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株式会社あいち補聴器センター 天野慎介店長インタビューレポート

「すべては『聞こえ』のために」。デコ補聴器などのユニークなアイデアで、補聴器の普及・イメージ向上に努める「あいち補聴器センター」さんの思いをお届けします。

株式会社あいち補聴器センター 天野慎介店長
厚生労働省の調査『平成23年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)』(※1)でわかっている日本の聴覚音声言語障がい者数は、18歳以上で約31万2千人、18歳未満で約1万2千人の合計約32万4千人。1,000人に2人以上が聴覚に障がいを持っていることになります。
しかし、この人数は、あくまでも70dB(日常会話)が聞こえない、身体障害者手帳を取得した方を対象にしたもの。ここには、手帳を取得していないが同等の障がいを有する方や、それより軽い程度の、耳が遠くなったご高齢の方や耳が聞こえづらい方々は含まれていません。
補聴器が必要な程度の難聴者は、潜在ユーザーも含めると、日本では約2,000万人と推定されています。そのうち、補聴器を実際に使っている人は約500万人。ここから想像できるのは、自覚のあるなしにかかわらず、難聴の人の3/4、およそ1,500万もの人々が補聴器を使わず、「聞こえづらさ」を我慢している状況です(※2)
愛知県岡崎市。江戸幕府を開いた徳川家康の生誕地として知られる街で、「聞こえづらさ」に悩まされている人たちのお役に立とうと、ユニークなアイデアと軽やかなフットワークを持って、補聴器の普及に努める人がいます。それが、株式会社あいち補聴器センターの天野慎介店長。親子二代にわたって、「聞こえ」にこだわる姿をご紹介します。

※1:厚生労働省『平成23年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果』
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/seikatsu_chousa_c_h23.pdf
※2:一般社団法人日本補聴器販売店協会『補聴器供給システムの在り方に関する研究(2年次報告書)』より

子どもたちに使ってほしい、と「デコ補聴器」を開発

おしゃれにディスプレイされ(左)、まるでアクセサリーのような(右)「デコ補聴器」
まるでアクセサリーのようにキラキラと輝く「デコ補聴器」。今、巷でちょっとした話題になっています。この、かわいく、きれいな補聴器を初めて開発したのが天野店長。もともとは、耳の聞こえづらい子どもたちに喜んで補聴器をつけてもらいたくて作ったのだそうです。
「耳が聞こえづらくても、子どもたちは補聴器をつけたがりません。特に、女の子は思春期に入ると恥ずかしいので嫌がってつけなくなることが多いのです。補聴器をつけないと先生の声が聞きづらく、どんどん学習に遅れが生じます。中には、聞き取りが難しいので、数学はできるけど国語や英語はダメという子どもも出てきます。結局、成績が低下するのです。また、発音がうまくできないなど、言語発達を阻害する危険性もあります。このように子どもたちの人生が悪い方向に変わってしまうのです。それをなんとかしたい、子どもたちが笑顔でつけられるような補聴器を作りたい。そういう思いから、デコ補聴器が生まれました」と天野店長は言います。
開発のヒントになったのは、2010年2月に放映されたあるテレビ番組。そこでデコ携帯(デコレーションされた携帯電話)が特集されていたのを見て、このアイデアが浮かんだのだそうです。
「デコった携帯を子どもたちが喜んで使っている。補聴器だってデコれば子どもたちに喜んで使ってもらえるのではないか?」
さっそく知り合いのネイリストに相談すると、快く引き受けてもらえました。2カ月後には試作品ができ、約3カ月間の店長本人によるテスト装着を終えると、6月6日・補聴器の日にいよいよ販売が始まりました。
最初の購入者は、意外なことに、新聞広告を見てやって来たという隣の安城市に住む80歳代の女性。ドイツ生活が長かった医師の妻で、「補聴器は見せるもの」という欧州流の考えの持ち主でした。以来、3年が経過し、今では約40人のユーザーがデコ補聴器を愛用しているそうです。もちろん、そのほとんどが子どもたちです。
デコの料金は、1,000円・2,000円・3,000円の3コース(いずれも税込)。子どもたちのお小遣いでもできるようにという配慮です。他の販売店で購入した補聴器にもデコをしてもらえます。
天野店長は、「もっとたくさんの子どもたちに使ってほしい」と、日々、普及活動に余念がないのです。

