hospital/robot/
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