お客様の“耳”を一緒に作っていく、という姿勢

様々な大きさ、形をそろえた補聴器サンプル「一人ひとり聴覚の能力は異なります。同じ人でも右と左では差があります。補聴器は、それらにフィットするようにカスタマイズしなければなりません」と天野店長は言います。
多くの補聴器取り扱い店が、調整できない補聴器を販売している中、あいち補聴器センターでは必ずきめ細かな調整を施してから販売しています。
補聴器選びは、来店されたお客様へのきめ細かなカウンセリングから始まります。どんな家族構成か、どんな環境で使うことが多いか、どんな目的で使いたいのか……。このような情報の聞き取りを行うことで、お客様の求めている「聞こえ」に応えるのです。たとえば、日ごろは静かな家の中に居ることが多く、普通の会話やテレビの音声が聞こえればいい、という方に高感度の補聴機能は必要ありません。むしろ雑音まで拾ってしまって頭痛の原因になったりします。逆に、会社の会議などに出ることの多い人なら、騒音の中でも聞き取れるような高性能のものが必要になるでしょう。このような一人ひとりのニーズに応えるために、カウンセリングが欠かせないといいます。
次に、お客様の聴覚能力をいくつかの周波数帯に分けて分析します。低音域が弱いのか、中音域に問題があるのか、高音域が聞こえづらいのか、左右の耳ではどうなのか……きめ細かく能力を調査・分析して、聴覚の個性を見極めるのです。さらに、脳への伝達能力も調べます。耳は言葉を理解することはできません。言葉を理解するのは脳です。脳への伝達力を調べることで、よりトータルな聴覚能力が把握できるのです。
そして、いよいよカスタマイズです。「耳かけ型」「最小耳あな型(CIC)」「小型サイズの耳あな型(カナル)」「フルサイズの耳あな型」「ポケット型」などいくつかあるタイプの中から自分の目的にフィットしたものを選んでもらい、コンピューターを使って周波数帯レベルの補聴機能を調整します。
また、集めた聴覚能力のデータはグラフ化して診断表としてまとめられます。本人(子ども)と家族(親)と店が情報を共有しないと、フィットした補聴器はできないというポリシーに基づいています。この診断表を基準にして、様々なアフターフォローが行われています。
さらに、補聴器へのハードルを低くするために、「無期限無料貸し出し制度」が設けられています。貸し出し期間中に微調整を実施し、自分にフィットした補聴器を体験してもらおうというものです。
こうして手間暇をかけてできた補聴器は、まさに「お客様の耳」そのもの。誰もが笑顔を浮かべ、「ありがとう」と言って帰っていかれるそうです。
「私たちは、お客様の“耳”を一緒に作っている」
この思いを決して忘れないようにするのが、天野店長の誓いなのです。

父の背中を見つめて、父のめざすことを見つめて

「聞こえ」への熱い思いを語る天野店長(右)と父、雅夫さん(左奥)
あいち補聴器センターの創業は2002年。創業者は天野店長の父親である天野雅夫さん。現在は代表取締役を務めています。
雅夫さんは、元商業カメラマン。豊橋市でスタジオを構え15年ほどカメラマンとして活躍していました。一念発起をして、この業界に飛び込んだきっかけは、ストロボの発光が原因で発症した光視症。目を閉じるとチカチカと点滅する光が現れるという、やっかいな病気です。その発症と時を同じくして、古くからの友人が難聴になってしまいました。その友人は教師の職を辞して、妻が営む牧場に勤め始めました。しかし、難聴との闘いはずっと続いていたのです。雅夫さんは彼の姿を見て、「なんとかできないものか、聞こえに苦しむ人をどうにかして支えられないか……」と考えました。その思いが、雅夫さんの背中を押し、スタジオを畳んで補聴器販売の道を歩むことを決心させたのです。
「補聴器を手に入れるということは、決して楽しい買い物ではありません。自分の知られたくないことをさらけ出す、というどちらかというと辛い買い物です。そんな買い物をされたお客様から“ありがとう”と言って感謝されるのが補聴器販売の魅力です。来るときは沈みがちだった表情が、帰るときには満面の笑顔に変わっている。それは、こちらにもうれしい限りです」
と雅夫さんは話します。続いてこんなエピソードも披露してくれました。
「いろんな販売店を回ったけれど、どこも良くなくて、ダメもとでうちに来られたご夫婦のお客様でした。テスト用の補聴器をつけていただいて、微調整したら自分の声が聞こえるようになったんです。“10年ぶりに自分の声が聞けた”と大喜び。すぐにこれをくださいと言われるのだけれど、これはテスト用なので、とお断りして、ちゃんとした補聴器を仕上げてお渡ししました。もうはち切れんばかりの笑顔でお帰りになりましたよ。創業間もないころでしたが、そのお客様は今でもリピーターです」
ときには、新しい補聴器を購入しに来たお客様に、まだまだ使えるから、と微調整だけで済ませることも。そこには、福祉に関わっているからには利益第一主義になってはならない、という強い信念があるのです。
このような父の姿を見て育ったのが店長。「聞こえ」に対する思いは、父のDNAを確実に受け継いでいます。スローガンである「すべては『聞こえ』のために」を掲げたのも店長だそうです。彼は、父の姿を見つめるだけでなく、父がめざしているものまで見つめているのです。

より豊かな生活を送るために、多彩なアイデアを

「音あそび~見て!聞いて!さわって楽しむフォルクローレ」の様子(左)ご協力いただいている「Grupo_Noticias(グルーポ・ノティシアス)」の皆さん。中央は天野店長(右)
弾むような音楽に合わせて、子どもたちが楽しそうに体を動かす、楽器を演奏する……。耳の聞こえない子どもたちだけでなく、様々な障がいを持つ子どもたち、そして障がいを持たない子どもたち。“いろんな子どもたちが一緒に音楽を楽しむことで心の壁を取り払ってもらえたら”という思いから始まったのが「音あそび~見て!聞いて!さわって楽しむフォルクローレ」という、年に1回開かれるイベントです。フォルクローレとは南米アンデス地方の民俗音楽のことで、これは、天野店長のお知り合いで南米音楽を趣味とされている方のご協力により実現したもの。ここには、「聞こえ」を通して、どんな人にも、より良い豊かな生活を送ってほしい、という店長の思いが込められています。
天野店長の熱い行動は、音楽イベント開催だけにとどまりません。
岡崎市発祥で、今や全国的に知られるようになった「まちゼミ」。地元の街を元気にしよう、楽しくしようと、商店街の店主が講師になって、専門的な知識や情報を無料で伝える少人数制のセミナーです。ここで、店長は年に2回、補聴器講座を開いています。「補聴器とはどんなものか、いくらくらいするものなのか、どこに行けば買えるのか」などの基本的な情報を届けるためです。
また、2カ月に1回のニュースレター、年3回の子ども(20歳までの方)用ニュースレターなども発行。補聴器や「聞こえ」についての啓発活動を積極的に展開しています。
「キラキラ★デコ補聴器を作ってみよう!」ワークショップの様子(左)完成したデコ補聴器を片手に笑顔の参加者(右)
また、年に数回「キラキラ★デコ補聴器を作ってみよう!」と銘打ったワークショップを開催しています。これは、障がいを持たない子どもたちに、補聴器が必要な子どもたちへの理解を深めてもらうことを目的にしたイベント。難聴児・健聴児にかかわらず同じテーブルで、補聴器のダミー(見本)にキラキラのシールなどでデコレーションしていきます。参加者には、「補聴器をつけているお友だちがいたら、ゆっくり話してね。耳マークの人には手話や筆談で対応してあげてね」といったメッセージを伝えています。作ったデコ補聴器はお土産として持って帰れるので、子どもたちには大好評のようです。
さらに、インターネットも大いに活用しています。ホームページはもちろん、ブログにフェイスブックなど、一体いつ作業しているのか、と思うくらい頻繁に更新されています。内容に関しても、それぞれのコンテンツに合わせてマーケティング手法に基づいて作られています。例えば、ホームページなら、目的意識を持ちキーワードで検索して来られる方が多いので、専門情報を中心に掲載。ブログの方は、いわば日記なので、気軽に読めるように平易な文章を心掛ける。フェイスブックなら、つながりを意識して地元密着情報を多く書き込んだり、リアルタイム性を活かしてキャンペーンやブログ更新をこまめに案内する、といった具合。同じ情報発信でも、それぞれのメディア特性に合わせて様々な工夫が凝らされています。
「ホームページやブログなどを見て来店される方の数は、きっと業界No.1のはずです」と、天野店長は胸を張ります。
さらに、2013年8月からは、「あいち補聴器センター まごころ通販」というショップ名で、楽天市場(インターネット通販)にも進出。車が運転できない、家族と離れて暮らしている、ベッドから離れられない、など、様々な理由で、「買い物弱者」となっている人たちにも「聞こえ」を届けたいと、補聴器をはじめ、振動時計や光で来客を知らせる屋内信号装置などの便利な日常生活用具をそろえています。今まで来店したくてもできなかった多くの方々の「聞こえ」を支え、補聴器とインターネットの組み合わせを通じた社会貢献を実現するのです。ただ、微細な調整が必要な補聴器に関しては、愛知県内だけの限定販売。県外のお客様には、店長が独自の活動でネットワークを築いた全国の「同じ思いを持った」補聴器販売店を紹介する方法を取っています。ここにも「聞こえ」に対する店長の真摯な姿勢がうかがわれます。
このように、様々なアイデアを駆使して、天野店長は、より一層の補聴器の普及に努めているのです。

補聴器がメガネのように使われる社会をめざして

「補聴器をメガネのように当たり前のものに変えていきたい」と願うおふたり
「本当は、デコ補聴器がいらないような社会になってほしいのです」と天野店長はつぶやく。
「お手本はメガネなんです。メガネはかける人の視力を測定するとともに、お気に入りのフレームを選んで購入しますよね。まさにカスタマイズしてフィットしたものを手に入れるわけです。このごろはファッションアイテムとしても認められています。伊達メガネをかけている人だっているくらいですから。メガネをかけていると“賢そう”“カッコいい”といったイメージもありますね。そんなふうに補聴器のイメージも上げていけないかな、と考えています」
大抵の人は、目が見えづらくなると当然のようにメガネをかけます。かつては、カッコ悪い、と敬遠する人もいましたが、とても少なくなりました。これには様々な社会の価値観の変化や業界の努力があったと思います。補聴器をメガネのようなポジションにすることが、天野店長の夢なのです。
「聞こえ」が改善されると「生活」が改善されます。「生活」が改善されると「気持ち」が改善されます。明るい心になれば、「外出してみよう」「人とおしゃべりしてみよう」という意欲がわいてくるものです。補聴器をつけることで、「聞こえないから」とふさぎ込んでいた心を開き、明るく生きることを諦めず、前向きに、より良い生活を送ってほしい……。これが、天野店長、そして創業者である雅夫さんの願いなのです。
「全国の多くの補聴器販売店が同じ気持ちでいます。『聞こえ』に困っている人は、気軽に相談してみてください。いっしょに“耳”を作りましょう」
店長は、やさしく笑って話を終わりました。

-編集後記-

取材中も何人かのお客様が来店されて、雅夫さん、店長とも、懇切丁寧に対応されていました。その姿を見て、交わされる言葉を聞いて、何よりも「信頼」が大事だな、と思いました。
「補聴器が、まるでメガネのように使われる社会」そんな夢が実現するのも、そう遠い日ではないかもしれない。おふたりを見ていると、そう感じられました。
親子二人三脚の「聞こえ」の旅は、これからもずっと続いていくことでしょう。
株式会社あいち補聴器センター
-プロフィール-
株式会社あいち補聴器センター
〒444-0862 愛知県岡崎市吹矢町69
TEL・FAX:0564-24-4733
営業時間:10:00~17:00、水曜日定休

ホームページ、ブログなど:
・あいち補聴器センター ホームページ http://www.aichi-hochoki.com/
・あいち補聴器センター ブログ「すべては『聞こえ』のために!!」 http://aichihochouki.dosugoi.net/
・あいち補聴器センター フェイスブック https://www.facebook.com/hochouki
・デコ補聴器 ホームページ「笑顔になれるデコ補聴器」 http://www.aichi-hochoki.com/deco.html
・デコ補聴器 ブログ 「スマイル『デコ補聴器』」 http://ameblo.jp/deko-hochouki/

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